今月上旬のことだ。兵庫県宝塚市在住の方から「3日ほど前から母猫と子猫4匹が自宅の庭にいるんですが、見に来ていただけませんか?」と相談が入った。いまの時期は春に産まれた子猫が母猫と一緒に行動することが多い。

 依頼者と話し合い、母猫はTNR。子猫4匹は当団体で保護することにした。

どこに行ったんだ?まさか庭の外に

 依頼者の自宅は想像していた以上の邸宅だった。到着し、親子猫がいたという庭の中に案内されたが、どこにも見当たらない。依頼者は「さっきまでここにいたんですが」と、三角ベースができそうなほど広い庭を見渡した。猫を探していると、近所の住民も手伝いにやってきてくれた。

 この日は夏日で、立っているだけでジトッとしてくる。みんな汗をぬぐいながら思い思いに散らばった。

 しばらくすると、庭に植えられたツツジの裏で三毛柄の母猫と子猫4匹を見つけた。草が生い茂り見えにくいが、母猫は横になって寛ぎ、子猫は母猫からミルクをもらったり、ゴロンと仰向けになって寝ているようだ。子猫は茶白柄や黒柄が確認できた。しかし、こちらに気が付くと、警戒してどこかへ走り去ってしまった。

 「どこに行ったんだ?まさか庭の外に」

 初めての場所で勝手が分からない。庭のツツジや生い茂った草木をかき分けて探したが見当たらず、庭から外へ出て行った可能性を考えた。外周を探そうと一度外へ出たが、外壁が高いため、どう考えても子猫が簡単に庭から外へ降りることができそうにない。

 門扉の前で「どこへ行ったんだろう?」と思いながら、ふと頭上を見ると、そこには驚くべき光景があった。なんと、立派な門の屋根にある、わずかな隙間に挟まるように子猫4匹がぎゅうぎゅう詰めになって隠れていたのだ。庭の外壁と門の上側で一部繋がっているところがあり、おそらく、そこから逃げ込んだのだろう。

 高い所からこちらの様子を不思議そうに見ている茶白柄の子猫がとても可愛らしく見える。目が合い一瞬びっくりしたが、子猫たちがまたどこかへ行かないように私たちはそっと捕獲の準備をはじめた。

 門の上側に1人が回り込み、子猫が逃げ込んだと思われる場所に網をセットして逃げ道を塞ぎ、私が地上から保護するという挟み撃ち作戦を考えた。こんなとき、背が高いのは役に立つ。

 私は門の下に足場をセットし、片手にキャリーバッグを持って子猫へ近づく。もう一方の手を子猫がいる狭い隙間にゆっくりと伸ばした。すると驚いた子猫たちは一目散に走りだした。1匹は上側でセットしていた網に入ったが、あろうことか残りの3匹が想像していた方向とは違う方へ逃げ出したのだ。

 「しまった!」

 慌てて子猫を追いかけた。その直後、門の上側にいた1人が1匹を、私が1匹を捕まえ、何とか3匹保護できたが、黒柄の1匹だけ逃げてしまった。

 子猫はまだ生後1カ月半ほどである。このままだと…。庭の草木の中に逃げて行ったため、手分けして捜索を始めた。すると、そこへさっきまでいなかった白黒柄の、ちょっといかつそうな成猫が現れた。どうやら父猫。こちらもTNRするため、捕獲器に入ってもらった。

お願いやから出てきて!

 その後も残された1匹を保護するため、全員で草木をかき分け、虫に刺されながら必死に庭の中や近隣を探したが、見つからない。翌日の明け方から雨予報だったため、早く見つけなければ…。

 「お願いやから出てきて!」

 日が傾き始めたこともあり、祈りながら探した。しかし、保護した3匹の猫も心配だ。きっとお腹をすかせていることだろう。私は母猫がはぐれた子猫を見つけてくれることを祈りつつ、依頼者に後を任せ、一旦保護している子猫達の世話をするため、施設に戻った。

 2時間後。依頼者から「見つかりました。子猫を保護できました」とうれしい電話が入った。母猫と逸れていないか心配もあったため、ひと安心した。現場へ向かうと、依頼者から母猫もついさっきまで近くにいたと聞き、依頼者の自宅敷地内に捕獲器をセット。保護した子猫を依頼者から預かり、再び施設へ連れて帰った。

 さらに、それから2時間後、今度は依頼者から「お母さん猫が捕獲器に入りました!」と連絡が入り、すぐ迎えに行った。気がつけば、日付は変わり、なんとか雨が降るまでに無事に6匹を確保し、このときばかりは心底ホッとした。

 その後、親猫2匹は避妊・去勢手術の際に血尿が見られたため、施設で4泊し、体調を確認してからリリースをした。親猫たちは長い時間、捕獲器の中にいたのでストレスがたまったと思うが、これも健康確認のため。許してもらいたい。

 子猫は当団体の施設で元気にしている。表情や仕草は似ているけれど、黒、白黒、茶白2匹の4匹。微妙に配色が違うのがおもしろい。しかし、みんな小さくフワフワしており、とても可愛らしい。まだ怖がっている子もいるが、徐々に心を開いてくれている。これから初期医療と隔離期間を経て、里親募集をする予定だ。

(NPO法人動物愛護 福祉協会60家代表・木村 遼)