日本のTVアニメ創成期から今日まで第一線で活躍

 10月25日は声優の野沢雅子さんのお誕生日です。おめでとうございます!

 野沢さんと言えば、日本で知らない人はいないのではないか? と思うほどのレジェンド声優。その活躍の数々は今さらご紹介することもないと思いますが、筆者の個人的チョイスで何人かのキャラのことを振り返ってみましょう。

 野沢さんは3歳の時にはすでに子役として銀幕デビューを果たしていましたが、本格的に演劇の世界に入ったのは高校卒業からだそうです。その頃に声優業を始めましたが、当時はまだ声の吹き替えは録音でなく生放送でした。この失敗が許されない環境が、野沢さんのプロ意識を高めたのかもしれません。

 デビュー作にあたる作品は覚えていないそうですが、アニメデビュー作は、『鉄腕アトム』(1963〜1966年)のゲストキャラだったそうです。つまり野沢さんは日本のTVアニメ誕生の頃から現役として活躍していました。

 その後、初主演作となったのが『ゲゲゲの鬼太郎(第1作)』(1968年)の鬼太郎です。そのためか鬼太郎に対する思い入れが人一倍強く、自身が演じたキャラで印象的だった3役のひとつに挙げていました。また作品に対しての思い入れも強く、『ゲゲゲの鬼太郎(第6作)』(2018〜2020年)では父親の目玉おやじを引き継いでいます。

 まだ「テレビまんが」などと呼ばれていたころの日本TVアニメ創成期での活動は目覚ましいもので、『いなかっぺ大将』(1970〜1972年)の大ちゃんこと風大左衛門、『ど根性ガエル』(1972〜1974年)のひろし、『ドロロンえん魔くん』(1973年)のえん魔くん、『ガンバの冒険』(1975年)のガンバ、『おれは鉄兵』(1977年)の上杉鉄兵など、次々と主人公キャラを演じ、作品の記憶と共に声が頭に浮かぶほどの強力なインパクトを与えました。

 代表作を挙げていくと元気な男の子が多くなりますが、それ以外の役どころも当然演じています。例えば『カリメロ(第1作)』(1974年)ではカリメロのお母さん。『超電磁ロボ コン・バトラーV』(1976年)ではロボット声のロペット、敵ボスのオレアナ、南原コネクションの女医さんなども演じていました。

 変わったところで言えば、『ドラえもん』(1973年)でドラえもんの二代目声優を担当しています。他にも『あらいぐまラスカル』(1977年)のラスカルは、鳴き声だけという異色の役どころでした。

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誰もが認める匠の技は「待った」がかかるほど…

 野沢さんが自身で演じて思い出深いキャラに挙げているひとりが、『銀河鉄道999』(1978〜1981年)の星野鉄郎です。鉄郎に感情移入しすぎて、ゲスト声優さんがメーテル役の池田昌子さんと親しそうに話していると嫉妬したというエピソードがあるほど役に入り込んでいました。

 そして、誰もが思い浮かべるほどの有名キャラと言えば、やはり『ドラゴンボール』(1986〜1989年)の孫悟空でしょう。息子の孫悟飯、孫悟天を含めて、野沢さんの印象深いキャラ3人のうちのひとりに挙げていました。若い世代の方は特に野沢さんイコール孫一家というイメージが強いかと思います。

 このひとりで何役も演じるというのは、脇役ならありえますがメインキャラとなるとあまり例がなく、しかも役同士の掛け合いもできるところがスゴいところ。例えば劇場版アニメ『ドラゴンボールZ 地球まるごと超決戦』(1990年)では、悟空、悟飯、ゲスト悪役のターレスの3役を野沢さんが演じています。この物語では脚本家があえてこの3人の掛け合いを増やしたのに、野沢さんが難なく演じきって驚いたというエピソードもありました。

 ちなみにこういった別キャラの掛け合いは通常は別撮りと言って、それぞれ録音するのが普通。ところがバラエティ番組などで見せるように、野沢さんは難なく複数の掛け合いを演じきってしまうそうです。この「一本撮り」と呼ばれる技術は同業者やスタッフも驚くほど。しかしある時、後輩から「一本撮り」をすると他の声優もできるものと思われるので勘弁してほしいと訴えられたそうです。それ以降、野沢さんも現場では「一本撮り」を控えるようになったそうです。

 この悟空関連のキャラはとにかくバリエーションが多く、2017年に『ドラゴンボール』のゲームに関してふたつのギネス認定がされました。ひとつは「ひとつのビデオゲームのキャラクターを最も長い期間演じた声優」。もうひとつは「ビデオゲームの声優として活動した最も長い期間」です。その期間は認定当時で23年218日。これは『ドラゴンボール』のゲームが販売されるたびに更新されていくことでしょう。

 筆者が個人的に思うのが、おそらく日本アニメで一番主演を務めていた期間が長い声優が野沢さんのような気がします。もちろん細かいカウントの仕方があるでしょうから、ギネス記録になるかは分かりません。しかし、それほどのキャリアと実績の持ち主であることは間違いないでしょう。

 アニメファンの多くが物心ついたころから、第一線で活躍している野沢さん。これからも元気なお声を聞かせていただければ幸いです。