阪急電車といえば「マルーンカラー」と呼ばれる独特の茶色をイメージする方が多いでしょう。関西では「茶色の阪急電車」は十分に知られていましたが、2011年公開の映画『阪急電車 片道15分の奇跡』により、全国的に知名度が一気にアップしたように感じます。

ところで噂によると昔はマルーンカラーでない阪急電車も走っていたとか? さっそく調べることにしました。

1950年に走った宣伝列車

「論より証拠」ということで、大型商業施設「阪急西宮ガーデンズ」にある「阪急西宮ギャラリー」を訪れました。ここには阪急電鉄や阪急が運営していたプロ野球チーム「阪急ブレーブス」の歴史などが紹介されています。

マルーンカラーの電車模型が多い中で、ひと際目立つ阪急電車を見つけました。クリームを基色に水色の帯が入った塗装ですが、普段見る阪急電車と比べるとド派手です。

側面よりも前面の方が派手かもしれません。下半分を水色一色にせず、クリーム地を残しているあたりにデザインセンスを感じます。

さてこのド派手な車両は1950(昭和25)年に西宮球場と外園で開催された「アメリカ博覧会」の宣伝列車として運行されました。もちろん「アメリカ博覧会」終了後は元の塗装に戻っています。

「アメリカ博覧会」の開催時期は3月18日〜6月11日(5月31日からの延長)の約3カ月! 約3カ月という短期間の博覧会にも関わらず、宣伝の力の入れようがすごいと思います。

再び前面を見てみましょう。「神戸」「京都」の看板がある通り、この車両は神戸〜京都間の直通列車として運行されました。所要時間は約70分だったようです。参考までに近年運行されている神戸三宮から嵐山行きの臨時列車ですと、神戸三宮から桂(京都府京都市)までが約70分です。様々な環境は異なりますが、現在と比較しても遜色のない走りっぷりだったのでしょう。

約30年前にマルーンカラーを変える議論があった?

「アメリカ博覧会」宣伝電車以降はマルーンカラー一色が続きましたが、1975(昭和50)年に登場した京都本線の特急専用車両6300系では上部にアイボリー塗装が施されました。その結果、よりマルーンカラーが際立ち、「カフェオレ電車」と呼ぶ沿線住民もいます。

1989(平成元年)年にデビューした8000系から通勤電車でもマルーンカラー+上部アイボリーの組み合わせが採用され、現在の1000系まで引き継がれています。また1990年代後半から7000系や5000系なども6300系に準じたマルーンカラー+上部アイボリーになっています。それでもマルーンカラーが基色であることから、マルーンカラーの伝統は守られていると言っていいでしょう。

ところで8000系を製造するにあたり、アルミ合金車体からステンレス車体への変更が社内で持ち上がりました。もしステンレス車体を採用していたら、京都本線・千里線で走る銀色に茶帯の大阪メトロ車両のような新車が登場したかもしれません。

結局、マルーンカラーへのこだわりなどにより、アルミ合金車体の継続を決定。先述したとおり、8000系以降の基色はマルーンカラーとなりました。また赤みが増した塗装を試した時期もありましたが、こちらも不採用となっています。

このように脈々と受け継がれている阪急のマルーンカラー。「アメリカ博覧会」の経緯を考えると、2025年に開催される大阪・関西万博での変化も考えられなくはないですが、阪急がマルーンカラーを捨てることはないでしょう。これからもマルーンカラーの阪急電車が走り回ることを期待しています。

(まいどなニュース特約・新田 浩之)