2023年、東京在住の方が大阪に観光に行きました。たまたま通りがかったビルの隙間から聞こえてきたのは「ミャーミャー」という子猫の鳴き声。見ると、ビルとビルの間に生まれて間もない子猫が挟まっていました。

観光どころではなくなったこの方は、消防に通報。やってきた消防署員は「壁を壊さないと、レスキューは難しいです。まぁ子猫ですし、いずれ自分で出てくるでしょう」と立ち去ってしまいました。

そう言われても心配がぬぐえないこの方は、この日の予定だった帰りの新幹線をキャンセル。地元・大阪を拠点に活動する保護猫・ノラ猫専門のお手伝い屋さん「ねこから目線。」に救出を依頼しました。

「背格好がヒョロイ私たちなら」

「ねこから目線。」のスタッフ2人はすぐさま現場に向かいました。役立ちそうな道具を持参したものの、ビルとビルの隙間は想像以上に狭く、成人男性であれば横向きにならないと進めないほど。屈強な消防士たちは確かに入れなさそうでしたが、スタッフは前向きです。

「背格好がヒョロイ私たちなら何とかできるかもしれません!」と、その子猫の救出を試みることにしました。

スタッフが隙間に手を伸ばした先には、確かに子猫がいました。ここで引っ張ることもできなくはなさそうですが、子猫が怖がって逃げてしまうことも考えられるため、慌てずに慎重に行動する必要がありました。その隙間の奥をスコープで覗くと行き止まりになっており、なんとか子猫を救うことができそうです。

日頃は網などを使って捕獲することが多いですが、スペース的に網は難しそうです。そこで思いついたのが「マジックハンド」を使っての救出です。

本来は洗濯機の裏などに落ちてしまった物を取るために使うものですが、試しに伸ばしてみると……子猫にギリギリ届くか届かないかの距離。なかなかもどかしいですが、何度かの試行錯誤の末に「掴めました!」と、スタッフは喜びの声を上げました。

心ある人たちの連携から救出費用の請求はナシ

保護したすぐにスタッフは動物病院に子猫を連れて行きました。その体重はわずか100g。しかも、ノミが体中に寄生しており、小さな手足には痛々しい傷もありましたが、適切な治療をした上で、ミルクを飲ませてあげました。

これら一連の救出劇に胸をなでおろした東京在住の方は、「救われた命です。東京に連れて帰って飼い猫にします」と言ってくれました。

その思いに心を打たれたスタッフは「ならば!」と新幹線で東京まで子猫を運ぶ際に、体温が下がらないよう保温ボトルつきのダンボールケージを即席で作ってあげました。さらに鳴いたときにミルクを飲ませるためのシリンジも用意。こうして依頼主さんは、なにわで出会った子猫と一緒に東京へ帰ることになりました。

この救出劇に際しての費用は、「ねこから目線。」にこれまでになんらかの依頼をした人たちからの「お釣りは猫に使ってね」基金から支出したため、請求はありませんでした。心ある人たちの善意で、小さな命が救われたというわけです。なんとも心が温まる話です。

東京に子猫を連れて帰った方によると、子猫は東京に着いた晩に目を開け、100gだった体重は148gへと増えたとのこと。スタッフは「本当に良かった」と喜ぶとともに、これからも多くの猫たちの命、そして困りごとを助ける活動を続けていく思いを、改めて強く胸に抱きました。

「ねこから目線。」
https://nekokaramesen.com/

(まいどなニュース特約・松田 義人)