空腹時に視聴する飯テロアニメの破壊力よ……

 2023年冬には、MAPPAが「飯テロ」に全力を注いだアニメ『とんでもスキルで異世界放浪メシ』が大きな話題を呼びました。しかし視聴者の空腹を刺激するという意味では、2024年の冬アニメも負けていません。今期の作品には、とにかく「飯テロ」描写があふれかえっているからです。軽い気持ちで深夜に視聴しようものなら、おそらくお腹が減って仕方がない状態になってしまうでしょう。

●グルメの作画をとことん追求した『姫様“拷問”の時間です』

 まず今期の冬アニメにおいて、『姫様“拷問”の時間です』は「飯テロ」作品の筆頭といえるのではないでしょうか。魔王軍の手に落ちてしまった国王軍の姫様(CV:白石晴香)が、牢獄にて「拷問」を受ける……というタイトル通りのあらすじなのですが、同作における「拷問」とはB級グルメや懐かしのお菓子などを見せつける行為を指しています。

 たとえば1話を例に挙げると、魔王軍最高位拷問官のトーチャー・トルチュール(CV:伊藤静)が姫様の眼前で、金色に照り輝く厚切りのバタートーストを貪りました。しかも単に見せびらかすだけならともかく、うちわでこんがり焼けた香りを漂わせ、さらには真ん中から裂いてカリカリふわふわの焼け加減を嫌というほどアピールしてくるのです。最後はビーフシチューを「食べた後の皿」にディップする禁じ手がトドメとなり、姫様はあえなく秘密を吐いてしまうのでした。

 同作では通常の作画監督とは別に、料理の作画監督を設けるほどにグルメ描写に力が入っており、驚異的なほどに艶めかしいトーストの描き方となっていました。さらにトーストを裂いたときのサクサク音も心地よく、音響的にもこだわりを感じられます。もしかすると真に「拷問」されているのは、視聴者なのかもしれません。

●魔物がおいしそうに見えてくる『ダンジョン飯』

 グルメのリアリティを追求する『姫様“拷問”の時間です』に対して、現実には存在し得ない食材で空腹を誘ってくるのが『ダンジョン飯』です。原作は累計発行部数が1000万部を超えるほどの人気コミックで、唯一無二の「飯テロ」描写によってファンを悶絶させています。

 同作はRPGのようなファンタジー世界が舞台となっており、主人公たちはダンジョンの攻略を目指しますが、その道中でモンスターたちを「食材」としてグルメを楽しんでいきます。たとえば第1話では、「大サソリ」や「歩き茸(あるききのこ)」を始めとした魔物の水炊きが披露されました。

 食材名だけ聞くとあまりおいしそうには感じられませんが、「身にも切れ込みを入れておく。熱も通りやすくダシも出て鍋全体がウマくなる」などと説明しながら、材料をひとつひとつ丁寧に調理していく過程を見ていると、不思議とよだれが出てきそうです。架空の生き物にもかかわらず、まるで実在する食材のように設定が作り込まれていることも、空腹を刺激される理由でしょう。

 実際にネット上でも「もはや大サソリが伊勢エビに見えてくる」「材料はしっかりグロいのに完成品がおいしそうなのがズルい」「まさか大サソリとスライムで飯テロの被害に遭うとは(笑)」といった声があがっていました。

●バトルモノだよね? 卵料理が「ガチ」すぎる『青の祓魔師』

 最後にご紹介する『青の祓魔師』は、一見するとバトルファンタジーなので、「飯テロ」には該当しないと思われるでしょう。しかし主人公である奥村燐(CV:岡本信彦)の特技が料理ということもあって、作中に調理シーンが登場することも珍しくありません。とりわけ大きな注目を集めているのが「卵料理」です。

 たとえば2012年に公開された『青の祓魔師 劇場版』では、海鮮ピラフにふわとろオムレツを乗せた「スーパーイエロー奥村燐スペシャル」なる一品が登場しました。オムレツにナイフを入れると、なかから半熟卵がとろ〜り。さらにその上からビーフシチューをかけるという、至極の組み合わせです。

 そして現在放送中のTVシリーズ最新作『青の祓魔師 島根啓明結社篇』にも、第1話からベーコンエッグの調理シーンが描かれていました。ベーコンからしみ出した旨味たっぷりの脂や、徐々に固まっていく卵の様子までしっかりと描写されており、まるでジブリ作品に登場するベーコンエッグのようです。やたらと卵料理に気合いが入っている同シリーズに対し、「作画班に卵料理ガチ勢おらん?」という疑問を抱える視聴者も少なくありません。

 いずれも放送時間が深夜帯に組まれているだけに、空腹時のリアルタイム視聴は極めて危険です。とはいえ、誘惑に負けて背徳グルメを楽しむのもまた一興でしょう。今期の冬アニメは、いろいろな楽しみ方ができそうです。