幼馴染の「生々しさ」を感じさせたヒロイン

 2023年5月27日、藤崎詩織さまが無事45歳を迎えられました。おめでとうございます!万歳!

「藤崎詩織」とは、1994年にPCエンジンで発売された恋愛シュミレーションゲームの金字塔『ときめきメモリアル』のメインヒロインです。なお、この「45歳」という年齢はPCエンジンで発売された初代『ときめきメモリアル』に準拠した設定です。のちに移植されたPlayStation版やセガサターン版などでは設定が異なります。

 それにしても、45歳の詩織さまはどんな女性になっているのでしょうか。

『ときめきメモリアル4』のメインヒロインのひとりである皐月優は詩織さまの親戚で、彼女の口から詩織さまが伝説の木の下で告白し、その後しあわせに暮らした……というエピソードが語られていますが、それはそれ。

 かつて詩織さまを攻略しようと分厚く気高い壁に挑んだメモラー(『ときめきメモリアル』の愛好者)たちひとりひとりのなかに、詩織さまのその後があってもよいのです。想像の幅は無限大なのです。

 ただひとつ、いわゆる「美魔女」になっている可能性は極めて高いと思われます。45歳ではありますが、インスタグラムあたりに写真を載せれば、「若い!」「20代にしか見えない!」というコメントがバンバン付くでしょう。

 いや、そうであってほしい。詩織さまは永遠に美しくあってほしいという願いは、当時『ときめきメモリアル』をプレイした多くのメモラーたちならば、わかってもらえると思います。

 それなら歳を数えずに、心の中の永遠のヒロインとして崇めておけばいいだろうと考える方もいるでしょう。

 しかし、ただ崇めるには、詩織さまの存在は生々しいのです。

 幼馴染というものは、創作作品ではずっと仲が良いパターンが多いのですが、リアルでは進学など何かのタイミングで疎遠になりがちです。その点、ゲーム序盤の詩織さまは、リアルっぽさにあふれています。

 かつては毎年一緒にクリスマスを祝っていたのに、いつしか祝わなくなり、その後は徐々に疎遠に。同じ高校に入学したものの立場の違いは歴然で、一緒に帰ろうと声をかけると「一緒に帰って友達に噂とかされると恥ずかしいし」と断られる始末。

「ああ、格差が出来た幼馴染って、こんな感じになるよね」という現実感。この生々しさが詩織さまの存在を実在する人間のように思わせてくれた気がします。

藤崎詩織のデビュー曲「教えてMr.Sky」のシングルCD(キングレコード)

いつでも彼女は輝いているはず

 かつてはアイドルとしても活躍されていた詩織さま。今でもきっと根強いファンは彼女の動向を追っているでしょう。詩織さまがファンたちにどのような情報を出していくのかはわかりません。慎み深く家庭に入り表舞台に出てこない姿も想像できれば、美魔女のリーダー的存在として積極的に活動している姿も想像できてしまうのです。

 言うことを聞かない子供たちに頭を痛める母親かもしれませんし、親友のメグメグこと美樹原愛と一緒に表参道のカフェ巡りをしているかもしれません。映えを意識した料理をインスタに上げて注目を集めているかもしれませんし、美容法や化粧についての動画をアップし、インフルエンサーになっているかもしれません。

 ファンの集いに顔を出し、自身のデビュー曲「教えてMr.Sky」を披露して拍手喝さいを浴びているかもしれません。45歳の詩織さまが何をしているのかいくらでも想像できますが、年来に関係なく、何をしていても輝いていることだけは間違いないでしょう。

 メモラーひとりひとりの心のなか中に、それぞれの詩織さまの未来が詰まっている。それでいいのだと思います。あのとき詩織さま攻略のために必死になったメモラーたちの心には、いつもどこかに詩織さまがいるはずです。

 2018年に稼働開始したアーケードゲーム『ボンバーガール』に詩織さまが登場してスキル「伝説の樹の下で」を発動して無敵になり、自爆特攻で相手をなぎ倒したため、一時は「詩織さまを倒せるのは詩織さまのみ」と言われるほどでした。さすがに想像のつかない未来だったと思えます(後に修正されました)。

 1990年代のあの頃、夢見ていた未来は誰のもとにも訪れたわけではありません。きっと苦しかった方のほうが多いと思います。

 それでも、大事な思い出は色あせません。詩織さまとともに過ごした時間もまた、永遠に心の中に刻まれた、大事な宝石なのです。