神戸市西部を中心に路線バスを運行する山陽バス(神戸市垂水区)の公式ツイッターアカウント(@sanyo_bus3715)の投稿が注目を集めています。同社がバスファンに向けてお願いしたのは、バス撮影時の運転手や乗客のプライバシー保護。ネット風評被害対策に詳しい弁護士は「今後のいい参考になるのでは」と評価しています。同社や弁護士に話を聞きました。

担当者「個人が特定できないよう加工を」

 同社ツイッター担当者は11日、「【バス写真を投稿される皆様へ】当社のバスを撮影していただき、SNSへ掲載していただくのは大歓迎です。1点だけお願いを申し上げます。運転手・乗客のプライバシー保護のため、モザイク・スタンプ等で個人が特定できないように加工をお願いいたします。ご理解ご協力をお願いします」と投稿しました。

 バスファンからは「とても大事なこと」「当然のことです」「マナーを守るのは基本」などの声が上がっており、全国の同業者からも続々と賛同の声が寄せられています。

 同社ツイッター担当者に話を聞きました。

 ーーなぜこの投稿を?

 「プライバシーに配慮しない投稿を見ることが多く、以前から一石を投じたいという思いがありました。営業所からはプライバシーを気にする運転手もいると聞いていました。そこで思い切って多くの方が閲覧される当社のツイッターで会社からのお願いという形でツイートすれば効果が出るのではないかと思ったのがきっかけです」

  ーーバスファンや同業者からも賛同の声が寄せられています。

  「正直ここまで多くの反響を受けるとは思いませんでした。これを機に関心を持っていただければ幸いです」

  ーープライバシーへの配慮以外に、撮影時の注意点を教えてください。

 「車道や立ち入り禁止・私有地などからの撮影は危険かつ迷惑をかけることがありますのでお控えください。またフラッシュを焚いての撮影もご遠慮ください」

弁護士「プライバシー権、肖像権侵害に当たる可能性」

 「他人の顔を全世界に公開しているという行為です。もし自分がされたら嫌ですよね。肖像権は全ての人にあります」と話すのは、ネット上の権利侵害対応に詳しい「弁護士法人戸田総合法律事務所」の弁護士、船越雄一さんです。

 船越弁護士に話を聞きました。

 ーー運転手や乗客の顔が写った写真をSNSに投稿することは違法なのか。

 「許可なく投稿することは『プライバシー権侵害』や『肖像権侵害』に当たる可能性があります」

 「プライバシー権についてざっくり申しますと、個人の私生活上の情報に関する権利です。個人の勤務先情報や私生活上の言動もプライバシーとなりうるため、例えば運転手さんであれば、そのバス会社で勤務していること、バスの運転手をしていることなどはプライバシーとなり得ますし、乗客の方であればその日その時間にバスに乗っている、誰と乗っているということもプライバシーとなり得ます」

 「肖像権は、無断で自己の容姿を撮影されたり、撮影された写真を公開されたりしないようにするための権利です。この権利は、著名人であるか一般人であるかに関係なく個人に認められる権利です。容姿がはっきり写った写真であれば、肖像権侵害になり得ます」

 ーーどんなトラブルに発展する可能性があるのか。

 「写真に写った方から、投稿した写真の削除請求を受けたり、場合によっては損害賠償請求を受ける可能性があります」

 ーー写真投稿時に守るべきポイントは。

 「当然ですが、私有地や立ち入りが禁止されている場所での撮影はしてはいけません。また、他者が写り込まないように写真を撮るように心がけ、仮に写り込んでしまった写真をSNS等に公開するのであれば、モザイクやトリミングなどの措置を施し、写ってしまった方の容姿がわからないように加工しておくべきです。なお、他者が写り込んでしまった写真は、加工の有無問わず、基本的に投稿しないほうが無難です」

 船越弁護士によると、運転手や乗客のプライバシーに絞った投稿マナーを呼び掛ける例は多くは見ないそうで、「今回のようなツイートは一定の効果はあると思います。また、表現方法もうまい言い方をしており、参考になるいい例かと存じます」。

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 話題の投稿から3日後、山陽バスはツイッターを更新しました。

 「投稿に多数のご反応いただきありがとうございました!予想をはるかに上回る多くの方にご覧いただけて大変驚いています。以前より配慮いただいてる方は引き続き、この投稿を見て初めて知りました!という方は次回から、それぞれ対応していただける方が1人でも増えればと思ってます!!」(山陽バス公式ツイッターから引用)

(まいどなニュース・金井 かおる)