「神戸市が明石市にケンカ売ってる」ーー9月上旬、ツイッター上で1枚のポスターが注目を集めました。

 「家どこ?って言われて神戸のほうとかいうぐらいやったら、神戸に住んだ方がええな。」

 広告主は神戸市。昔から兵庫県民の一部に見られる、神戸市在住じゃなくても「家は神戸の方です」「神戸の方から来ました」と答える行為を皮肉ったような内容です。

 地元紙「神戸新聞」が16日、夕刊1面に掲載。同日、電子版「神戸新聞NEXT」で「隣の明石市にけんか売ってる? 神戸市の移住PRポスターが物議」が配信されると、Yahooの主要ニュースに取り上げられ、一躍全国ニュースとなりました。

 ツイッターに投稿された1枚の写真がきっかけで全国に広まった神戸市のポスター。市の担当者は「我々の発信したいメッセージとは違った文脈で拡散されて…」と恐縮しきりでした。

「非常に申し訳ないと思っています」

 今回のポスターは神戸市が人口減少対策「若年・子育て世帯向け住み替え補助金」をPRするために作成。目立つコピーとは対照的に、右下に小さく「子育て支援住み替え補助金最大40万円」と事業内容が書き添えられています。

 神戸市建築住宅局政策課の担当者に話を聞きました。

 ーーツイッター上でポスターのコピーが拡散しています。

 「多くの方に制度を知ってもらえるよう職員であれこれ考え、企画しました。予想を超える反響に驚いています。SNS等で話題になり、多くの若い方々に知ってもらえたことはうれしいことである反面、SNSでは我々の発信したいメッセージとは違った文脈で拡散され、気を悪くされている方もいらっしゃることから、その点については非常に申し訳ないと思っています」

 実際にツイッターでの反応を調べると、面白いという意見以外に、「神戸市必死すぎ」「神戸市焦ってる」「品がない」「下品になった」「堂々としてほしい」「神戸市、逆効果だろ」などの声もありました。また、同じ県内同士での“引き抜き”作戦に「同じ県やのに」「県内仲良くしたらいいのに」「隣同士仲良くして」といった声も上がっていました。

 ーーどんなメッセージを込めた?

 「興味を持って読んでいただけるように、住み替えを検討している人が、神戸市の補助金のことを知って揺れ動いている心の葛藤をユーモラスに描きました」

 ーーJR明石駅のポスターも「心の葛藤」を表現?

 「わかりやすく言うと『家どこ?って言われて神戸のほうとかいうぐらいやったら(住み替え補助金もあることやし)神戸に住んだほうがええな』です。こうつぶやいているのは、神戸市ではなく、制度を知った人の視点です」

明石市限定?…じゃなかった!

 人口が減少する神戸と、子育て世帯に人気で2020年国勢調査では過去最多の人口を記録した明石市。前出の神戸新聞の記事にも「昨年は神戸から転出が最も多い県内自治体が明石だった」とあります。

 ーーあえて明石駅だけに張り出した?

 「市外転入の促進という観点で、乗降客数や掲載スペースの空き状況をふまえ、掲載場所を選びました。明石市だけに掲載しているのではなく、尼崎市、西宮市、芦屋市、加古川市、高砂市、姫路市などJR、阪神電車、山陽電鉄の計21駅に掲出しています」

 ツイッターでは明石駅のポスターだけが注目を集め、神戸市VS明石市のような構図でしたが、実際は県内8市21駅で展開したキャンペーンでした。

 内訳を調べると、掲出場所がいちばん多かったのは尼崎市の6カ所(うち1カ所は西宮市とまたがる駅)。次に明石市の5カ所、姫路市の3カ所と続きます。

 尼崎市に掲示されたポスターには、「神戸市民になんかならへんよ。一生ここに住み続けるよ。って言うてたの、撤回!」(阪神電鉄・杭瀬駅)、「補助金が出るから神戸に引っ越すん?とか言われて腹立つけど、当たってるもんな。」(同・尼崎駅)など、なかなか“攻めた”内容が並びます。

神戸市内にも1カ所だけ掲示

 他の内訳は西宮市2カ所、加古川市2カ所、芦屋市1カ所、高砂市1カ所。さらには神戸市にも1カ所掲示していることが分かりました。

 神戸市内で唯一掲示された駅。それは新幹線の新神戸駅です。

 「テレワークだったら神戸に住めるよね。月1出社だったら、新幹線でも通えるよね。」

 新幹線の利用客に向け、移住やUターンを呼び掛けます。他とはちょっとトーンが違う、おとなしめな印象です。

そもそも「神戸の方」って?

 関西人にとっては「あるある」の「神戸の方」という表現。しかしネット上ではピンとこない人も多かったようです。「愛知の人が名古屋から来たって言う感じ?」「千葉だけど東京出身みたいな?」などの声がありました。

 神戸在住、出身でなくても「神戸の方」と答える理由は大きく分けて2通りありそうです。

 1つは「神戸の知名度」。「地元の場所は他県の人に通じないから神戸って説明する」「説明が面倒臭いから神戸って言う」「神戸というと大体通じる」など。

 もう1つは「神戸はおしゃれなイメージだから」。筆者の経験では、東京の企業で働く女性と雑談した際、出身地を訪ねると「神戸です」。「えっ、神戸のどこ?」と尋ねた結果、明石市大久保だったことがありました。他にもネット上では、姫路市や三木市在住でも神戸在住を名乗るという人もいました。

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 ポスターの掲出期間は9月上旬の約1週間限定だったため、SNSで「バズった」ときにはすでに撤去されたあとでした。市にはポスターを見たいという声も寄せられているらしく、将来的に限られた駅での再掲出も検討しているそうです。

(まいどなニュース・金井 かおる)