2月や3月に3万円を上回った日経平均株価は、21日に大幅下落するなど、足元でもたついている。先駆して上昇したハイテク関連株や半導体・電子部品関連など、「新型コロナウイルスをきっかけにデジタル化が加速する」といった状況を追い風にした銘柄は、買いが一巡したかのようだ。そんな中、株式市場で徐々に期待が高まりつつあるのが「ワクチン相場」だ。世界的に新型コロナのワクチン接種が進み、経済活動が本格的に再開することへの期待感を、どういった形で株価が取り込むのか。

 新型コロナの影響で経済が止まる、との見方から株式相場が全面安に陥ったのが昨年の3月。日経平均が1万6000円まで下落した。最も安かった局面と比較すれば日経平均は2倍近くになった。だが、新型コロナの影響が大きかった飲食関連、旅行関連、アパレルといった「お出かけ関連」は特に、日経平均が1万6000円台を付けた昨春と変わらない水準でウロウロしている銘柄が散見される。経済活動が本格的に再開すれば、こうした株価が少なくとも「コロナ前」ぐらいには回復するだろうというわけだ。

 そのときを目指して、すでに動き始めた銘柄もある。たとえばKNT−CTホールディングス(証券コード9726)を見てみよう。近畿日本ツーリストとクラブツーリズムの旅行2社を傘下に収める旅行の持ち株会社だ。日経平均株価が底値になった昨年3月半ば、同社株も612円まで売り込まれた。その後はリバウンドもあったが、結局は1000円の節目をはさんで約1年推移した。それが5月12日に21年3月期の大幅赤字と同時に、親会社の近鉄グループホールディングスから400億円の資金調達をすると発表したのをきっかけに買いが入り始めた。6月14日には1557円まで上昇と、2019年11月以来ほぼ1年7カ月ぶりの高値を付けている。旅行の復調を先取りする動きといえる。

 旅行や出張が動き出すとなると、必要になるのは交通機関だ。まずJAL(9201)とANAHD(9202)の空運株だ。足元では利食われながらも、水準を徐々に切り上げているように見える。同様にJR東日本(9020)、JR西日本(9021)、JR東海(9022)、JR九州(9142)のJR4社も微妙だが、株価チャートを見る限りは下値を固めたと読めそうだ。空運株とJR4社に共通する国内の長距離旅客輸送で需要が回復するタイミングを見計らって、打診買いを入れる動きが出ているもよう。同様に国内出張・旅行需要の回復をにらむなら、ロイヤルホテル(9713)や京都ホテル(9723)などのホテル株にも注目したい。

 ワクチン接種を済ませると、ようやく「ちょっと一杯」の需要も回復するだろう。都市部では酒類の提供が事実上禁止され、休業する店舗も相次いだが、そうしたコロナ対策も徐々に緩和される段階が見えてきた。そこで居酒屋関連の銘柄にも関心が集まりやすい。鳥貴族ホールディングス(3193)、チムニー(3178)、ワタミ(7522)、マルシェ(7524)といった、むしろこれまで株価の戻りが鈍く、出遅れた銘柄「残り物」ほど、戻りの余地が大きく「福」がもたらされるという見立て。少し前のことを思い出してみると、こうした業界はもともと人手不足だった。従って新たな事業拡大には時間もかかり、このため株価の戻りもコロナ前までになる公算というわけだ。

 飲み会も含めて出かける機会が多くなると、新しい服も必要だ。「巣ごもり」では不要とされてきたファッション関連、特にアパレルなどに戻りの余地を見出す動きが活発になりそうだ。ワールド(3612)、三陽商会(8011)、オンワードホールディングス(8016)のアパレル3社も、じわじわと下値を切り上げている。「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング(9983)が2〜3月にかけて10万円台まで上昇して以来、目標達成感から売りが出ているだけに資金の移動先として関心が高まる展開もありそうだ。

 「ワクチン接種が着実に進められているということで、感染症に対する警戒感が徐々にやわらぐようなら、これまで抑制されていたサービス消費が大きく盛り上がるということも考えられる」。こう話すのは日銀の神戸支店長だ。昨年前半に悪化した景況感は海外需要の増加を受けて急速に改善し、日銀短観などを見ても輸出が多い製造業の景況感はすでに「コロナ前」を回復した。個人消費も底堅く、緊急事態宣言の最中でも、百貨店が高級ブランド品の売り場を開けようとしたのは、それが売れているからにほかならない。景気は必ずしも悪くない。使いたくても使えない状態が取り除かれるなら、個人消費が急速に回転する可能性があるというわけだ。もしかすると来年のいまごろは、空前の旅行ブームに沸いている?

(経済ジャーナリスト・山本 学)