モサモサとした毛並みとニコニコ笑顔がかわいい秋田犬・ななちゃん。当初ななちゃんは、とある地方で暮らすおじいさんと11年間一緒に暮らしていました。しかし、おじいさんは年齢を重ねるとともに環境が変わり、借家の退去、自身の体調などの諸事情から、ななちゃんを飼い続けることが困難になってしまいました。

そのため、おじいさんは新しい飼い主を探すことにしました。

庭で飼われていたニコニコの秋田犬に一目惚れ

のちにななちゃんを引き取ることになるmariさんは、以前飼っていた愛犬を亡くした後、健康のためご主人とはじめたウォーキングの最中、道路脇に繋がれているななちゃんに出会いました。

ななちゃんの人懐っこく、愛くるしい表情に惹かれ、いつしかななちゃんのことが気になって仕方なくなるようになりました。それからというもの、ウォーキングコースはななちゃんがいるお家を通るコースとなりました。

ある日のこと。ななちゃんをもともと飼っていたおじいさんから、mariさんはこんなことを言われます。

「私は脚と腰が弱ってしまって、ななちゃんを散歩に連れて行けない。さらに、私の代わりに、ななちゃんを散歩に連れて行ってくれていた知人も、新しく犬を飼うことになり、ななちゃんの散歩に行けなくなってしまった。良かったら、ななちゃんを散歩に連れていってもらえないか」

mariさんはその少し前に、もともと飼っていたそらを亡くし寂しかったこともあり快諾。おじいさんから、ななちゃんを預かり、散歩をさせてもらいました。ななちゃんはmariさんのことを当然すでに認識していたわけですが、それにしても、物怖じはいっさいなく、散歩のたびにニコニコの笑顔で振り返ってくれます。ななちゃんとmariさんは、散歩に行くたびに仲を深めていきました。

第二の飼い主として、ななちゃんを迎え入れることに

その後、おじいさんは冒頭で触れた諸事情からななちゃんを飼えなくなってしまいました。mariさんはおじいさんから「第二の飼い主として、ななちゃんを引き取ってくれないか」と相談を受けました。

mariさんはこのとき、即快諾というわけにはいかなかったと言います。以前飼っていたそらを失い、まだ間もなかったこと、そして、ななちゃんを家族として迎え入れる覚悟が自分にあるかどうか、この時点では確信を持てなかったからです。

しかし、初めてななちゃんを預かり、mariさんの自宅にお泊りさせた際、ななちゃんがとても自然に環境に溶け込み、まるで、ずっと前から一緒に暮らしていたワンコのように思える瞬間がありました。このことから、mariさんはななちゃんを新しい家族として迎え入れることを決意。迎え入れるからには、ななちゃんの命を最後まで大切にし、一緒に生活していこうと心に誓いました。

mariさんはお迎えする決心がついた際、おじいさんに「ななちゃんの誕生日はいつですか?」と尋ねました。おじいさんは「忘れました」と言いましたが、役場に事情を説明し調べもらうと、「11月15日」であることがわかりました。それまでは、なんでもなかった日が、mariさんにとってとても大切な日になりました。

ななちゃんを迎えた新生活から2カ月で知らされた重い病名

「ななちゃんを迎え入れた新しい生活は、本当に楽しく幸せな時間だった」とmariさんは振り返ります。ななちゃんと散歩に行ったり、遊んだりといった時間は他には変え難い本当に楽しい時間だったそうです。

しかし、そんな幸せな生活を過ごしていたのも束の間、ななちゃんの体に異変が……。どうも右後脚を痛がっている様子ですぐに病院に連れていくと、重大な病気があることがわかりました。

病名は骨肉腫。その悪性腫瘍はすでに肺にまで転移していました。ななちゃんが生死を左右する重い病気にかかっていたことを知り、mariさんは強いショックを受けました。

この時点で、できるのは抗がん剤治療。以降、ななちゃんは3〜4週間に1回の抗がん剤点滴を行うために通院することになりました。点滴は痛いはずですが、当のななちゃんは病院に行っても終始ニコニコ。検査のためにmariさnんが毎日肛門に体温計を突っ込んでも全く動じない、とてもたくましい様子でした。

お別れの日…突然虹が目の前の空に

しかし、その懸命な治療を続けるも、新しい家族として迎えてから、わずか半年でななちゃんは旅立ってしまいました。

かわいい笑顔でいつもみんなをほっこり温かい気持ちにしてくれた、天使のような存在だった、ななちゃん。息を引き取った後も、いつもと変わらない、穏やかな笑顔のままぐっすりと安心して眠っているように見えました。

ななちゃんとのお別れの日。ななちゃんが眠る棺を家族全員で大事に大事に、車に乗せました。

mariさんはこの日、ななちゃんと出会った場所でもあり、以前ななちゃんが住んでいたお家の前の道をゆっくり通りました。また初めて一緒に歩いた公園にも立ち寄りました。

そのとき、ずっと降っていた小雨が、嘘のように止みアッという間に青空が広がりました。 さらに、ななちゃんを見送り車で帰る途中、突然目の前の空に虹が架かりました。

病気を患い、日に日に体の機能が衰えてしまってもいつも笑顔でmariさんに寄り添ってくれたななちゃん。たくさんの幸せをくれたななちゃんに、mariさんは「本当にありがとう」と言いました。ななちゃんは、空へと旅立った今もきっと天国から、あのニコニコ顔でmariさんや家族みんなを見守っていてくれていることでしょう。

(まいどなニュース特約・松田 義人)