「初めて病院に行った時、事情を聞いていた待合室のおばあちゃんが、これから、この子が幸福と恵を運んでくれるよと言ってくれたので、名前はめぐみにしました」

愛猫・めぐみくんの命名経緯をそう語るのは、飼い主の0625megu_miさん。実はめぐみくん、虐待の可能性がある火傷を背中に負い、飼い主さんに助けを求めにきました。

■背中にIII度の火傷を負った黒猫と出会って

今年の6月下旬、飼い主さんは駐車場で鳴きながら着いてくる、1匹の黒猫と遭遇。玄関のドアを開けると、黒猫は隙間から頭をねじ込み、家に入ってきました。

「そこで初めて、横腹がえぐれている状態であることに気づきました。後で知ったのですが、背中の大部分は壊死していたんです」

すぐに動物病院へ連れていくと、火傷は皮下組織まで及ぶIII度熱傷。

「獣医師さんは、ストーブなどではないと言っていました。広範囲な火傷だったので、熱湯か何らかの液体をかけられたかもしれないと。けれど、壊死するくらい期間が経っていたため、はっきりとした原因は分かりませんでした」

ただ、不審なことに、めぐみくんを病院に連れていった2日後、住んでいるアパートの横に、ソーセージが投げられていたそう。食べ物でおびき寄せ、動物を探しているかのようなこの行動に、飼い主さんは恐怖と怒りを感じました。

めぐみくんは手術を受け、壊死した部分を取り除くことに。点滴などを受けながら、3週間入院することになりました。入院中、飼い主さんはお見舞いに行きつつ、これからめぐみくんと人生を共にできるよう、ペット可物件へ引っ越し。

ネットで調べながら、めぐみくんが使いやすいようにケージやトイレ、水の位置などを設置し、退院に備えました。

退院後は傷口の腐敗を防ぐため、抗生剤の服薬と1日2回のガーゼ交換をするように。家に慣れてもらうため、ガーゼ交換以外の時間は自由に好きなだけ、おうちの中を歩いてもらいました。

痛みを感じる治療であるため、ガーゼ交換はめぐみくんがパウチのご飯と「ちゅーる」に夢中になっている間に素早く終えるよう、徹底。

「めぐみは、なぜか初めから距離感が近く、退院した初日から人間用のベッドで寝ていたので、見ていたら撫でる、寄ってきたら拒否しない、嫌がるところは触らないを意識しました」

ただし、足袋や木の板、ハエたたきを見ると怯えたり、うなされてビクッとして起き、近くに寄ってきたりと、心の傷を感じさせる行動が見られることも。その姿を目にし、飼い主さんは改めて、火傷が人間によるものであると感じ、めぐみくんのニャン生に想いを馳せました。

やがて、毎日のガーゼ交換は1日1回に。傷口には保湿クリームを塗り、保湿シートで包んで、100均のサージカルテープで外れないように固定。

そして、傷に被毛がかかって治りが遅くならないよう、毛刈りを3回行いました。

その結果、2カ月半経ち、ようやく抗生剤の服用は終了。火傷の治療は傷口を乾燥させる段階に。徐々に、目で見て治療の効果が分かるようになってきました。

「めぐみはガーゼの交換後や通院を頑張った後に、頭を撫でてほしがります。なでなで要求が、すごくかわいいです」

現在も飼い主さんは毎日ガーゼ交換をし、火傷の完治を目指して奮闘中。

めぐみくんはガーゼ交換時に協力的な姿勢を見せてくれており、二人三脚で“痛みを感じなくてもいい日”が早く来るよう、頑張っています。

「めぐみがきたことで、生活がきっちりしました。ちゃんと朝起きて、洗濯して、掃除して…。前は面倒で、なぁなぁだったことを面倒くさいと感じなくなりましたね」

そう語る飼い主さんは、好奇心旺盛で甘えん坊なめぐみくんを心から愛しく思っています。

「猫用おもちゃには興味がなく、手にしかじゃれてこないのが、意外です。最近は帰宅すると、玄関でお出迎えしてくれます。呼ぶと絶対来てくれるところも、かわいいです」

生きることを諦めず、助けを求めにきてくれたことに感謝したいし、見習わなければならないことや学ぶ部分が、この子には多くある――。そう話す飼い主さん宅で、めぐみくんは命の危機に怯えなくてもいい日々を送っています。

痛々しい怪我を負ってもなお、人間を信じ、愛そうとするめぐみくん。その優しくも強い姿に触れると、悲鳴をあげられず、こっそり亡くなっていく小さな命の守り方を真剣に考えたくなります。

(愛玩動物飼養管理士・古川 諭香)