「ガンダム」シリーズは無名パイロットのバトルも熱い

 アニメ「ガンダム」シリーズのモビルスーツ(以下MS)戦では、「アムロ・レイ」らネームドキャラ(劇中で名前の与えられた登場人物)の無双が描かれる一方で、名もなきモブパイロットの活躍はなかなかありません。しかし時折、その体のいいやられ役のはずのモブパイロットが、目を見張るようなかっこいい戦闘シーンを見せてくれることもあります。そうした「魅せる戦闘」を演出した名もなき手練れパイロットをピックアップしていきましょう。

●無双アムロのビームサーベルに超反応するリックドム 『機動戦士ガンダム』

 無印『機動戦士ガンダム』では回が進むにつれアムロの成長が著しく、ジオン軍の新型MSであろうが、ネームドパイロットであろうが手を付けられない状況になっていきます。

 そのような背景のなか、「ホワイトベース」は宇宙でジオン軍のムサイ級艦隊と接敵します。「ムサイ」からは数機のMS「リックドム」が出撃、これがなかなかの手練れでした。

 リックドム隊は着実に「カイ」の「ガンキャノン」、「ハヤト」の「ガンタンク」、「スレッガー」の「Gファイター」にバズーカをヒットさせ、戦線を押し上げホワイトベースに砲撃していきます。

 そして、遅れて登場したアムロの「ガンダム」は、瞬く間にムサイを1隻、撃沈しました。ここから無双モードか、と思わせましたが、接敵した1機のリックドムが「ヒートサーベル」でこれに応戦、斬撃はシールドで弾かれるものの、すぐさま二撃目を振り下ろしました。ただこれもガンダムに「ビームサーベル」で防御されてしまいます。

 続いてガンダムの斬撃にはきっちり反応し、屈んでいなしたリックドムは、隙が出来たガンダムのわき腹へサーベルを、両手持ちのフルスイングで叩き込みます。シールドを破壊し、機体も一刀両断……とはならず、ガンダムはシールド側の左手にサーベルを忍ばせており、斬撃を防御すると、リックドムをサーベルで串刺しにして勝負有り、となりました。

 結局、敗北してしまったこのリックドムですが、覚醒まっただ中のアムロの動きに超反応し、追い詰めた練度には感心してしまいますし、名もなきモブなのはもったいないと思わせるシーンでした。

目が追いつかない…! 美しさすら感じさせる手練れのバトル

●戦艦の砲撃をかいくぐりビームサーベルを撃ちあう2機 『機動戦士ガンダムF91』

右手の武器が「ショットランサー」。画像は1991年発売のキット「1/100 デナンゾン」(BANNDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ

『機動戦士ガンダムF91』は、平穏だったスペースコロニー「フロンティアIV」に「クロスボーン・バンガード(以下C・V)」のMS部隊が強襲するシーンから始まります。

 防衛する地球連邦軍とは練度が雲泥の差で、C・VのMS「デナン・ゾン」は次々と連邦のMS「ヘビーガン」や「ジェガン」を撃破します。

 なかには、スウェーバックしながら逃げるヘビーガンを追いかけるデナン・ゾンが、槍状の格闘&射撃武器「ショットランサー」で「ビームライフル」の砲身を弾き、そのままコックピットに撃ち込むという流れるような美しいムーブを見せました。

 その後、今度は連邦の戦艦が宇宙空間からフロンティアIVを強襲し、コロニー目がけてメガ粒子砲を発射します。一方で、コロニー外ではMSの白兵戦も行われており、何発も撃ち込まれるメガ粒子砲をかいくぐりながら、ヘビーガンとデナン・ゾンがビームサーベルを数合打ちあうシーンがありました。見逃してしまうほどの一瞬の戦闘ですが、逃げ場の無いまさに「死闘」が描かれています。

●無謀か蛮勇か? ファンネルに怯まないスタークジェガンの名無しパイロット 『機動戦士ガンダムUC』

『機動戦士ガンダムUC』の名無しのパイロットの活躍は、物語冒頭に訪れます。

「ネオジオン軍(袖付き)」の「マリーダ・クルス」はMS「クシャトリヤ」で単騎出撃、連邦軍のジェガンタイプMS4機と接敵します。

 先行してきた「ジェガン」3機をファンネルで難なく撃墜し、ただのネームドパイロットの権威付けバトルかと思いきや、最後の「スタークジェガン」が曲者でした。

 このスタークジェガンは、先に僚機が撃ち落とされているにもかかわらず、進撃にためらいを見せずミサイルなどで応戦します。撃ち切るとミサイルポッドの装備を切り離して機体を身軽にし、ファンネルの砲撃をぬってクシャトリヤへ肉薄、ビームサーベルで撃ちあいます。

 クシャトリヤもサーベルで応戦し数合……退くことを知らないスタークジェガンはとどめの突きを狙ったところで胴体を真っ二つに一刀両断されてしまいました。

 機体の性能差や僚機の撃墜にもひるまず、完全にクシャトリヤの首を獲りに行っているこのスタークジェガンの名無しのパイロットは、ガンダム史に残るモブの矜持をうかがわせる名場面ではないでしょうか。