2023年暮れ、静岡県を拠点に活動をする保護団体・アニマルフォスターペアレンツ(以下、アニマルフォスター)に、スタッフの知人から相談が持ちかけられました。あるペットショップに「売り物にならない」として行き場を失っている生後3カ月ほどのポメラニアンのオスの子犬がいるというものでした。

よく聞くと、この子犬は先天性疾患の膝蓋骨形成不全(パテラ)を患っており、右足が曲がったままだと言います。「パテラのせいで売り物にならない」とペットショップの店主は考えているようで、治療せずに放置しているようでした。

覇気のない表情だった

その子犬のことを思うと、いてもたってもいられなくなったスタッフは、ペットショップを訪ねました。確かにペットショップのバックヤードにポメラニアンの子犬がいました。

同じ月齢の子犬に比べてやせ細っており、自慢の毛も汚れて絡まっています。自らの境遇を察知しているのか、子犬はこのまま息を引き取ってしまいそうに見えるほど覇気のない表情でした。

スタッフはこの子犬に「レオ」という名前をつけ、引き取ることに。そしてすぐに動物病院に連れて行きました。

パテラだけではなかったレオの病気と障がい

診断結果は、栄養不良による発育不全。そして、当初聞いていた通り、膝蓋骨形成不全(パテラ)で右足が曲がったままでした。「もっと早い段階で手術していれば、ここまで悪くはならなかっただろう」とも。股関節脱臼で大腿骨が外れていることもわかりました。

この診断を聞いたスタッフは悲しさ、悔しさ、憤りが入り混じった気持ちになりましたが、まずは獣医師の助言に従い、将来的な手術を視野にレオを献身的に世話することにしました。

右足を引きずりながら歩く姿に胸が潰れそうになる

スタッフはできるだけ高栄養のエサをレオに与え続けました。少しずつ体重が増えていき、それと合わせてレオの表情が豊かになりました。

そこでわかったのは、レオは穏やかな性格でがんばりやさんだということ。小さい体で悪いほうの右足を引きずったまま歩き、自分の行きたい場所、したいところへ向かおうとしました。その姿はまさに「痛々しい」としか言いようがなく、レオががんばって歩こうとする姿を前にスタッフは胸がつぶれるような思いでした。

難しい手術でレオの体に奇跡が起こった

スタッフはあらためて動物病院に相談。獣医師は「難しい手術にはなりますが、やってみましょう」と言ってくれました。

膝と大腿骨の2カ所の骨頭切除という難手術でしたが、奇跡が起こりました。なんとレオの曲がっていた右足はまっすぐ伸びたのです。

スタッフは獣医師に心から感謝するのと合わせて、小さな体で大手術を乗り切ったレオをほめたたえました。

術後は経過観察をしていたレオでしたが、さらなる幸せが舞い込みました。「レオを迎え入れたい」という里親希望者さんからの申し出です。

これまでの背景や障がいの可能性を十分理解した上での申し出でした。後にレオはこの里親希望者さんの家に正式譲渡されました。

「売り物にならない」とペットショップのバックヤードで放置されていたレオが、境遇を乗り越え、幸せを引き寄せたのです。レオ、これからはもっと幸せになってね。

(まいどなニュース特約・松田 義人)