3月に広島市を訪れた際、見覚えのある路面電車が目に入った。前方に「鞍馬」のプレート、側面には京都市交通局の局章(マーク)も。運行する広島電鉄(広電)に聞くと、やはり「京都市電の車両です」。京都の市電廃止から43年。まだまだ元気に快走していた。

 広電は路面電車を廃止した大阪市や神戸市などから計111両を購入。外装をほとんど変えずに運行し、「動く電車の博物館」とも呼ばれる。廃車されたものもあるが、京都市電の15両は1両も引退していない。広電は「他都市から来た車両の中で、現役は京都が最も多い。構造がしっかりしている」。

 広島市民からも愛されている。購入時、公募で愛称を募ったところ、9千通の応募があり、15両全てに「舞妓」「西陣」「祇園」といった愛称が付く。広電社内報によると、「あらし山」が試験運転された1979年3月1日には、「京都からきました」という横断幕が車両に掲げられ、多くの市民が沿線で見守り、歓迎されたという。京都市民にとってもうれしい話だ。

 70年代の交通渋滞を受け、京都は市電を道路から排除し、広島は逆に軌道から車を追い出す選択をした。どちらが正しかったかは、一概には言えない。ただ京都は、多額の税を投入して市電の代わりに地下鉄を建設し、その借金に今も苦しんでいる。「古いモノを大切に使う」という京都の伝統を引き継いだ広島の姿を見ると、うらやましく思える。

 京都市電の車両は伊予鉄道(松山市)でも5両が現役として走っている。

(まいどなニュース/京都新聞)