「今、私たちが置かれている状況」を端的に表すキーワードとして注目されているVUCA(ブーカ)。企業や個人が不確実な時代を生き抜いていくために認識しておくべき、示唆に富んだ意味を持つ言葉として知られています。

この記事では、VUCAの概要とVUCAワールド・VUCA時代に適応するための考え方のヒントを紹介します。

VUCA(ブーカ)とは?

VUCAとは、テクノロジーの急速な進歩などによって社会経済情勢がきわめて予測困難になっているという認識を表す造語です。

もとはアメリカで生まれた軍事用語で、1990年代後半の冷戦終結でそれまでの国対国の単純な対立構造が崩れ、テロなどが多発する複雑で混沌とした世界情勢が訪れたことを表す言葉でした。その後、2010年代になるとビジネス界でも使用されるように。VUCA時代やVUCAワールドといった表現もよく見かけます。

VUCAワールドでは、状況の目まぐるしい変化によって既存のビジネスモデルや価値観がすぐに陳腐化してしまいます。企業が生き残るには周辺の事業領域に手を広げるだけでは不十分で、まったく新しい領域に大胆にジャンプするような“非連続”的な成長が求められるといわれています。

4つの言葉の意味を紐解く

VUCAは次の4つの言葉の頭文字を取って付けられています。それぞれの言葉の意味を見ていきましょう。

Volatility(変動性)

IT技術の進歩は社会、経済、さらには市場ニーズや消費者の価値観にも激しい変動をもたらしています。インターネット、スマートフォン、SNSなどが人々の日常生活に浸透し、新しい製品やサービスが次々に生まれていますが、この先にはAIやIoT、ロボットなどの普及が控えています。「変動性が高い」という状況は常態化していくでしょう。

Uncertainty(不確実性)

既存の社会構造も変化し、先を見通すことは非常に難しくなっています。デジタルネイティブな世代や企業が新たな領域を切り拓いてこれまでにない文化を築き、やがてAIがより高度なAIを創り出すことも考えられます。昨今では、新型コロナウイルスの感染拡大も予測不可能な状況を増長させています。

Complexity(複雑性)

グローバル化、高度情報化などによりさまざまなパラメーターが複雑に絡み合い、わかりやすく単純な解答が得られなくなっています。ある国や企業での成功事例が他の国や企業にも適用できるとは限りません。ガラパゴス化といわれるように、日本ではとくにその傾向が顕著です。

Ambiguity(曖昧性)

上記3つの要素が組み合わさることで、状況や先行きは常に曖昧です。唯一無二かつ永続的な解決策などは存在せず、曖昧性を前提とした思考をすることが必要です。

VUCA時代・VUCA世界に適応した思考法とは

VUCA時代では想定外の事象が次々と起こり、正しい答えを見出すのが難しくなっています。VUCAについて知ると、現代、そして近未来に対してネガティブな思いを抱くかもしれません。しかし、VUCA世界ではイノベーションや新規参入者によって既存の常識を覆すような変化が起きる可能性があります。すなわち、あらゆる企業に大きなチャンスが与えられている時代であるともいえます。

そうしたチャンスを手にするために、企業やトップは何をどのように捉えて経営戦略を立てていけばよいのでしょうか。通常であれば、環境分析をし、その結果に沿って目的を定め、個々のミッションを組み立てるといった形でプランニングをします。しかしVUCA時代にはそもそも有効な環境分析をすることが困難です。そこで「OODA(ウーダ)ループ」という先の読めない状況で成果を出すための意思決定方法が役に立つとされています。

OODAループでは、以下の4つのステップを回す形で状況に対応していきます。

まとめ

VUCAは経済産業省が2019年3月に発表した『人材競争力強化のための9つの提言(案)〜日本企業の経営競争力強化に向けて〜』の中でも大原則のひとつに位置づけられています。そして国内の経営トップに対し、VUCA時代に対応した組織や企業文化の変革を進めることを提言しています。

VUCA時代に適応するためのOODAループは、簡略化して説明すると人間が何か行動するときのごく当たり前のステップのようにも思えます。しかし、重要なのはこのループをスピーディーに、そして改善を加えながら繰り返し行うことです。また企業内のさまざまなチームがそれぞれに状況に対応し、あるいは状況を打破していくのが理想です。こうした方法論は組織の硬直化を脱し、自走する組織を作り出すための手段として活用可能です。