信じて時間を無駄にした?

 インターネットが普及していなかった時代、ゲーム界隈では嘘か真実かの区別が絶妙につきにくい「デマ情報」がいくつも存在していました。自身の探求心や子供心をもてあそばれ、その真相にショックを受けるという流れは、当時のプレイヤーの多くが経験したのではないでしょうか。

 スーパーファミコン版『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』の「エスタークが仲間になる」というデマは、その代表例でした。エスタークは本作の隠しダンジョンで戦うことになる裏ボスで、前作『ドラクエ4』の大ボスのひとりです。「地獄の帝王」という異名を持ち、存在感も貫禄も抜群のボスキャラが仲間になるという噂は、多くのプレイヤーをゲームに熱中させました。

 エスタークは何度でも戦いに挑むことが可能で、その都度撃破するまでにかかったターン数を教えてくれます。「エスタークが仲間になる」というデマは「エスタークを10ターン以内に倒す」という条件付きで流れており、明確なターン数を指定されているところが妙な信憑性を持たせていました。

 また、かの有名な隠しコマンドの影響もあってか、ファミコン版『グラディウス』のデマ情報にも多くの子供たちが時間を割きました。デマの内容は「強化オプションをふたつ付けた状態で負けた後、次のビックパイパーが来る前にコントローラーIの十字ボタンを『右右左左上右下左』と押した後に、コントローラーIIのマイクのボリュームを最大にして『オップション』と叫ぶと、次の自機がすでにオプションをふたつ持って現れ、前にやられた場所に落ちているオプションをさらに装着できる」というものです。

『グラディウス』といえば「上上下下左右左右BA」、通称「コナミコマンド」の原点となった作品で、裏技ブームの火付け役となった存在です。無限オプションのデマも、当時の子供たちが騙されました。何度叫んでも異変が起きないので、IIコンのマイクを綺麗に掃除したり、友達と複数人でマイクに向かって叫んだりする人もいたようです。

 こちらの情報の出どころは、ゲーム情報誌「ファミリーコンピュータMagazine」(徳間書店)に載っていた、人気コーナー「ウソテックイズ」のなかで紹介された、いわゆる「ウソ技」がもとでした。

「無敵モード」が搭載されている噂があった『スペランカー』(アイレム)

無敵モードで楽々クリア? リズムゲームみたいなコマンド入力

 ファミコン版『スぺランカー』の「無敵モードコマンド」も、挑戦した人もいたのではないでしょうか。『スペランカー』といえば主人公が死にやすいことで有名なゲームで、その作品の無敵コマンドというのは、誰が見ても惹かれてしまうものがありました。こちらも前述の「ウソテックイズ」が出どころです。

「無敵モード」になるために求められる条件は、「タイトル画面の時にIIコンの十字キーの右と上を押さえ、IコンのAボタンをタイトルBGMに合わせて押す」というものです。「スペランカーをどうしてもクリアしたい!」という志の元、何度も何度もコマンドを入力してみるものの、当然デマなので無敵モードはいつまでたっても発動しません。必ず何かあると信じてやり込んだ分、ウソだったと知った時のショックも大きいものでした。

 ネット上では「未だにウソ技への恨みが晴れない」「友達の友達とか、友達の従兄弟からの情報は信じちゃいけない」「ファミマガに何度も騙された」と、デマを信じた思い出で盛り上がる声もあります。真実か定かではないのに挑戦してしまうあたり、こういったデマの検証も含めてレトロゲームの醍醐味といえるのかもしれません。