そうくん(推定5歳・オス)は飼い猫だったが、兄弟と一緒に公園に捨てられていた。1匹だけ生き残り、公園のボランティアが地域猫として可愛がっていた。千葉県に住むSさんが家族で公園に出かけた時、他の猫は逃げてしまったが、そうくんはSさんの夫の膝の上で寝てしまった。

公園でうたたねしていた野良猫

2018年11月11日、千葉県に住むSさんは、家から少し離れた公園に家族で遊びに行った。そこにたくさんの猫がいた。動物が大好きな子どもたちは大喜びで猫を触ろうとしたが、みんなすぐに逃げてしまった。「近づくと怖がっちゃうね」などと言いながら歩くと、少し丘になったところに1匹のキジトラの猫が太陽に照らされて気持ち良さそうに寝ていた。「また逃げられちゃうかな」と言いながら静かに近づいてみると、その子は全く怖がることなく、目をつむったまま動かなかった。そっと撫でてみるととても気持ち良さそうな顔をしたので、夫が思い切って抱っこをしてみたら、驚くことに夫の膝の上でお腹を出して寝てしまった。

「こんなに人懐っこい猫ちゃんは見たことがない!」と思ったSさん一家は、その子に一目惚れしてしまった。もともと猫が少し苦手だったSさんも、「この子なら大丈夫!」と思い、飼いたい!と思った。

「私たち夫婦は、多頭飼育崩壊や殺処分のニュースを見て、将来動物を飼うなら絶対に保護猫や保護犬にしようと決めていたので、この時の出会いは本当に運命でした」

誰かに連れていかれたらどうしよう・・・

すぐ側に案内所のような建物があり、ちょうど中から職員の方が出てきたので、「この子を飼うにはどうすれば良いのですか」と聞いてみたところ、この子の名前は「そう」と言い、約2年前にこの公園に捨てられ地域猫になったと教えてくれた。この公園の猫を飼うには保護猫活動をしているNPO法人に連絡をする必要があると、法人の代表者の連絡先を教えてくれた。Sさんは、すぐにその場で電話をして、手続き方法などを教えてもらった。

質問票を提出し、審査に通ったら2週間のトライアル期間を経て正式譲渡となるという流れだった。

「あれだけ人懐っこくてイケメンのそうが、この期間中に他の誰かに連れて行かれたりしないか…もし事故に遭ったりしたらどうしよう…」と、Sさんは心配した。不安ばかり頭に浮かび、団体の人から連絡が来るまでの数日間は、とても長く感じられた。

初めてそうに会った日から我が家に来るまでは2週間も無かったが、あまりにも心配で、Sさん一家は、そうくんに会うために再び公園に行った。その時もそうは前回とほぼ同じ場所で寝ていて、すぐに抱っこできた。腕の中でスヤスヤ寝ている寝顔を見つめながら、「もうすぐ家族になれるね」とSさんは話しかけた。家族みんなでそんな話をしながらしばらくそうくんを抱っこしていたことを覚えているという。

よく鳴くから「そうくん」

11月23日、団体の代表の方がそうくんを連れてきて、保護当時の話を聞かせてくれた。

「そうは元々3兄弟で、飼い猫だったそうです。団体の人がそうを初めて見た時、首輪の跡がついていたので飼い猫だと分かりました。約2年前(2016年)に3匹一緒に公園に捨てられていたのですが、1匹はすぐに行方不明に。もう1匹は道路に飛び出したところを車にひかれて亡くなったと聞きました」。

1匹だけ残ったそうくんは、公園の地域猫として暮らすことになった。

「そう」という名前は団体の人が付けた名前だが、とにかくよく鳴いて騒がしいので「そう(騒)」という名前にしたという。

そうくんは本当によく鳴く。ごはんの時はもちろん、名前を呼ぶと寝ていても鳴いて返事をするし、背中を撫でていても鳴く。甘えたい時やSさんが外から帰ってきた時もずーっと鳴いているという。

Sさんは全く気にならなかったが、その後2匹の保護猫を迎え入れて、「なるほど、やっぱりそうは騒だ!!(笑)」と感じるようになった。

成猫と暮らす穏やかな日常

そうくんは、初めてSさん宅に来た日もずっと鳴いていた。鳴きながら家の中を隅々までチェックしていたが、最後に落ち着いたのは夫の膝の上だった。

「そうの可愛い寝顔を見ながら、こんなに人懐っこくて穏やかな子をなんで捨てたのか…と怒りの感情が込み上げてきました。そうはもう一生分の悲しい思いや怖い思いを経験したのだから、これからは絶対に毎日が幸せであってほしいと強く思いました」

そうくんは、最初はトイレに慣れず、絨毯の上でおしっこをしてしまうこともあったが、それ以外はなんの問題もなかった。毎日、家事がひと段落してSさんがソファに座ると、そうくんが膝の上に乗ってきて、しばらく一緒に昼寝をしたり、ブラッシングをしたりして穏やかに過ごすことができた。Sさんは初めて猫を飼ったが、成猫ならではの落ち着きが、Sさんの暮らしになじんだという。

「そうを家族に迎え入れてから、夫も私も穏やかになったように思います。そうを見ていると、人間はなんてせっかちで、小さな事や些細なことで悩んだり苦しんだりしているんだろうと気付かされることがよくあります」

子どもたちとの会話も増え、そうくんのことを話さない日はない。子どもたちが、本当に小さなことでも「今日そうちゃんがね…」と嬉しそうに話すのを聞くと、Sさんも楽しくなるという。

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)