生まれつき右手の指が欠損している娘が話してくれた出来事

 給食当番をしていた娘がうれしかった出来事を描いたマンガ「給食当番」が、Instagramで300以上のいいねを集めて話題となっています。

 生まれつき右手の指が欠損している娘。学校の給食当番をしているときに、クラスメイトから指への視線を感じました。手の形が違うことで、じっと見られて嫌な思いをしたり、傷ついたりすることもある娘ですが、この日は違ったようで……。読者からは、「素敵なお友達!」「ちゃんと見るべきところを見られていて良かったですね」「こういった日常を投稿してもらえるのはありがたい」などの声があがっています。

 このマンガを投稿したのは、NPO法人Hand&Footの代表理事を務める、はんどあんどふっとさんです。春日たろうさんの作画で、娘の「りっちゃん」についてのマンガをInstagramで発表しています。はんどあんどふっとさんに、作品についてのお話を聞きました。

ーーこの男の子と娘さんは、普段から仲良しなのですか?

 帰り道が一緒なので、一緒に下校することもあります。以前にも「給食当番、大変じゃないの?」と聞かれたことがあったそうで、もしかすると、娘のことをずっと気にかけてくれているのかもしれませんね。

ーー男の子にほめられたとき、娘さんはどのように思ったのでしょうか?

 娘は右手の指が3本なので、お椀の持ち方がみんなと違います。そのことで「友達に何かいわれないかな……」と不安な気持ちを持ちながら、いつも給食当番をこなしているそうです。

 この日も、じっと見られていることに気付いて「ドキッ」としたようですが、男の子からの想定外の言葉に、とても驚いたみたいですね。その場では照れくさくて、笑って流してしまったそうですが、帰宅してから「すごくうれしかった!」と私に報告してくれました。

ーー給食当番もしっかりこなしている娘さんですが、逆に「こういうことは少し難しい」と感じていることはあるのでしょうか?

 小学校6年生になったいま、日常生活で困っていることはまったくありません。髪の毛や靴ひもは自分で結べますし、自分のことは自分でできるだけでなく、家族のなかで1番お手伝いをしてくれます(笑)。約12年前、娘が生まれた当初は心配するシーンがたくさんありましたが、現在は日常生活において、私が絶対手伝わなければならない場面は思いつきません。丸い棒状のものをつかむことは難しいので、リレーのバトンを持ったり、うんていで遊んだりすることなどは難しいですが……。

 娘の行動には日々感心されられてばかりです。今後も「できないだろうな」「大変そう」「かわいそう」などのさまざまな思い込みや決めつけの気持ちを払拭させていくのだな、そして大きく成長していくのだなと思いますね。

ーーこの作品を旦那様はご覧になりましたか?

 はい。娘のことが大好きなので、男の子とのエピソードに嫉妬していました(笑)。

ーー作品について、どのような意見が寄せられていますか?

「素敵なクラスのお友達ですね」「ちゃんと見ていてくれて良かった」という男の子に対しての称賛コメントや、「その場にいたらできないと決めつけて手伝っていたと思うので、日常を投稿してもらえるのはありがたいです」と、手の違いについて知ろうとして下さる方からのうれしいコメントが届きました。

ーー今回のマンガを描いたきっかけを教えて下さい。

 現在小学校6年生の娘は、「裂手(れっしゅ)症」と呼ばれる手の形で生まれてきました。娘の右手の指は2本欠損していて、関節もひとつありません。この手の形は、約2万人にひとりの割合で生まれるといわれています。

 娘のような手の違いを持つ子は、ものの持ち方やものごとのこなし方が5本指の人とは異なるので、人目が気になってしまう場面がたくさんあります。特に「じろじろと見られる」「何度も手のことを聞かれる」といったことは悩みの種です。また、「かわいそう」「大変そう」と決めつけられてしまうことも。そんななか、クラスメイトの男の子からいわれた言葉を、娘がとてもうれしそうに教えてくれました。今回の出来事を知ることで、娘と同じような手を持つ方やそのご家族に、少しでも安心感を与えられたらな、と思ったことをきっかけにマンガを描きました。

「こんな手の子もいるんだな」と、出会う前に理解してくれている人が、ひとりでも増えればいいなと願っています。