「お茶漬け自販機、あまりにもレアすぎるレトロ自販機…出会えたことに本当に感動した。イラストが最高にかわいい。ボタンを押して27秒で出来上がる喜び!味も抜群!シャケがしっかりしたシャケなんだ!これほど嬉しいことはない!」

この投稿が注目を集めています。投稿者は、レトロ自販機や廃墟を巡るのが趣味だという、えぬびい(@enuenuenubi)さん。

えぬびいさんの興奮ぶりから伝わるように、「お茶漬けの自販機」はとても希少なもののようです。筆者を含めて、このツイートで存在自体を初めて知ったという人も多いのではないでしょうか。

リプ欄にも「初めて見た!!凄っ!!!」「珍しい、初めて見た、そして美味しそうな、食べてみたい!」「うどんそばは知っててもこれは初見です いつか出会いたい1台ですね」「どんな仕組みになっているのだろう?気になるなぁ!」「後ろで店員のおじいちゃんが作って出したかのような鮭茶漬け」などと感嘆のコメントが並びました。また、同好の士と思われる方たちからは、自販機の設置場所や仕組みなどについてのコメントも。

投稿主のえぬびいさんにお話を聞きました。

──いつ頃から、どんなきっかけで「廃れたもの」に興味をお持ちなのでしょうか。

こういったものを巡るようになったのは10年ほど前からです。大学生の頃、なんとなく青春18きっぷで東北の田舎を旅したのがきっかけで、そのときに誰もいない古い駅や鄙びた旅館、使われなくなって半壊した建物などが形成する寂しげな風景などを見て、なんだかとても感動したからです。

──普段はどのような感じで「廃れたもの」探しの活動をされていますか?

やはり基本はインターネットです。こういう趣味をしている人は数多く、まとめてくれている方のウェブサイトなど参考にしています。あとはテキトーにぶらぶらアテもなく田舎道を走っていると、結構見つかるものです。

──今回のお茶漬け自販機はどのようにして知ったのですか?

ツイッターでお茶漬け自販機の写真をたまたま見て、すぐに「行こう!」と思いました。

──「レアすぎる」とのことですが、どの程度のレアさなのでしょうか。

現時点で日本に、つまり世界にここ1台しかないです!過去にもお茶漬け自販機があったという情報はあまり聞いたことがありません。

──なんと、世界に1台! それは正真正銘のレアものですね! 差し支えない範囲で、このお茶漬け自販機はどの地域のどんな場所にあるのか教えてください。

神奈川県相模原市の「中古タイヤ市場」という場所に設置されています。オーナーさんの趣味で始めた自販機コーナーだそうで、いろんなところから引き取ってきた自販機を修復しているようです。ここ数年で自販機の台数はどんどん増え続け、今では大量の懐かし自販機が並ぶ一大レトロスポットとして人気です。

──お茶漬け自販機からはどのようにお茶漬けが出てくるのでしょうか。

機体の左側が冷蔵機能付きのストッカーとなっており、注文が入ると右側の調理スペースに商品が移動されます。上部の注入口から湯が注がれ、湯通ししてご飯を温めつつ全体をほぐしたのち、だし汁が注入され完成。取り出し口に押し出され提供されます。この機体は基本はめん類(うどん、そば、ラーメン)用に開発された自販機だと思いますので、お茶漬けに転用され稼働しているのは初めて見ました。すごいです。

──麺の代わりにご飯をほぐすなど、とても丁寧な工程に驚きました。本当にすごいですね!このお茶漬け自販機を見つけてから実食後までのご感想をお聞かせください。

初めてみる自販機でしたのでワクワクが大きかったです。出てきたのはちゃんとしたお茶漬けで、特にしっかりと形のある鮭が嬉しい!しかも皮付き!生臭さもなく、ちょうどいい塩加減で焼かれた鮭がお茶漬けによく合っていました。結構なボリューム感で、一杯で満足度はとても高いです。肌寒くなってきた頃に外で食べるお茶漬けを想像すると、それはまたとても美味しいだろうな〜と思いました。

──写真で見ても鮭がごろりと入っていて美味しそうでした。このほかにも、えぬびいさんが出会ってみたいレトロ自販機はありますか?

日本全国のレトロ自販機は大体巡ったので、現状探しているものはないです。最近出会ったほかの自販機だと「かき氷自販機」も感動しました。同じく中古タイヤ市場さんが修復した自販機です。こちらもおそらく稼働しているのは日本で一つのはず…。

──かき氷の自販機も楽しそうです! えぬびいさんにとってレトロ自販機の魅力とは?

「非日常感」という魅力が大きいかもしれません。普段見ることのない古い自販機からお手製の食べ物が出てくる感覚にワクワクします。また、レトロ自販機は昭和の雰囲気漂うドライブインに設置されていることが多いので、その独特の鄙びた空気感の中で自販機飯を食べる時間もとても気に入っています。

──3万以上ものいいねを集めて話題になりました。

みんなの反応を見ていると、しっかりした鮭に驚いていたり、食べてみたい〜!など見たことない自販機にワクワクしてるような書き込みが多かったのでなんだかこちらも嬉しくなりました。みんなでお茶漬け食べよ〜!おいしいから!って感じです。

──無理なく行ける地域の方はぜひお茶漬け自販機を目指していただきたいですね。

お茶漬け自販機のパネルを寄贈!? 詳しくお話を聞きました

冒頭のえぬびいさんのツイートには、気になるコメントが投稿されていました。

「私がお茶漬けパネルを寄贈させて頂きました!皆さんに喜ん頂き嬉しいです。過去の情報もほとんど無いそうで当時から非常にレアだったそうです。当分はお茶漬けを売るそうなので是非食べに行ってみて下さい!」と書き込んだのは、K·YOSHIKI(@AE86_GTS)さん。

一体どういう経緯で寄贈されたのでしょうか。詳しくお聞きしてみました。

──レトロ自販機探しやその修理をなさっているとのことですが、ご趣味で? それともお仕事で?

仕事ではなく趣味でやっています。学生の頃、父に連れられて地元の今は無き自販機コーナー「鉄拳タロー」に行った際に初めてレトロ自販機の存在を知りました。それがかなり衝撃的で、レトロ自販機に興味が湧きました。就職をした頃にコレクターの方から2台のレトロ自販機を譲り受けたのですが、電源も入らず鍵もない状態だったためオブジェになっていたんです。ある日「直してみよう」という話になって兄弟で修理してみたところ、運よく直ったのがきっかけでさらにハマりました。

現在は、自分で探してまわったりSNSで情報を提供していただいて現地に足を運び、オーナーさんとお話をして交渉を重ね譲っていただいています。設置されてから30年以上経つ物がほとんどで、ひと昔前までよく見かけた古ぼけた廃自販機は激減し、残っている物の状態も悪化しています。そのため、一刻も早く直せそうな見込みがある廃自販機を救出しています。

「ひなびた風情に合う廃自販機を持っていかないで欲しい」というご意見もあります。しかし、私の考えとしては、その場で消えていくよりは1台でも多く世の中に残したい。そう思って行動しています。

──新たに作れるものではないだけに、現存するものを状態よく残すのは大切なことのように思えます。このお茶漬けパネルを寄贈された経緯を教えていただけますか?

この自販機がある「相模原中古タイヤ市場」さんは以前からよく伺っていた憧れの場所で、ある時アイスのレトロ自販機を譲っていただいたことからお付き合いが始まりました。

私自身も将来はレトロ自販機コーナーを開設したくてレトロ自販機やパーツを全国から収集しているのですが、名古屋から「川鉄自販機」のパネルをまとめて入手した際、その中に見かけないパネルがありました。それがこのお茶漬けパネルです。詳細を調べても「80年代に自販機コーナーで見かけた」という情報しかなかったんですね。でも、中古タイヤ市場さんにはそのパネルが使える自販機があるのを知っていたので、新しい話題作りになればという思いを込めて、親睦の証として寄贈させていただきました。

そしてお茶漬け自販機が設置され、後日伺うと多くのお客さんに囲まれている姿が! お茶漬けに300円は高いかも?と不安でしたが、売り切れになるほどの好調で安心しました。私も実際にいただいてみましたが、大きな鮭とちょうどいい塩気にとても満足しました。

──奇跡的な巡り合わせだったんですね。K·YOSHIKIさんにとって、レトロ自販機の魅力とは?

なんと言っても個性のある奇抜なカラーリングやデザイン、ルーレット式の当たり付き自販機など、今は消えてしまった要素がたくさん詰まっているところですね。コンビニが普及する前は日本各地に麺類、ハンバーガー、トーストなどこの手の商品が買える自販機コーナーやお店がたくさんありました。万事便利になった現代では効率が悪いかもしれませんが、一周回って新しい価値が生まれていると思っています。お店や地域によって味が違うのも魅力の一つ。私自身も全国の自販機コーナーを制覇するのが夢でもあります。

──レトロ自販機の修理について教えてください。

現在は興味を持ったレトロ自販機を入手し、修理しながら保管しています。基本的にレトロな缶の自販機が好きで直す事が多いですね。最近はUCCコーヒーの自販機を修理中です。

外装のパーツは替えが効かないので特に苦労します。綺麗に保ちつつオリジナルの魅力を残していきたいので、欠損や劣化したパーツが多いとかなり難航します。内部の電装部品も同じく廃盤部品が多いので代用を探すのに苦労しますね。それでも、街角で朽ち果てていた自販機に再び魂が入り本来の姿に戻った時の喜びは言葉にできません。

──この記事でレトロ自販機に興味を持った方へ、初めて利用するときのアドバイスをお願いします。

近年メディアなどに多く取り上げられ、これまで以上に多くの方が利用されるようになりました。そんななか、とても残念なことに2021年9月5日「相模原中古タイヤ市場」さんにて、ハンバーガー自販機が壊される事件がありました。ニュースにもなったのでご存知の方もいらっしゃるでしょう。

数十年前に作られた自販機なので当然部品はなく、修理は困難になりました。本来ならば保管をし博物館のように展示するのがいいのかもしれません。しかし、物を売る使命を持って生まれた自販機にはいつまでも皆に愛され、「生きる産業遺産」になればと私は思っています。

利用される際には優しい気持ちをもって、お金を入れる際もゆっくりと入れるなど、ちょっと気をつけてみていただけたらと。レトロ自販機を見かけたら、ぜひそんな感じで利用してもらえると嬉しいです。

──ただ物を買うだけではなく、その背景に思いを巡らせることでレトロ自販機をより楽しむことができるということですね。

(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・泡☆盛子)