「F35撃墜」「越境攻撃計画」イスラエルとイラン、過熱する情報戦

毎日新聞6/16(月)7:30

「F35撃墜」「越境攻撃計画」イスラエルとイラン、過熱する情報戦

イスラエル軍は、イランが親イラン武装組織と連携して、戦闘員を越境させてイスラエルに攻撃する計画があったと主張した=イスラエル軍公開の動画から

 イランとイスラエルの紛争が続く中、両国は情報発信でも主導権争いを繰り広げている。イランは「戦果」を強調する報道を繰り返し、イスラエルは核開発などの「暴露」を通じて、先制攻撃の正当性を国際社会に訴えている。戦闘の収束が見えない中、「情報戦」も一段と激しくなりそうだ。

 「イスラエルのF35戦闘機2機を撃墜し、女性パイロットを拘束した」。13日夜、イランメディアは相次いでこんな速報を流した。イラン軍当局の発表として報じられ、14日にはさらに追加で1機の撃墜に成功したとも伝えた。

 F35は米国製の最新鋭ステルス戦闘機で、撃墜が事実であれば世界初となる。国営プレスTVは15日の記事で、イランが開発した長距離地対空ミサイルシステムによって撃墜したとし、「イスラエルの『航空優勢』という神話を打ち砕いた」と誇った。

 一方、ロイター通信によると、イスラエル軍高官は13日夜、作戦に従事したパイロットは全員無事に帰還したと説明。イスラエル側は撃墜説を否定したままで、その後も具体的に説明していない。ただし、イラン側も撃墜したF35の写真などの証拠は示しておらず、現時点で事実関係は確認されていない。

 「イスラエルの無人機を撃墜した」「製油所を炎上させた」――。イランメディアでは、イスラエルに対する攻撃の「戦果」をアピールする報道が目立つ。住宅街で多数の死傷者を出した14〜15日の攻撃についても、「200人を死傷させた」などと報じているが、被害者に子供ら民間人が含まれる点には触れていない。

 一方で、イラン国内の被害については詳細な報道が少なく、全土の死傷者数の合計も明らかになっていない。

 国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」によると、イランの「報道の自由」ランキング(2025年)は、下から5番目の176位。複数の国営メディアを抱えており、報道の大部分は体制の管理下に置かれているとされる。

 イスラエルとの戦闘を巡る報道にも、指導部の意向が強く反映されているのは確実だ。イランの軍事的成果を強調することで、国民の団結や国威発揚を図っているとみられる。

 これに対し、イスラエル側は、イランが核兵器開発を急速に進めていると強調。23年10月に起きた、パレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスによる越境攻撃の背後にイランがいたとも主張し、積極的な広報活動を通じて先制攻撃の正当性を訴えている。

 13日に軍が公開した動画では、イランが中東各地の親イラン武装組織と連携し、イスラエルにミサイルやロケット砲を撃ち込み、ガザ地区やレバノン、シリアなどから戦闘員を越境させて攻撃を行う計画があったと主張した。

 主張の具体的な根拠は示されていないが、ハマスによる越境攻撃で約1200人が犠牲になった記憶は国内に根強く、イスラエル政府はその衝撃を背景に、国民の支持を得ようとしているとみられる。

 核開発を巡っては、イラン中部ナタンツなどの核施設の役割について衛星画像などを示しながら説明。イスラエル軍がピンポイントで攻撃していることを強調し、イランとの衝突は「やむを得なかった」と主張している。

 ただ、イスラエルが仕掛けた攻撃はイランからの大規模な報復を招き、15日時点で子供を含む14人が死亡している。イスラエルはイランと異なり情報統制が難しく、被害の詳細は日々メディアを通じて報道されている。

 ハマスとの戦闘も続く中で、国民に「えん戦ムード」が高まる可能性もある。イスラエル政府は世論の動向を見極めながら、イランとの戦闘を継続していくとみられる。【カイロ金子淳、エルサレム松岡大地】

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