「成功者は40過ぎからよく眠る」寝不足の人は脳に老廃物がたまっているかも?

すっきり起きれない、いびきがうるさくなったなど、歳を重ねてくると、誰でも大小さまざまな「睡眠」の悩みを抱えます。ただ、その悪い睡眠を放っておくと、思考力や集中力の低下を招き、仕事や生活が不安定になる恐れも。そこで「睡眠を変えれば人生が変わる」と説く医学博士・田中俊一さんの著書『45歳からは「眠り方」を変えなさい』(文響社)から、脳と体を老け込ませる「睡眠負債」をリセットする方法を連載形式でお届けします。
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成功者は40過ぎからよく眠る
睡眠不足になりがちな人の中には、以前の私のように、「寝ている時間があったら、仕事をしたい」「寝る間も惜しんで勉強を」というような方もいるかもしれません。たしかに、日本では一時期、「1日に8時間も9時間も寝るのは怠け者」で、「深夜まで残業して働くのが会社員の鑑」というような傾向がありました。
しかしそれは、脳科学の側面から見ると、ナンセンス。
脳の力を引き出すため、記憶を整理し定着させるため、脳内に溜まった老廃物を排出し、脳をフレッシュな状態に保つために、十分な睡眠時間は絶対に必要です。
睡眠が不足すると、頭の回転が鈍り、認知症を引き寄せる
ここで、イギリスBBCニュースで2017年に発表された、カナダ・オンタリオ州にあるウェスタン大学の認知テストについて、ご紹介しましょう。
このテストでは、推論や言語理解、意思決定などの能力が、睡眠の不足によってどのように変化するかを調べました。
認知テストの結果そのものには個人差があったものの、その中で何より興味深かったのは、同じ認知テストをしていても、睡眠が不足すると、十分な血液が送られる脳のエリアが極端に狭くなることが、機能的MRIで明らかになったということです。
睡眠不足で頭がボーッとする経験は感覚的なものに限らず、意思決定や問題解決、記憶に関連して極めて重要なものとして知られる前頭葉と頭頂葉の活動が、ぐっと減ってしまうということが、この実験で示されました。
マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ(60代前半)、アップルCEOのティム・クック(50代後半)は現在、ともに7時間の睡眠を確保しているといいます。若い頃、「眠らずにプログラミングをしていた」という逸話があるビル・ゲイツも、現在ではしっかりと睡眠をとっているのです。
若いうちは、生まれ持ったエネルギーで、多少の睡眠不足や徹夜も補えるかもしれません。しかし、「成功者は40過ぎからよく眠る」といわれるのは、40歳を過ぎたら経済的にも時間的にも余裕ができるということ以外──つまり、脳の活動量やパフォーマンスにおいても、理由があるのです。
脳の老化と睡眠
睡眠にはいくつもの役割がありますが、その中でも大切なのは「脳を休める」ことです。
脳は、全身の中でも他の器官とは異なる成長・老化過程をたどります。一般の細胞はテロメアの長さによって分裂していますが、それとは違い、脳の神経細胞(ニューロン)は3歳頃を過ぎると、その後は基本的に分裂することはありません。一度持った細胞をそのまま使い続けて、脳は維持される、ということになります。
そして、このニューロンの能力維持のために、睡眠は重要な役割を果たしているのです。
日中に活動しているときに脳波をとると、全体的にβ波という電気の波をとらえることができます。一方、目をつぶり、外からの視覚情報を遮断すると脳への刺激がぐっと弱まり、α波という緩やかな電気刺激の波に変わります。そして深い睡眠であるノンレム睡眠に入ると、ほとんどニューロンの電気活動が見られなくなります。
睡眠時に限らず、1日の中でこのように活動がほとんどなくなる細胞というのは、実は脳細胞を除いて他にはありません。そして現在は、この睡眠による脳細胞の電気活動の停止こそが、ニューロンを維持するための要だと考えられているのです。
そしてもうひとつ、睡眠は脳細胞にとって、大切な役割を果たしています。それは、脳の神経細胞(ニューロン)は、睡眠時だけ、その中に溜まっている老廃物を捨てることができる、ということです。
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脳以外の全身では、老廃物は通常、腸の動きやリンパや血液の流れ、呼吸などを通じて外へ排出しています。排泄物や垢などは、その代表例ですね。
一方、脳にも、活動に伴って体と同じように老廃物が溜まりますが、その排出の仕組みは少し違います。
睡眠によって、ニューロンの電気活動がなくなると、ニューロンはギュッと収縮して中の老廃物を細胞外に押し出します。そして、収縮したことでできたスキマを通って、その老廃物が神経細胞の外へと流されているようなのです。
脳の中には脳脊髄液と呼ばれる液体が流れており、この液体が睡眠時にすごい流速で、脳の中に溜まった老廃物を押し流します。
この老廃物の中には、アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)の原因といわれているアミロイドβ様の物質なども含まれています。
ですから、深い睡眠をとれていない人は、脳の中に老廃物が溜まることで、認知症になる確率も高くなってしまうといえるでしょう。
また、難病のひとつである筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの変性疾患も、脳の中に老廃物が溜まることが原因のひとつではないかと考えられています。
ALSは、筋肉が痩せて動かせなくなる疾患ですが、筋肉そのものに原因があるのではなく、筋肉を司つかさどる運動ニューロンが障害されることで発症します。ですから、睡眠不足は、こうした難病発症のリスクを高めてしまうことにもつながります。
ニューロンに休息を与え、脳の中に溜まった老廃物を排出する──これは「眠っている間」にしかできないことです。脳にとって睡眠は、これほど重要なものなのです。

052-syoei-nemurikata.jpg仕事の立場や生活スタイルなど、人生が大きく変わり始める40代に贈る、「5つの睡眠改革法」がまとめられています

田中俊一(たなか・しゅんいち)

医学博士。横浜市立大学院客員教授、医療法人みなとみらい理事長。1997年に金沢内科クリニック設立後、国際医療福祉大学院教授、横浜市立大学大学院教授など経て、現職に。毎月8000名の生活習慣病の治療に睡眠から取り組む、睡眠と糖尿病のスペシャリスト。日本テレビ系「世界一受けたい授業」などメディア出演も多数。


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