9月17日、自民党総裁選が告示されました。総裁選は、その選挙方式や党内の深謀遠慮もあり、最終的にどなたが勝つかは、まだまだ分からない、と思います。

政治の世界の論理というのはかなり特殊ですし、一般の方からは、混沌とした状況について「何がどうしてそうなっているのか」が、分かりにくい部分も多いと思います。連日報道も過熱していますが、通常とは少し異なる視点も交え、掘り下げてみたいと思います。今回は前編。

各候補者について

まずは、僭越ながら、各候補の強みと弱みと思われるものを一言だけ。(※立候補表明順)

岸田文雄氏
・昨年とは打って変わって、力強く国を担う使命感を感じさせる。政策力や調整力。聞く力。
・堅実さが世間には地味と映る。ベテラン・若手など多方面に配慮した運営を求められる。

河野太郎氏
・国民受けする発信力。
・安定した政権運営・官僚活用に課題。「脱原発」等の主張とその変節。

高市早苗氏
・人心に訴えかける演説力、主張内容の力強さ・一貫性。
・「一議員としてはOKでも、一国の総理がそれをやったらいろいろ問題が起こる」主張を、実際にどう進めていくのか。

野田聖子氏
・「子どもや女性など、これまで主役になれなかった人に光を当てる」という、「痛み」に寄り添った姿勢は、今の日本で重要。女性がリーダーであることの意義のひとつ。
・世論や議員内での支持の拡大。

総裁を選ぶ基準とは?

総裁選というのは、最高権力者を巡る苛烈な権力闘争です。支援の基準は、純粋な人気投票でもなければ、必ずしも、政策や人柄が良いから支持される、というものでもありません。

国会議員がどの候補を支援するかを選ぶ理由として、「誰が総裁になったら、処遇・人事など、将来的なことも含めて、自分(たち)にとって最も得か・有利か」、「自民党の支持率が上がり、直後の衆議院総選挙で自分が当選できるか」といったことが、よく言われるわけですが、もちろんそういう面も強くありますが、一方、その候補者の思想・主張に共感できるという根本的なことや、その人に恩義がある、あるいは、派閥含め、恩義のある人からその候補の支援を依頼された、などのウェットな要素も、強く作用します。

そして、最後は「勝ち馬に乗る」というのが、多くの人の判断基準になります。予想外のどんでん返しも起こります。いずれにしても、その時々の情勢も見ながら、深謀遠慮が繰り広げられることになります。

本来であれば、国民としては、「誰が総裁・総理になるのが、最も国民のためになるか?現在及び将来の日本の良い国造りにつながるか?」といった観点から選んでほしい、と思うわけですが、必ずしもそうとも限らないところが、悩ましいところです。

必ずしも、本心から支援をしている人ばかりではない?

総裁選は、一回目は党員・党友(383票分)と国会議員(383票)で投票され、そこで誰も過半数を取れなければ、上位2名で、党員・党友(47票分)と国会議員(383票)による決選投票、という方式を取っています。

この制度が、状況をより複雑・戦略的にします。例えば、重鎮が、本当に総裁になってほしいと思っている候補(A)を勝たせるために、一回目は別の候補(B)を支援し、自派から推薦人を出す、といったことも行われたりします。すなわち、立候補者が多ければ、一回目は票が割れ、過半数を取ることが、どなたも難しくなります。そこで決選投票に持ち込めば、国会議員票の影響が大きくなるので、2位・3位連合を組んで、1位の候補に対抗することによって、逆転が起こり得ます。こうした戦略が方々で練られ、実際に行われているわけです。

◆豊田 真由子 1974年生まれ、千葉県船橋市出身。東京大学法学部を卒業後、厚生労働省に入省。ハーバード大学大学院へ国費留学、理学修士号(公衆衛生学)を取得。 医療、介護、福祉、保育、戦没者援護等、幅広い政策立案を担当し、金融庁にも出向。2009年、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部一等書記官として、新型インフルエンザパンデミックにWHOとともに対処した。衆議院議員2期、文部科学大臣政務官、オリンピック・パラリンピック大臣政務官などを務めた。