<この体験記を書いた人>
ペンネーム:やまと
性別:女
年齢:40
プロフィール:50歳の夫と二人暮らしの主婦です。
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コロナ禍の直前の話です。
当時働いていた会社の上司の誘いで、元社員の人がおかみをやっている小料理屋に仲間と行くことになりました。
何回かメディアにも取り上げられた店ということでしたが、昔の部下だしランチだし、ラフな格好でいいと言われました。
その日は午後からジムに行く予定があり、お店も家から近かったので自転車で行くことにしました。
待ち合わせ場所のお店の前に着くと、道の向こうに同僚を見つけたので「ここだよー」と呼びました。
向かいの道からこちら側に来るにための横断歩道がなかなかなく、歩道橋を使った方が早いのでそのことを大声で説明していると、突然、お店の扉が開きました。
「ウルサイ!お客さまに迷惑だから配達員は静かにして! 会社に言いますよ!」
怒鳴ったのは例のおかみです。
どうやら、おかみは私のことをフードデリバリーの配達員と間違えたようです。
季節はちょうど冬、自転車移動で寒くないように厚手のダウンコートに厚手の手袋、帽子にネックウォーマー、ジムの荷物を入れたリュックを背負っていた私。
確かに配達員のように見えたのも仕方ないかも知れません。
もちろん、それらはお店に入る前に脱ぐ予定で、コートの下にはきちんとした上着を着ていました。
その後すぐに上司が来たので誤解は解け、私が客であることが分かったようです。
すると今度は「まあーお客様お越しいただきありがとうございますぅ」と媚びたように言い、そのあまりの変貌ぶりにびっくりしました。
店はカウンター形式でおかみと話しながら食事をしたのですが、話の流れで私が派遣社員で同僚が正社員だと分かると、またも態度が急変。
今までみんなで話していたにも関わらず、同僚ばかりに話を振り私は無視。
しかし、私が近くに住んでいることが分かると途端に食いつきます。
極め付けは、私の夫の勤務先を聞いた時です。
「○○社といえば××さんはご存知かしら? 私本当に仲が良くて〜」
私の知らない人の話を長々と、その人がいかに優秀で素晴らしいか、いかに自分と仲が良いかを話します。
帰り際には満面の笑顔で「今度またご主人といらしてくださいね〜」と見送られましたが、私の顔はひきつっていたと思います。
店の前で大きな声を出した私も悪かったのですが、食事をしている間だけで何度も態度を変えたおかみの豹変ぶりに本当に驚きました。
配達員には上から目線で怒り、お客さんには必要以上に媚びる。
派遣社員は無視で有名企業には食いつく。
本当に、こんな絵に描いたような手のひら返しをする人がいるんだなと、逆に感心してしまいました。
そして、この人が会社にいなくてよかったな、一緒に働かずにすんでよかったなと思ってしまいました。
もちろんその後も、夫とそのお店には行くことはありませんでした。
美味しいお店としてメディアにも取り上げられたこともあるようですが、おかみのインパクトが強すぎて、味なんて思い出せません。
先日たまたま自転車でそのお店の前を通る機会があり、理由は分かりませんが閉店していました。
心なしか、自転車のペダルがいつもより軽く感じたのは私だけの秘密です。