アメブロで「〜こんな事を言っちゃあなんですが!〜」を運営しているかづと申します。現在は夫婦二人と3ニャンとで暮らしています。私の嫁時代の体験を思い出しながら書いています。

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夫は当時、会社では新人教育の一環として『トップセールスマンとしての心得』なるものの講師や、業務に必要な資格取得のための指導もしていた。
会社主催の社員の家族を招いてのイベントでも、当時の部下の方々からも、とてもお世話になっていますとたくさんご挨拶を頂くほどだった。

私としては家庭での夫を見た限りでは、会社でもさぞや嫌われているとばかり思っていたが、部下思いの気配りできる上司と思われていた事に驚いた。
色々な事から私が分かった事は、夫は自分の評価に関わる事のみに神経を使い、自分がどう思われようがどうでもいい事には、ことごとく無神経で勝手な振る舞いでも平気だという事だった。
たとえそれが子どもの関係する事であっても、自分の社会的立場に関わりの無い相手にはぞんざいな態度を取り、何をどう思われても痛い事も痒い事も無いとの考えが夫だった。

ある日のこと、地域の子ども会で焼きそばパーティーがあった。
役員たちは朝早くから集まって会場設営であったり、紙の取り皿や割り箸を用意したり、焼きそばを焼くコンロや鉄板の用意に大忙しだ(当時私は会計係)。
夫はいつもなら休日は出勤だったので、私は二つ返事で日曜日のイベントに参加すると返事をしていたが、この日は前日帰宅してから突然翌日は休みだと夫から知らされた。
かと言って夫が焼きそばパーティーに参加したとて、これと言ってほかの親御さん達と仲良くする可能性はほぼ無いので、夫の焼きそばは家まで持って帰るから待っていてくれと、そして息子達には開始時間30分前に来るようにと言って私は家を出た。

当時、役員やお手伝いに来てくれている方々はご夫婦での参加が多かった。
夫はいつも仕事でいなかったので、役員会やイベントごとには私が一人で参加するたびに「ご主人は今日は?」と聞かれていたが、そのたびに「仕事で...」と答えていた。

早朝からの大人たちは、私達役員があれやこれやと指示をさせて頂きながら着々と準備が進み、開始時間30分前には息子達も含めて地域の子ども達がわらわらと集まって来た。
子ども達にも色々と用事をお願いしながら、パパさん達が率先して焼きそばを焼ける体制に入り、ママさん達はゴミ袋であったり飲み物を配る用意が出来た。

焼き手のパパさん達から
「もうそろそろ子どもらも来てるから、焼いていってもええかな?」
と声がかかったので
「はい! じゃあもう焼いていってください♪」
と元気いっぱいの大きな声で返事をし、ふと会場に目をやった私は一瞬で固まってしまった。

夫が食事用に設置したテーブル席の真ん中に座っていたのだ。

「えっ?? なんで来てる??」
私は夫の姿に驚いたが、もう焼きそばパーティーが始まってしまったので次々とする事が山の様にある。
《頼むから静かにしといて!》
心の中でそう願った。

当時から、この様な地域のイベントには保護者の参加は少なく、子どもだけ出す家が徐々に多くなりつつあった。
下手に保護者が出て行くと古株の役員たちにつかまっては、子ども会の役員であったり地域の役員になるように説得されるので
「子どもが小さいので無理です...」
と断る理由のある方以外、いわゆる大きな子達の保護者はほとんどと言っていいほど出て来なかった。
だからこそ、役員でもないのに食事用テーブルの真ん中に座っている夫の姿は目立ち過ぎていたのだ。
それこそあちらこちらから
「あの人誰? どこの人?」
とささやかれ、そうこうしている間に古株の役員が缶ビールを2本持って夫の隣に座って話しかけた。
私のいるところから夫のいるところまで少し距離があったので話し声は聞こえないが、それでも何を喋っているのかは想像できた。

5分も話していなかった古株の役員が、夫の前に缶ビールを2本とも置いてこっちに来た。
「あの人、かづさんとこのご主人やったんやなぁ! 初めて見たから知らんかったわぁ」
「ええ...あは...あはは...」
作り笑いしか出来ない。

その後も古株の役員さんは、ビール片手に夫の隣に立ったり座ったりしながら、
「いつも奥さんにはお世話になっとるんですよー」だの
「ご主人も出て来てくださいな」だのと話していた。

そうこうしている内に焼きそばが焼けたので、待っていた子ども達に紙皿と割り箸を渡しながら2列に並ぶように言う。
焼き手のパパさん達は子どもらから紙皿を受け取っては焼きそばを盛り、それを貰った子どもらはテーブル席に移動して食べ、飲み物係の役員がジュースやお茶を座った順に配り、食べ終わったらゴミ袋に紙皿と割り箸、そして空き缶を分別して捨ててから帰って貰う。

一回目の焼きそばが終了し、2回目に取り掛かった時に、ママさん達から焼き手のパパさん達に声がかかった。
「ずっと焼いて貰ってるから、次に焼けたら自分らの分持って向こうの席で飲んでくださいね」
すると焼き手のパパさん達は口々にこう言う。
「いや、自分らは最後でええですよ。まずは子どもらをお腹いっぱいにして、大人は最後にしましょうや!」
お手伝いのママさん達も役員たちも、そして焼き手の交代で来てくれたパパさん達からも
「そやな! まずは子ども達を腹いっぱいにせなあかんな!」
と声が出て、裏方一同に笑顔があふれた。

その瞬間だった。

「おーい! こっちずっと待っとんやけどな!」

皆が驚いて、目を向けた先にいたのは夫だった。
隣に座っていた古株の役員は、驚いて目を丸くしたまま口が開いていた。
私は慌てて夫の所に走って行き、こう言った。

「先に子どもらをお腹いっぱいにさせて、大人は後からにしようってなったんよ。だからちょっと待ってて!」

普段から隣近所と付き合いする事も無く、またそれを必要だと全く思っていない夫にしてみれば、この集まり自体を私のコミュニティだと思っているので、この場でどんな態度をとるべきかなんて考えていない。
普通に考えれば同じ住民としてのコミュニティなんだから、私や子どもだけの繋がりではなく、自分も含めてなんだと考えるだろうし、そもそも妻や子に恥をかかせない様にと考えるもんじゃないのか。
けれども先に書いた様に、夫にとっては自分がどう評価されようが痛い事も痒い事も無い場では、思うがままの態度だった。

「さっきからずっと待っとるのに、全然出て来んうちに終わってしもて! いつになったら持って来てくれるんか待っとんのやけどな!」

夫が更にこう言い続けるので、見るに見かねたママさんの一人が自分の子どもの前に置いていた焼きそばを持って来て言う。

「かづさん! これ渡してあげて! うちの子手ぇ付けてへんから!」

「いやいやいや、それお子さんのやん! 食べさせてあげてよ!」

「いや、うちの子は後でええねん! 私らと一緒に後で貰うからこれご主人にあげて!」

ママさんの好意は嬉しいが、焼きそばを楽しみにしていたお子さんが気の毒過ぎる。
けれども周りの大人たちの目線に気が付いた。
皆の顔が言っている。

《もうその焼きそば持たせて、とっとと帰って貰え!》

紙皿に盛った焼きそばを、あらかじめ残った時用に買ってあった使い捨てパックに移して夫に渡し、缶ビールも持たせて追い返す様に帰らせた。

夫が会場に背を向けて自宅へと歩きだすと、私はお手伝いの皆さんの元に戻り
「お騒がせして、本当に申し訳ありませんでした」
と深々と頭を下げて謝った。
皆さんからは口々に
「気にせんでええよ!」
と言って貰え、それ以降「ご主人は?」と聞かれなくなった。



かづ

​ブログ「〜こんな事を言っちゃあなんですが!〜」の管理人で、Ameba公式トップブロガー。 ​基本専業主婦の​50代​。子育てが終​り、​夫と4ニャンと暮してい​る​結婚36年目です。 ​一人っ子の夫と結婚し、舅姑の理想の嫁でなかった私の結婚生活においての戦いを思い出しながら書いています。

※毎日が発見ネットの体験記は、すべて個人の体験に基づいているものです。