猫の名づけは人それぞれ。画数に凝る人もあれば、直感で選ぶ人もいます。奈良県で暮らすN家のめるちゃん(1歳)は、お母さんのHさんがめるちゃんの動画を見た時にぽわんと浮かんできた名前なのだそう。

この時、めるちゃんは生後2カ月ごろ。可愛い盛りです。コロンコロンと遊ぶ姿に、Hさんは運命的なものを感じていました。

「神様が代わりに準備してくれたのかな」

そう思うのは、Hさんは長年子どもを望んでいたものの諦めざるをえなかったから。身体的にも心理的にもつらい不妊治療の末残ったのは、徒労感だけでした。子どものいる友人とは心の距離が生じ、それに自己嫌悪する日々。

寂しい生活を猫で紛らわそうと、何度か猫を迎えようと保護猫カフェへ赴いたこともあります。しかし、よく家へ遊びにくる姪に猫アレルギーがあると分かってからは、足が遠のいていました。

このまま夫婦2人の生活が無難だと考えていた2021年6月ごろ、知人から子猫をもらってほしいとの連絡がありました。4月28日に野良猫が知人が経営するお店で子どもを産んだんですって。その中の1匹がめるちゃんでした。実はめるちゃん、他にも欲しいという家庭があったんです。でも、Hさんはめるちゃんが家に来る予感がしました。

それはHさんの夫もそう感じていたよう。大の動物嫌いにも関わらず、めるちゃんの動画を見た瞬間、思わず口から出た言葉があるんです。

「この子を貰えないかな。もうチャンスはないかもしれない」

これを聞いてHさんはビックリ仰天。まさか夫がこんなことを言うなんて信じられません。夫は小さいころにハスキー犬に追いかけられてから、犬も猫も苦手になっていたはずです。それに普段は現実的で合理主義。運命なんて信じない人なのに…。結婚して10年、夫が初めて見せる一面でした。

Hさんは夫の気が変わらないうちにと、急いで知人に連絡をします。「めるちゃんが良い」と。めるちゃんは他の家に迎えられる予定だったものの、その家が辞退。晴れてめるちゃんはN家に迎えられることになりました。

さあN家の一員になっためるちゃん、Hさんと夫から溺愛されます。夫婦からの愛情を受け、すくすくと成長。ところが、避妊手術の時に事件が起きました。めるちゃんの胸にしこりが見つかったのです。悪性ではないものの、経過観察が必要だと獣医師から告げられました。

加えて、避妊手術の術後の経過が思わしくありません。処方された抗生物質が体質に合わず痙攣を起こしたり、血尿が出たり。その都度、夫婦は夜中でも車を動物病院へ走らせました。そして何度も胸の中で強く願ったのだそう。

「苦しみを代ってやりたい」

今までこんな風に思ったことなどはありませんでした。誰かに代わってほしいと考えたことはあるものの、自分の身を犠牲にしても構わないと感じたのはめるちゃんが初めて。

その思いが神様に通じたのか、めるちゃんは徐々に回復し元通りのお転婆娘に。しこりもパッとは分からないほど小さくなりました。でも、この経験からか夫は、近所の道路沿いにあるペットセレモニーの看板を見るのが怖くなってしまったんです。猫のイラストに天使の輪っかがついていて、いつかめるちゃんもこのイラストのようになるかもしれないと思うと…。

これを聞いたHさんは大笑い!超ドライな夫をこんな風に変えてしまう、めるちゃんはすごい!夫も言うんですよ。めるちゃんがHさんを変えたって。早起きをしてくれるようになったし、何より明るくなった。めるちゃんはすごい!前にも増して、夫婦はめるちゃんを大切にするようになりました。まるで本当の娘のよう。

実はHさん、めるちゃんを迎える前は、猫を子ども扱いすることに少し嫌悪感を覚えていたんです。知人友人が愛猫を「我が子」と言うのを冷ややかに眺めていました。けど、めるちゃんと出会ってから、様々な家族の形もあると考えるようになったと言います。

もう子どもがいる友人と自分を比べることもありません。自分だけの幸せの形をめるちゃんが教えてくれたからです。夫との会話は増え、猫好きの友人も増え、毎日がとても充実しています。めるちゃんの動画を送ってくれた知人には感謝しかありません。

あ、そうそう。めるちゃんが来てからは、家がいつも綺麗なのも良いことなんですって。猫アレルギーの姪のために、せっせと掃除をするようになりました。めるちゃんがいてくれるだけで、家事がはかどります。

めるちゃんは、本当に神様が準備してくれた猫なのかもしれません。

(まいどなニュース特約・ふじかわ 陽子)