ジャンプって今は高すぎ?

 「週刊少年ジャンプ」と言えば、少年マンガ誌の最高峰ですが、子供の頃にいくらで買っていたのか、覚えているでしょうか? 現在30〜40代の方々「週刊少年ジャンプ」1冊の値段は「100円台から200円ちょっと」という感覚で記憶しているはずです。

 現在、「ジャンプ」の値段は「1冊290円(税込)」で、合併号だと300円を越えます。それでも他の少年誌を見ると、「マガジン」「チャンピオン」は340円(税込)、「サンデー」は360円(税込)という値段で、「ジャンプ」は安い方です。また、「たくさんのマンガが読めるから安い方」という気がしなくもないですが、週刊誌であるため1か月=4週分買うと考えると1160円かかります。単行本がおよそ2冊買えてしまうので、ちょっと考えてしまうところです。

 さて、記憶のなかにある「もっと安かったジャンプ」ですが、実際の昔のジャンプはいくらだったのでしょうか?

●ジャンプの価格はこんなに変わった

 ジャンプの価格は創刊以来、以下のように推移しています。

・昭和43年(1968年)
創刊当時。月2回刊行で一冊90円。

・昭和49年(1974年)
130円に値上げ。前年のオイルショックが背景にあったと考えられる。

・平成2年(1990年)
190円。前年に消費税導入。

・平成8年(1996年)
200円。大台を突破。

・平成9年(1997年)
210円。消費税5%に値上げが背景。

・平成26年(2014年)
4月の消費税8%への引き上げがあり、260円、または270円となる。

・現在
2019年10月から消費税10%となり、290から300円。合併号などの場合は少し高い。

 ご覧の通り、30〜40代が小学生だった頃の平成初期、ジャンプは200円前後でした。「安かったジャンプ」は、もちろん大人の脳内にしか存在しないノスタルジーではなく現実です。値上げのニュースが頻繁に報じられている昨今ですが、ジャンプの値段もその世相を反映しているようです。

 さて、そうすると出版業界では大事な、「発行部数」も気になるところです。「値上がり」すると自然と「買いづらい」感情も起きてくるはずですが、こちらも如実に影響が出ており、「週刊少年ジャンプ」はピーク時となる「1995年3・4合併号」では653万部発行されていましたが、徐々に減少。2017年には200万部を割り込んでいます。1995年時点でのジャンプの価格は190円。2017年時点の価格は260円です。発行部数ともある程度連動(反比例)しているようです。

マンガにお金を出して楽しんでいた子供たちは、何を買うようになったのか?

●今の子供はあまりマンガ雑誌を読まない?

そもそも子供の嗜好が変わっている?(画像:写真AC)

「週刊『少年』ジャンプ」を今回のテーマにしていますが、では、「少年(子供)」=小学生は何に興味を持っているのでしょうか? 仮説ですが、ジャンプが特に売れていた平成初期と現在では小学生の興味関心も変わっていて、価格だけでなく小学生の意識の変化も発行部数に影響しているのではないでしょうか?

 ここに学研が発表している大規模アンケート調査「小学生白書」という、最適としか言いようがないデータが存在します。1989年(平成元年)と2022年(令和4年)の「小学生が何におこづかいを使っていたか?」を比較してみます。

・1989年の小学生の「おこづかい(使い道)」

 小学校全体では、1位「おかし」(27.5%)、2位「貯金」(17.5%)、3位「雑誌」(12.1%)が使い道の1位、2位、3位です。特に小学5・6年生では、「雑誌」が1位。4年生も「雑誌」が10%を越えていることが解ります。

 さらに高学年男子は、「関心があること」調査において、「マンガ」と「アニメ」の割合が高いことから、マンガ雑誌などをおこづかいで買っていた可能性が高いと考えられます。1989年はジャンプ発行部数がピークを迎えつつある登り調子の段階で、少年マンガ雑誌の最高峰である「週刊少年ジャンプ」への少年たちの関心は、相当高かったと思われます。

・2022年の小学生の「おこづかい(使い道)」

 1位「お菓子などの食べ物」47.4%、2位「貯金」42.5%、3位「おもちゃ」29.5%が、上位3位です。雑誌は上位10位内に入っていません。

 1989年調査のおこづかい使い道ランキングには、「おもちゃ」「プラモデル」などのアナログなコンテンツが10位内に入っていましたが、2022年調査ではどちらも圏外。逆に「ゲーム機、ゲームソフト」「オンラインゲーム、ゲームアプリ」「音楽映像ソフト」などデジタルコンテンツが10位内にランクインしており、嗜好が大きく変化したことがわかります。

 これは「卵が先か、鶏が先か?」のような話になってしまいますが、物価の高騰だけでなく、子供たちの興味がデジタルコンテンツに向かっていることも、ジャンプ発行部数低下に繋がっていると言えそうです。

 さて、何やらネガティブな話題ばかりになってしまいましたが、ジャンプ作品は「少年ジャンプ+」や公式アプリなど、無料で作品を楽しめる入り口が増えており、紙の雑誌を買わないと楽しめない、という状況ではなくなってきているという側面もあります。時代の変化に対応し、より多くの人に作品楽しんでもらえる仕組みを整備しながら、次のヒット作を生み出す工夫をしているというのが「ジャンプ」の現状ではないでしょうか。

 時代はどんどんコンテンツを、一部無料で配信する方向に向かっています。例えばWEBの「少年ジャンプ+」は同サイトのオリジナル作品だけでなく、『ドラゴンボール』や『キン肉マン』など過去の本誌の人気作、その他の集英社の人気作も配信しており、広告動画を再生したり無料のポイントを貯めれば、かなりのエピソードを読むことが可能です。

 人気作『チェンソーマン』も、第2部からは「ジャンプ+」に移籍。かつてジャンプで人気連載作『家庭教師ヒットマンREBORN!』を持っていた天野明先生は『エルドライブ【?lDLIVE】』以降、WEBに活躍の場を移し『鴨乃橋ロンの禁断推理』を現在「ジャンプ+」で連載中です(アニメ化も決定)。これらはすべて、「初回は全話無料」で読むことができます。

 2022年の小学生白書でも「その他」の自由記述で最も件数が多かったのは「本」「単行本」「マンガ」で、子供がマンガから興味を失ったわけではないようです。「ジャンプ+」のオリジナル作品では『SPY×FAMILY』などの大ヒット作も誕生しており、「WEB媒体への変遷」は今後のキーワードになってくるかもしれません。