意外と侮れない? 映画原作のファミコンソフト

 1983年7月15日に発売されたファミリーコンピュータ(以下、ファミコン)のソフトラインナップを見ると、マンガ・アニメ・特撮……などなど、オリジナルタイトル以外にも、他社IPを題材にした作品の多さがうかがえます。いわゆる「キャラゲー」と呼ばれる類ですが、ゲーム市場の隆盛とともにソフトが大量生産された一方、内容が「イマイチ」な作品も少なくありませんでした。

 しかし、なかには元ネタのエッセンスをしっかりと取り入れ、ファミコンのハードスペックを考慮した上で工夫された作品も確かに見受けられたのです。今回はファミコン向けに登場した「映画が原作のゲーム」を、ホラーやバイオレンスSFなど「クセの強い」作品から3本取り上げ、ゲームシステムの魅力や独自要素などを振り返ります。

●『スウィート・ホーム』

 ファミコン屈指のホラーゲームとして名高い『スウィート・ホーム』は、1989年1月21日公開の同名映画(監督:黒沢清)に基づいたRPG作品です。本作の舞台は、悪霊やモンスターが徘徊する不気味な洋館「間宮邸」。プレイヤーは映画に登場した5名のキャラクターを操り、危機を退けつつ間宮邸からの脱出を目指します。

 現代の最新ハードであればホラー映画を上回る恐怖演出も可能ですが、当時のファミコンはスペックの問題上、少なからず演出面で制約がありました。しかし、『スウィート・ホーム』はゲーム化に際して映画にはない、独自要素を追加しています。その最たる例が、キャラクターの生死に関するシビアなルールです。

 同作では一度倒れた仲間は、二度と復活することがありません。文字通り「死」を意味するため、プレイヤーはその後、生き残ったキャラクターのみで攻略しなければならないのです。仲間が少ない状態でも進行できるものの、難易度は当然アップします。ゆえに雑魚敵との戦闘でも、全く油断できません。

 加えて、出現する悪霊ならびにモンスターも描き込みが非常に丁寧で、恐怖心が否応なく掻き立てられます。ゲームシステムと緻密なグラフィックの両面が上手く噛み合った『スウィート・ホーム』は、ファミコン市場において成功した映画ゲームの代表例と言えるでしょう。

●『マルサの女』

 1987年2月7日に公開された『マルサの女』(監督:伊丹十三)は、「国税局の女性査察官と脱税者の戦い」を巧みに描いた作品でした。それから2年の時を経てリリースされたファミコン版は、コマンド選択式のアドベンチャーゲームとして映画の内容を踏襲しており、原作のテイストを上手く再現していました。

 同作の主人公は映画と同じく、優れた税務署員として数々の実績を上げる「板倉亮子」です。彼女がプレイヤーの分身となり、大手企業の社長やいかにも悪そうな政治家など、脱税疑惑がかけられた人物たちの調査に乗り出します。前髪を揃えたボブヘアーが印象的な主人公をはじめ、各キャラクターの再現度も高いです。デフォルメせずに、映画の登場人物をドット絵でしっかり描いている点も、同作の特徴でした。

 原作の映画に忠実なため、ファミコンソフトでありながら内容は大人向きという点も見どころです。税金や企業にまつわる知識、専門用語を読み解く力も問われるため、「子供よりも大人の方が楽しめる」と言っても過言ではない名作でした。

●『ロボコップ』

 低予算で作られながらも世界中で大ヒットを記録、SFアクション映画の名作として知られる『ロボコップ』(監督:ポール・ヴァーホーヴェン、日本公開1988年2月11日)は、激しい暴力描写で「普通のヒーロー映画」を想像して観に行った観客に、トラウマを植え付けた作品でもありました。同作はその人気に伴い、続編映画・アニメ・マンガなど、次々にコンテンツが制作されていきます。

 そしてゲーム市場も例に漏れず、『ロボコップ』は早々にゲーム化を果たし、アーケードゲームや家庭用ゲーム機、ホームコンピューター(コモドール64など)へ移植されました。

 1989年発売のファミコン版は、先に稼働していた「アーケード版の移植」に該当します。犯罪の絶えない未来のデトロイトを舞台に、攻撃力満点のロボコップを操り、銃器や鋼鉄の拳で悪人を次々と蹴散らす。この爽快感が同作の最大の醍醐味です。

 ハードスペックの問題から、完璧な移植とまではいかなかったものの、映画を題材にした横スクロールアクションゲームとしてのクオリティは十分でした。売れ行きが好調だったからか、続編の『ロボコップ2』もゲーム市場で日の目を浴びています。