「いつか片づけたい...」と長年思いながら、モノであふれた部屋をどうしたらいいかわからない、という人も多いのでは? 今回は断捨離の提唱者である、やましたひでこさん自身も実践する「やめる生活習慣」を教えていただきました。心地よい空間を常に保てるヒントが見つかります!
この記事は月刊誌『毎日が発見』2024年4月号に掲載の情報です。


いざ実践 やめる生活習慣7
日々繰り返して「〜しないくせ」をつける
あふれているモノを実際に減らし、適正な量にしてみましょう。
まず、今の自分の視点を意識してモノを選び抜きます。
それには、
(1)即断=要るか要らないかを判断
(2)即決=不要と判断したモノを本当に捨てるか決める
(3)即断行=決めたらすぐに実行して捨てる
の3ステップが必要で、最後の捨てる行為をして初めて家の中のモノが減ります。
始めるのは案外(3)の「捨てる」が簡単です。
捨てる行為をまず実践することで、その前の「判断」や「決断」がしやすくなります。
これらは断捨離のトレーニングです。
1日5分でもいいので毎日することで身につきます。
モノと向き合ううち、今の生活に何が不足で何が過剰か分かってくるはずです。
さらに具体的には以下の7つの「〜しないくせ」をつけた生活習慣にすることで、スッキリした空間を作ることができます。
空間に対してモノの量が整えば、余分な収納グッズも不要で片づけもラクになり、掃除も障害物なくスイスイと快適にできます。
常に心地よい空間を保てるよう、生活習慣を見直しましょう。


(1)判断を先延ばしにしない
家をきれいにするには片づけ→整頓→クリーニングの3ステップがありますが、最初に取り組むべきなのは片づけ。
つまり不要なモノをなくすことです。
そのためには判断が必要ですが、毎日の生活習慣の中ですぐに判断できるくせをつけるようにします。
例えば、帰宅してポストを見たら、あきらかに要らない郵便物はその場で判断し、破いて捨てます。
服は着替えるときに「外に出かけて行きたくなる服か」と考え、着たくないと決めたら、友人にあげたりしてなるべく早く処分します。
判断して実行するくせを意識しておけば、身につきます。
判断するときは、そのモノが使えるか、他人からどう思われるかというような「モノ軸」「他人軸」ではなく、今の自分との関係性を考えた「自分軸」を基本にします。
モノは使ってこそ生きます。
ただ置いてあるだけのモノは、モノとはいえません。
本当に要るのか要らないのか、自分によく問うた上で、早く答えが出るように意識します。
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大事な食器今の自分に必要ないなら捨てると判断し、必要とする人に回すなどして処分。

(2)分類してから捨てない
分類とはこれは使うモノ、これは使えるけれども使わないモノなどと分けること。
それより先にまず絶対に使えないモノであるかを判断するくせをつけます。
例えば壊れているモノ、賞味期限を過ぎているモノ、部品が欠けているモノなど。
その判断がすぐにできて捨てられるようになったら分類し、使えるけど使わないモノは処分します。
さらに慣れてきたら、その中から使うけれども使いたいと思わないモノを選択して処分し、最終的には本当にお気に入りだけを残します。
思い出の品などハードルの高いものは後回しにして、とりあえず捨てやすい身近なモノから始めるのがおすすめです。
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ちゃごちゃの引き出しの整理。まずは分類せず、使えないモノを捨てることから。
(3)使い終わったらそのままにしない
トイレは使い終わったらふたを閉めておく。
何気ない行動ですが、使い終わったらすぐに元の状態に戻す訓練になります。
こうすれば見た目がスッキリし、流す前に閉めれば雑菌も周りに飛び散りません。
洗面所の化粧品のボトルは出しっ放しにしないで、使ったらその都度戻します。
そのちょっとした行為をいつも続けると、しだいにほかのことでも元に戻すくせがつきます。
例えば、外から帰ってきたらバッグを床に置こうとせず、その手でクローゼットまで持って行く。
洋服を着替えてハンガーに掛けて戻す。
ごく当たり前のことに思えますが、その積み重ねが今やるくせをつけることになります。
1日の終わりにテーブルの上をすべて片づけ、何もない状態にしておく、キッチンの洗いカゴだけは絶対に空の状態にしておく、など自分なりのルールを作り、習慣づけるのもいいでしょう。
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衛生面からもトイレのふたは閉めておくくせをつけて。
洗面所に置くのも最低限のモノだけに。

(4)安心感だけで買いだめしない
災害に備えて買い置きの必要性が見直されています。
ただし、備蓄と買いだめは違います。
買いだめは足りなかったらどうしようという不安や、安いから買っておこうといった計画性のないものであり、備蓄は期間や収納する空間を考えて、適正在庫を確保することです。
各自治体も「日常備蓄」として、災害に備えて特別な準備をするのではなく、普段使っているモノを常に少し多めの状態でキープすることをすすめているようです。
食品庫の備蓄はまさに日常の食事としても食べ、数が減ったら増やすローリングストックがおすすめ。
トイレットペーパーや水も過剰在庫にならないよう注意してストックするくせをつけましょう。
必要な備蓄量に合わせた収納場所の確保も必要です。
過剰にならない、一定量の保存を心がけたいものです。
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食品は古いものから食べ、食べたら補充するローリングストック方式で。
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半分ぐらいの量が減ったら補充するなど空間に対しての適正量も考えて備蓄を。

(5)スペースを確保する前に衝動買いしない
洋服の衝動買いは、ついしてしまいがちです。
仕事で地方に行ったときなどに、パッと見て気に入ったものを衝動買いすることがあります。
でも、これは断捨離をしている者だからこそできるワザかもしれません。
今の自分に合った「旬」の洋服を買うのはもちろん悪くありませんが、それもすべてスペースが確保されてから、が原則です。
そのためにも買ったら捨てるのではなく、先に捨ててから買うくせをつけます。
洋服なら、クローゼットの古い服を捨て、新しい服を入れるスペースを確保してからにします。
洋服以外のモノも同じ。
モノはイン→アウトではなく、アウトが先、そのあとにインというのが断捨離の考え方です。
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ほぼガラガラのやましたさんのクローゼット。ここまで空間に余裕があれば衝動買いもOK。
(6)モノを種類に分けて片づけようとしない
断捨離をするときは衣類、キッチン道具、本といった種類別ではなく、机の上、引き出しなど空間別に片づけるくせをつけます。
なぜなら空間を整えることこそ重要だからです。
それも小さい空間から始めると失敗がありません。
最初は財布の中、ポーチの中というごく小さい空間から、机の上、引き出しの中、本棚の一段へ、それができれば棚全体、というように範囲を広げていきます。
すると棚の置いてある床、というようにだんだん周りまできれいにしたくなります。
ひとつの空間を成功させると、次々に断捨離してみたくなるはずです。
収納するときは全体量を収納スペースの7割にします。
こうするとモノの通り道ができ、出し入れがスムーズです。
ガラスの食器棚など外から見える収納は5割に。
ひとつひとつがゆったりして、モノ自体が生きてきます。
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引き出しの中は7割収納で。下着やスカーフ類などはひと目で見やすいよう立ててしまう。
(7)今、必要のないモノは家の中に入れない
捨てることがなかなかできないなら、入ってくるモノを断つくせをつけましょう。
すなわち断捨離の「断」で、重要なことです。
化粧品のサンプル、街角で配るティッシュなどは本当に使うと思うときだけもらい、もらったなら溜めておかないですぐに使うこと。
そのまま放置してはただのごみと同じです。
おまけ、粗品、景品なども使う必要がなければ潔く断ります。
そうすればあとで捨てる苦労がないのですから。
人づき合いに関しても同様で、年賀状やお歳暮など面倒くさいなどと思うようならしおどきと考え、やめるのもひとつの方法です。
年賀状はSNSの利用が普及しているのでいつも会う人に出すのはやめた、という人も増えているようです。
もしこれらをやめることで壊れてしまうような人間関係なら、それが真の関係かどうか、見直してみる必要がありそうです。
会食などの集まりも気乗りがしなければ納得してもらえるような理由をつけて断ってもよいでしょう。
コロナ以降は体調不良、介護や家族・スケジュールの都合など、断りやすくなっているはず。
今の自分の気持ちを優先して、人間関係を断捨離することもたいせつなのです。
取材・文/細川潤子 撮影/原田 崇



<教えてくれた人>

やましたひでこさん

一般社団法人 断捨離(R️)代表。ヨガの行法哲学「断行・捨行・離行」に着想を得た「断捨離」を日常生活の片づけに落とし込み、提唱する。著作・監修を含めた関連書籍は国内外でミリオンセラーに。