「強気で自己中で食いしん坊なんです(笑)」愛猫・ハリーくんを前に、そう笑うのは飼い主のきつねさん。ハリーくんは子猫の頃、両後ろ足を切断するという壮絶な経験をしましたが、残された前足をフル活用して、日常を楽しんでいます。

交通事故に遭った通い猫の子どもを保護

ハリーくんの母猫は、きつねさん宅の通い猫。来るたびにご飯をあげていると、ある日、ハリーくんを含めた4匹の子猫を見せにやってきました。

しかし、その約2カ月後、生後3カ月ほどだったハリーくんは交通事故に遭い、瀕死の状態に。きつねさんは急いで動物病院へ連れていくも、後ろ足を片方、切断せざるを得ない状況。

「もう片方の後ろ足は残せる可能性があり、先生は血行を促すマッサージをしてくれましたが、結局、切断しなければなりませんでした。その時、尻尾も切断となりました」

入院治療を受けたハリーくんは、事故から約1カ月半後に退院。

歩けるようになっていましたが、時折、バランスを崩して転んでしまうことがあったため、きつねさんは部屋にケージを設置し、見守ることに。

「退院後は、しばらく警戒されていて触らせてくれなかったので、リハビリは一切できませんでした」

しかし、ハリーくんの生命力は強く、退院から1カ月も経たないうちに自力でしっかりと歩けるように。小さな段差も乗り越えられるようになりました。

ハリーくんのたくましさに驚かされる日々

ケージから部屋の中へと、世界を広げたハリーくんが快適に過ごせるよう、きつねさんは階段やベッドにスロープを設置。人がいない時も、なるべく自由に行動できるように配慮しました。

また、ジャンプができないハリーくんの心情を思い、抱っこをして外の景色を見せてあげ、人の膝くらいの高さの窓から外が見られるよう、枕や畳んだ布団を階段のように置き、登れるように工夫。

「前足の怪我は致命的なので、フローリングで滑って転ばないように肉球の間にある毛はカットしています。体を自力で掻くことが難しいのですが、痒い時は掻こうとする体勢になって教えてくれるので、掻いてあげます」

できないことはたしかにあるものの、ハリーくんにはできることもたくさん。共に暮らす中で、きつねさんはハリーくんのたくましさに驚かされてきました。

例えば、自力でトイレができること。

「前足だけで体を支えて、お尻を浮かせながらするので汚れることもありません」

ソファーや車のシートによじ登ることも、朝飯前。

布素材のものには爪を引っ掛けて登るため、腕はムキムキです。

「我が家にはハリーちゃん以外にもう1匹、猫がいますが、2匹はよく追いかけっこを楽しんでいます」

同居猫とのスキンシップ以外にも、ハリーくんはきつねさんが寝ている時に枕を奪いにくるなど、無邪気な姿を披露。過去に、トンボを見せた時には匂いを嗅いでいたかと思いきや、突然カブリ!

「トンボは無事でしたが、驚きました(笑)。私の母の腕に噛みつき、穴を空け、病院送りにしたこともあります。傷が塞がっても、半年くらいは腕の感覚が鈍かったそうです。それくらい、ハリーちゃんは強いんです」

日々、家の中で元気に走り回り、食欲も旺盛なハリーくん。その姿は、きつねさんにとってエネルギーのもとになっています。

「底知れない生命力を感じていますし、パワーを貰っています。ハリーちゃんのおかげで、初めて命の尊さを感じることができました。かわいいハリーちゃん、ありがとう」

失ったものではなく、自分に残されたものを大切にしながら“らしいニャン生”を謳歌するハリーくん。その姿勢から、私たち人間が学ぶことは多いような気がします。

(愛玩動物飼養管理士・古川 諭香)