サプリメント服用を巡って健康被害が起きた原因物質の可能性として、製造元の小林製薬(大阪市)の調査で、「プベルル酸」が浮上した。

 厚生労働省によると、プベルル酸は青カビが作り出す物質で、抗生物質としての特徴がある。米国立衛生研究所(NIH)のデータベースなどでは、ヒヤシンスに病気をもたらす原因菌などから見つかった天然化合物としている。

 唐木英明・東京大名誉教授(毒性学・薬理学)は、プベルル酸について詳細は不明だとしたうえで、「青カビが作る物質であるなら、紅こうじ菌から自然に作られることはありえない」と指摘。製造過程で青カビが混入した可能性があるが、紅こうじを作る培養器はカビも非常に増えやすい環境のため、混入すれば一気に増殖し、色の違いで一目で分かるはずだという。

 また、プベルル酸が腎臓にどのような影響を及ぼすのかも明らかになっていない。「腎臓への毒性があるかを動物実験で調べることが必要だが、結果が出るまで1〜2カ月はかかるのではないか」とみる。

 医薬品の製造現場に詳しい光本泰秀・北陸大教授(神経薬理学)もプベルル酸について、「なぜ腎臓に集積したのかや、もしくは集積していなくても、腎臓に毒性を示したのかを明らかにしなければ、原因物質として特定できない」と指摘する。そのうえで「これまで紅こうじを使った製品を長年製造してきたなかで、急に特定のロットの製品で健康被害が出るのは不思議だ。外部からの混入などの可能性も含めて調査する必要がある」と話した。【寺町六花、渡辺諒】