千葉県・富津岬の突端に、正方形のステージが幾重にも折り重なったように見える、不思議な形をした建造物がある。上空から見ると、上下左右いずれも非対称なデザインになっている。じつはこれ展望台で、遠く富士山まで見通せる絶景ポイントだった。

外観は「松」をかたどったデザイン

富津岬は千葉県富津市にあり、東京湾に約5kmにわたって突き出た半島状の砂州で公園が整備されている。

その先端の航空写真を見ると、幾何学模様の不思議な建造物が目につく。グーグルマップの表示には「明治百年記念展望塔(富津岬展望台)」とある。調べてみると、最上階の高さ21.8m。コンクリート製のデッキがジャングルジムのように階段でつながれ、上がれるようになっている。

空から見た様子も変わっているが、地上から見た姿も斬新で、その姿は「海のピラミッドのよう」「超古代文明の遺跡」「SFに出てくる要塞みたい」などとネットでも評判になっているという。アイドルグループのミュージックビデオやドラマのロケ地として使われたこともあるそうだ。

ちなみに設計したのは造園家で環境デザイナーの池原謙一郎という人物。戦後造園設計界の中心的人物だったそうだが、2002年に亡くなっているようだ。なぜこのようなデザインになったのか、富津公園管理事務所へ尋ねてみた。

「富津岬には保安林としてクロマツなどが植えられており、個性的なデザインは日本固有の五葉松をかたどったといわれております」

完成が1971年だから、明治100年を記念して建造されたのだろう(明治維新は1868年)。五葉松と明治100年がどう関係しているのか尋ねたが「関連性については、記録として残っておりません」とのことだった。

ちなみに、富津公園は1987年1月10日、社団法人日本の松の緑を守る会が「21世紀に引き継ぎたい白砂青松(はくしゃせいしょう)」として選出した、日本景勝地100カ所のひとつに選ばれている。白砂青松とは、白い砂浜と青々とした松林が続く海岸線を意味する。このほか、2005年には、国土交通省関東地方整備局が主催して選定した「富士山への良好な眺望が得られる128景233地点」のひとつにも選ばれているそうだ。

戦時中は軍用地で今も砲台跡が残る

明治百年記念展望塔がある一帯は、終戦まで軍用地だった。展望台から約2km離れた富津公園には砲台跡(富津元洲堡塁砲台跡)が残っている。

1951年に県立公園に指定され、今は緑地やテニスコート、ジャンボプール、キャンプ場などが整備されているそうだ。

展望塔がつくられてから50年の月日が経っているが、地元の人たちはどうとらえているのだろうか。

「こちらについても不明です」としながらも、問い合わせに対応してくださった職員さんの個人的な感想として「私自身が富津で生まれ育っており、子供の頃から展望塔は富津市のシンボル的存在で、地元の方からも愛されております」とのことだった。

遠く富士山まで見通せる眺望と相まって、夕景の美しさも絶景だといわれている。

余談ながら、富津公園の砲台跡と並んで、富津岬の沖に浮かぶふたつの小島に、それぞれ「第1海堡(だいいちかいほう)」と「第2海堡」がある。これは明治から大正にかけてつくられた要塞で、東京湾の入口に当たるため首都防衛のために設けられた人工島だという。

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尚、明治百年記念展望塔は改修工事のため、2022年11月21日〜2023年3月末(予定)の間は全面立入禁止とのこと。

※記事を一部修正しました。(2022年12月4日午後9時50分)

(まいどなニュース特約・平藤 清刀)