毎日の生活にドキドキやわくわく、そしてホロリなど様々な感情を届けてくれるNHK連続テレビ小説(通称朝ドラ)。毎日が発見ネットではエンタメライターの田幸和歌子さんに、楽しみ方や豆知識を語っていただく連載をお届けしています。今週は「『おかえりモネ』の空白の3年半」について。あなたはどのように観ましたか?
※本記事にはネタバレが含まれています。


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清原果耶主演のNHK連続テレビ小説(通称朝ドラ)『おかえりモネ』第18週のサブタイトルは「伝えたい守りたい」。
今週は大型台風が日本列島に迫るという、台風間近の現実と重なり合う展開が描かれた。
台風が迫る中、百音(清原)は、誰がどこに住んでいて、どんな仕事をしているか、お年寄りや生まれたばかりの赤ちゃんなどの情報も把握していて、災害時の避難に役立てられるような地域密着型の気象予報士を全国各地に配置するという「あなたの町の気象予報士 全国津々浦々計画」をプレゼンする。
そして、台風がピークを超えたかに見えたとき、百音は長野に住む高齢女性から浦山の小川の言い伝えを電話で聞いたこと、朝岡は運営するサイトに河川の増水情報が続々と送られてきたことを契機に、気象班チームと朝岡とが連携しつつも別動隊として情報を発信し始める。
大きなかたまりでの「チーム戦」だ。
しかし、そんな緊迫感ある展開だからこそ際立ったのが、この作品の大きな特徴の一つ「詳しく説明せず、視聴者に余白から想像し、行間から読み解いてもらう」手法だ。
何せ今週冒頭で、百音が上京してからの日々がダイジェストで流れ、そこから3年半も時間が一気に飛ぶ。
ほとんどのキャラは見た目で大きく変化していない中、大きく変わっていたのが内田(清水尋也)だ。
モッサリしていたオタクの内田は、ファッション誌の取材を受けるほどオシャレなモテキャラになっていて、それは明日美(恒松祐里)が「育て過ぎた」せいであること、しかし「僕はスーちゃんだけだから」と臆面もなく言えてしまうラブラブぶりがサラリと描かれる。
一方、遠距離恋愛中の百音と菅波(坂口健太郎)は、2カ月ぶりに会っても仕事の話ばかり......かと思えば、みんなが呼ぶ「モネ」ではつまらないから「ももねさん」と、本名を"専ニク"(専用ニックネーム)的に使ってみたり、「母親の呼び方だから」と嫌がる菅波にわざと「光太朗さん」と呼んでみたりと、親密度が上がっている様子も見える。
そして、プレゼンの最中でも何気なく「これは知り合いの医師と相談したんですが〜」と、「知り合い」の顔が浮かんでしまう人物が何人もいる中で、しれっと恋人情報を入れてくる百音も、なんだか恋愛中の生々しさに満ちている。
時間が一気に飛んで、その間が説明されないのに、呼び方や距離感の微妙な変化によって「あれ? この人たちいつの間に」と時の流れを感じさせる手法は、朝ドラでは実に珍しい。
どこか有名人などが自身の恋愛などについてSNSでさりげなく匂わせてくる、いわゆる「匂わせ」にも似ている。
言葉で明確に説明せずに行間から読み解かせる「匂わせ」的描写は、昔から朝ドラを時計がわりにしている層には響きにくいかもしれないが、わずかな情報を頼りに勝手に発見・推測し、読み解きたいSNSとの相性の良さにつながっているのではないだろうか。

文/田幸和歌子

田幸和歌子(たこう・わかこ)
1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経て、フリーランスのライターに。ドラマコラムをweb媒体などで執筆するほか、週刊誌や月刊誌、夕刊紙などで医療、芸能、教育関係の取材や著名人インタビューなどを行う。Yahoo!のエンタメ公式コメンテーター。著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)など。