汚いままがイヤな「しっかり洗う派」と、育てるために「洗剤で洗わない派」に分かれる鉄のフライパン。SNS上では、たびたび論争が起こり、夫婦で意見が異なれば、喧嘩につながることもあるほどの案件です。

フッ素加工のフライパンは油をひかずとも、焦げ付かずに便利というメリットはありながらも、フッ素加工の劣化によって耐久年数は1〜2年といわれています。そう考えると、鉄は性質上、サビやすかったりコゲつきやすかったりするイメージがあるものの、数十年〜半永久的に使えるという魅力も。

また、ちゃんと「育てる」ことで、コゲつきづらく、料理の仕上がりにも変化があるというのですが、本当でしょうか?

大阪府八尾市で1951年創業以来、鉄フライパンをはじめ多くの金属製品を製造販売する「FUJITA KINZOKU」の代表取締役社長・藤田盛一郎さんに話をお聞きしました。 

育てるとはどういうこと?

鉄フライパン愛好者「育てる派」の一般的なお手入れ方法は、「洗剤を使わずタワシで洗う」「火にかけてしっかり水分を飛ばす」「薄く油を塗って保管」という三カ条。この意見に対し「別に育たない」「宗教」「めっちゃ洗剤で洗うけどどうってことない」との声も。正しいお手入れ方法を聞きました。

――鉄フライパンの正しいお手入れ方法を教えてください。

「僕たちが考える重要なポイントは4つあります。
①予熱を十分行ってから調理する
②調理後はすみやかに料理を皿に移す
③洗剤で洗わない&食洗器は使用しない
④洗ったあとは火にかけてしっかり水分を飛ばし薄く油を塗る。
この4点が大切です」 

――予熱も重要なんですね

「そうなんです。調理後のお手入れはもちろん、鉄フライパンにあらかじめ熱を与える調理前の“予熱”がとても重要です。こびり付きやコゲ付きは、十分に熱しないうちに食材を入れることで起こることが多いですね」 

――洗剤で洗うのは絶対NGですか?

「そうですね、鉄に油が十分なじむまでは出来るだけ控えてもらったほうがいいと思います。ただ油のニオイが気になったりしつこい油汚れが付いてしまった場合は、食器用洗剤を使っていただいても大丈夫です。ただしそのあとは、買ったときにおこなう『油がえし』(※1)をしましょう」 

――しまう前に必ず油は引かないといけませんか?

「そうですね、毎回油を引くことにこしたことはないです。ただ、鉄板を使う上で焦げ付きやサビが出ない状態になったら、空焚きだけでも問題はないかと思われます」 

――ずばり、鉄フライパンは“育ち”ますか?

「はい、ひと言で言うと育ちますね。ポイントを守ってお手入れして使い続けていただくと、使うほどに油がなじみ、どんどん扱いやすくなります。5年も経てば、ちょっとやそっとのことではサビたり焦げ付いたりしなくなりますよ」 

――扱いが難しいイメージですが…

「最初はハードルが高いと感じるかもしれませんね。ただ慣れてしまえば簡単です。もし強力なサビやコゲ付きができたとしても、鉄はタフな素材なので問題ありません。育ててきたフライパンを一旦リセットするつもりで落とせば、何度でもよみがえります」 

初めて鉄のフライパンに挑戦するなら

――ちなみに、鉄フライパンを新たに購入して使い始める際、気を付けることはありますか?

「たいていのメーカーは、フライパンの表面にサビ止め加工していると思いますので、まず『油ならし』を行ってサビ止めをはがすことが大切です。そこからフライパンに油が十分浸透するまで(使用開始から約1か月程度)、調理前に毎回『油がえし』を行いましょう。

『油ならし』『油がえし』の方法はメーカーによって多少異なるので、メーカー推奨の方法で行うのがおすすめです」 

――FUJITA KINZOKUさんの場合の油ならしは?

公式サイトでも動画で紹介しているのが以下の通りになります。
①フライパンを中火でよく熱する
②かすかに白い煙が出始めてから、0.5〜1カップ程度の油をまわし入れ全体に行き渡るまでゆっくりフライパンを回す
③全体が黒っぽく変色すると塗装が剥がれた合図なので、火を止め油を抜き、コンロの上でゆっくり冷却する
④フライパンが冷めたら、キッチンペーパーで内側をまんべんなく油が馴染むように拭く

ーーそして、FUJITA KINZOKUさんの油がえし(※1)は?

①フライパンを中火で1分ほど熱する
②0.5〜1カップ程度の油を入れフライパンを回し全体に油を広げる
③油が揺らいできたらゆっくりと数回フライパンを回して全体に広げる
④火を止め、油を抜く

使用開始から油が十分になじむまで(使用開始から約1カ月)は、この油がえしをしていただければ、より育てやすくなります。またさきほどお伝えしたように、洗剤で洗ったときにもこちらの油がえしをしていただければ、改めて育てることができます。

◇ ◇

「基本を押さえればあまり細かいことにこだわらなくても大丈夫」と藤田さん。「食材を入れる前の“予熱”と、使用後に空焚きをしてしっかり水分を飛ばすこと、この2点を守っていただければ」と言います。「他の材質と比べて耐用年数が圧倒的に長く、使えば使うほどコゲつきにくくなるのが鉄フライパンの魅力」と藤田さん。数年で買い替えが必要になるテフロンやフッ素加工に比べ、環境にも優しいのが鉄フライパンの特長です。

 「FUJITA KINZOKU」では、製品の約9割に独自の「ハードテンパー加工」を施しています。「ハードテンパー加工」とは、初めから油がなじんだ状態にする加工です。「油ならし」の必要がなく、手元に届いたらサッと洗ってすぐに使用できます。手軽に使い始められるので、鉄フライパンデビューにぴったりです。 

(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・福尾 こずえ)