「これ知ってます?都道府県キーホルダー」

 そんな書き出しで始まる一つのツイートが、話題になりました。添えられた写真には、各都道府県がピッタリ重なり、見事に完成した日本地図が。その昔、旅先のお土産屋さんには必ず、都道府県名や観光地名などがデザインされた何種類もの地図・ご当地キーホルダーがあり、子どもたちが目をキラキラさせたもの。そんな地図キーホルダーの魅力にハマり、30年という空白の時を経て完成させたという男性にお話を聞きました。

 男性は、山口県防府市の「HARAデザイン」代表兼カメラマンを務める、原伸二郎さん。10月13日に投稿した冒頭のツイートは、多くの人の思い出を呼び起こし、これまでに12.6万いいねを集め、「私も持ってた」「つながるとは!」「子供の頃旅行に行ったら、大抵コレかペナント買ってた」という声や「うちの県が見たい!!」という依頼が続々と…。

きっかけは、ポートピア’81

−集め始めたきっかけは?

「1981年、僕が小学4年生のときに開催されたポートピア博覧会に行った時に、兵庫県のキーホルダーを買ったのが最初です。お土産屋で見つけてカッコいいと思って、兄と一緒に同じ物を買ってもらいました」

−おお…。ポートピア81ですか!でも、そこから本格的に集めよう、となったのは?

「日本全国旅をするボードゲームでよく遊んでおり、全国を巡るという思いは元々あったと思います。近県に出かけた際にいくつか購入してましたが、ある時並べたら県境がピッタリくっつく事に気が付き、『もしかしてこれ日本地図になるんじゃ!』と興奮したことはよく覚えています。その後、兄弟の修学旅行やクラブの遠征等で県外に行く機会があれば買い集めていましたが、山口県からの行動範囲では東北地方はまず機会がないんです。難しいかなと感じてた頃に埼玉の叔父が探すのを手伝ってくれて。東京で多数売ってる場所を見つけてくれたので、足りないリストを送って買ってもらいました」

−優しいおじさんですね!

「本当に。都道府県キーホルダーって当時から種類が幾つかあり、あまり気軽に他人にお願い出来なかったんです。ただ、一個600円ぐらい(だったと思います)の金額を負担させた事に母から怒られる羽目になって、ここで収集は止まりました。それが高校2年の時で、この時点で残り2つ(青森、北海道)。いつかは北海道に行く事もあるんじゃないかと思ってましたが、ついにその機会も無く30年が過ぎてしまい、完成してない事がずっと悔しかったので、この気持ちをスッキリさせようとオークションで落札しました」

−地図キーホルダーの魅力は?

「小さいですけど地図なんです。1個新しいのを手に入れたら毎回組み立ててました。山口県を拠点に段々全国制覇してるような気分でした。やっぱり一番印象に残ってるのは兵庫県ですかね。この最初の一個が全てですし、この時に母と兄とポートピア、姫路城、明石天文台を巡ったのが楽しくて。多くの方に懐かしさと子どもの頃の夢を思い出してもらえたみたいで嬉しい限りです。僕の中でやっと昭和が終わりました(笑)」

 ちなみに、「日本お土産キーホルダー大全」(水上友・著、タツミムック、2016年)によると、このシリーズには沖縄県はないそう。原さんは「あくまで予想」としつつ「このシリーズは当時の国鉄路線を描いているので国鉄路線のなかった沖縄はないのかなと思ってます。国鉄が『いい旅チャレンジ2万キロ』という全国キャンペーンやってる頃でしたから」と話します。

 鉄道から車へ…「旅」の形とともに成長、そして…

 今もお土産用のご当地キーホルダーを製造している桂記章(金沢市)の3代目、澤田幸宏社長(55)によると、こうした地図キーホルダーは全国に高速道路が作られ始め、マイカーでの国内旅行が盛んになるのと期を同じくして人気に。新幹線や高速道路、「国道○△号線」のキーホルダーもあり、最盛期は「1988年の瀬戸大橋開通の頃」。業者も12、13社はあったといい、「まだ海外旅行に行く人も少なかった時代ですし、作れば作っただけ売れたんです。当時は先代の父もずっと仕事をしていました」と振り返ります。

 ただ今回、原さんが完成させたのは別メーカーの製品といい、「すごく人気でしたね。うちも似たようなのを作りましたが、合体させようとすると都道府県ごとに大きさがかなり違うので値段設定も含め、なかなか上手くいかなかった」と話します。平成に入ると海外旅行ブームとともに国内の旧観光地は軒並み衰退。原さんのキーホルダーの業者を始め、銘板加工を主体にしていた東京や大阪の業者もほとんど廃業しました。同社は元々バッジ製造が主体で地元に根付いていたため生き残り、廃業した業者の型も一部、保管しています。

 ご当地キティなどファンシー系にも押され、かなりレアな存在になってしまった地図キーホルダーですが、今でも北海道や沖縄はよく売れ、インバウンド旅行客にも大人気だった…のだとか。それがこのコロナ禍で損害は「億単位」といいますが、GoToキャンペーンなど国内旅行の再評価に望みを掛けているといい、「日本には美しい自然や温泉、美味しい食事も楽しいアクティビティも、まだまだ魅力がいっぱい。この機会に日本人が都道府県を巡ってまた集めてくれるようなキーホルダーをもう一回やりたいな、と思ってるんです」と話してくれました。

(まいどなニュース・広畑 千春)