「がん患者を看病する人の日常を、知ってほしい」。その思いを映像にした映画づくりがスタートする。メガホンをとるのは、がん家族の支援活動を行っている一般社団法人Mon amiの理事長、酒井たえこさん。ボランティア参加のクリエイターといっしょに、がん家族のリアルな姿を伝える映画を撮影する。

「がん患者さんは、たくさんの人に支えられて闘病していますが、その影で、ほとんどサポートを受けられていないのが、がん患者さんを看病している『がん家族』です」。

酒井さんは数年前、がんになった父を看病した経験があり、そのとき、がん家族の孤独と孤立を実感したと話す。
「弱っていく患者本人の心の叫びを聞きながら、毎日のように治療の決断を迫られるのが、がん家族。自分がどんどん疲弊していくんです。そんながん家族をサポートする存在が必要だと思い、支援活動を続けています」。

特にコロナのこの時期、がん家族はさらに大きなストレスにさらされていると話す。
「面会禁止になり、患者のことを気にかけながらも、誰とも接触できなくなり、さらに孤独感を募らせています。そんな状況を少しでもやわらげたい、がん家族のお役に立ちたちという強い気持ちが、映画化に踏み切らせてくれました」

映画は20本の短編を2本撮影。2組のがん家族に密着し、その一日をあますところなくカメラに収める。
「とても淡々とした映像になります。ドラマティックなシーンもなければ、お涙頂戴のようなシーンもない。でも、それががん家族の力になると信じています」

酒井さんは、「近所の家の中をのぞくようなもの」と表現。がん家族がどんな食事をし、どんな看病生活を送っているか具体的に知ることは、同じがん家族にとって安心につながると言う。
「こんな夕ご飯食べてるんだな、とか、患者さんを一人残してちょっと外出することもあるんだな、とか、よその家庭の何気ない暮らしが分かれば、『ああ、そんなにがんばらなくても看病できるんだ』と肩の力を抜けますから」

映画は自主制作の形で進行しているが、酒井さんの思いに賛同したさまざまなクリエイターが自主的に参画。映画のタイトル画像を担当した漫画家のたちばないさぎさんもまた、がん家族の一人だ。
「がん家族は、翌年の桜をいっしょに見られるかどうかも分かりません。だからこそ、ともにいられる瞬間が愛おしい。それを絵に表現しました」

映画のエンディングテーマを作曲した音楽家のKiroさんは、親しい知人をがんで亡くした経験を持つ。「テーマ曲のタイトルは『舞い上がれ、桜の雨』。散る桜ではなく、舞い上がる桜をイメージしました」

昨年のクリスマスイブから、映画化の資金を募るクラウドファンディングもスタート。がんで家族を亡くした家族からの支援も寄せられていると話す。
クラウドファンディングに挑戦したのは、資金を集めるためだけでなく、より多くの人にがん家族のことを知ってほしいからだと酒井さん。

「身近な人ががんになる時代です。クラウドファンディングに支援しなくても、ほんの5分だけでも、がん家族のことを考えてもらえるきっかけになればと思っています」

(まいどなニュース特約・高野 朋美)