弁護士や裁判官、検察官になるためには、国家試験である司法試験合格が必須です。政府(管轄は文部科学省)は2004年に法科大学院を新設するなど、多様な問題に対応できる質の高い法律家を養成するための制度改革を推進してきました。ところが近年では全国的に志願倍率と入学者数が低下し、定員割れのため学生の募集を停止する法科大学院が相次いでいます。

そんな中、法務省は2021年に行われた司法試験の合格者が初の4割を超えたと発表しました。法科大学院への志願者が減少している状況で、司法試験の受験者にどのような変化が現れているのでしょうか?

今回は合格率が向上している司法試験と、受験者の動向について考えていきたいと思います。

目次【本記事の内容】

弁護士、裁判官、検察官は法曹(もしくは法曹三者)と呼ばれ、法律に関わる職業の中で最も高い専門性を有しています。前述のとおり法曹になるためには、国家試験である司法試験に合格しなければなりません。また司法試験を受験するためには法科大学院を修了するか、法科大学院予備試験に合格している必要があります。この2つのどちらかで受験資格を得た受験者は、5年間の間に5回まで司法試験を受験することができ、この制限の中で合格することが求められます。試験は短答式試験と論文式試験で行われ、憲法、民法、刑法などの知識や論理的な思考力が試されます。

司法試験合格後は約1年間の司法修習に参加する必要があり、導入演習、分野別実務修習、集合修習、選択型実務修習といったカリキュラムで、法律家としての実務能力や職業意識、倫理感を学びます。すべてのカリキュラムが終わると二回試験というテストを受け、ここで優・良・可・不可のうち不可以外を取ることが法曹への最終関門です。試験科目は、民事裁判、刑事裁判、検察、民事弁護、刑事弁護の5科目で、このうち一つでも不可を取れば不合格となってしまいます。この二回試験にも受験回数の制限があり、3回不合格となった場合には法曹になることはできません。ただし二回試験の合格率は90%以上なので、やはり一番の関門は司法試験といえるでしょう。法曹になるには、このような難関をすべて突破せねばならないのです。

法務省は2021年の司法試験の受験者が3424人(前年比279人減)で、そのうち合格者が1421人(前年比29人減)であったと発表しました。法科大学院への志願者同様、司法試験の受験者も近年は減少傾向にあるのです。にもかかわらず、2021年の合格率は前年より2.34ポイント上昇し、初の4割超え、41.5%となりました。

合格者の内訳は男性1026人、女性395人。合格者の平均年齢は28.3歳(2020年28.4歳、2019年28.9歳)で最年少合格者は18歳でした。また1回目の受験で合格した受験者は1024人。これは2020年が960人、2019年が884人となっており、受験1回目での合格者が増える傾向であることがわかります。これらの傾向を総括すると、合格者の平均年齢は若くなる傾向にあり、受験者の質(実力)も向上していると推測できます。

また先述のように司法試験を受験するには2つの方法があり、法科大学院を修了するか、法科大学院予備試験に合格している必要があります。合格者の平均年齢低下と合格率の向上には、この受験方法も影響を与えている可能性があります。

合格者の内訳を受験資格の取得方法別に見てみると、法科大学院修了者の合格者は1047人で合格率は34.62%、予備試験で受験資格を得た合格者は374人で合格率は93.5%でした。つまり合格率で見た場合、法科大学院修了者に比べて予備試験を経た受験者の合格率は圧倒的に高いのです。

法科大学院に進むためには4年制の大学を修了している必要があり、法科大学院の修了も法学未修者は3年、法学既修者は2年かかります。一方、予備試験の受験資格には学歴や年齢の制限がありません。つまり法科大学院を経た場合の受験年齢は最低でも24歳程度となるのですが、予備試験を経れば高校生でも中学生でも司法試験を受けることができるのです。

今回の18歳での最年少合格者が現れた背景にはこのような事情があります。今後、合格者の若年化はもっと進んでいく可能性があるのかもしれません。また、予備試験によって受験者への門戸が広く開かれていることも、合格率向上の要因となっているでしょう。

文部科学省は、2020年から新たに「法曹コース制度」を司法制度に導入しました。これは法学部の入学から卒業までを3年に短縮し、その後の法科大学院での履修と合わせて最短5年(現在は6年)で司法試験の受験資格を得られるようにするものです。また定められた水準の成績を修めた者は、法科大学院在学時の最終学年時において司法試験を受験することもできるようになります。

法科大学院の定員割れが続いていることはすでに述べましたが、予備試験の合格はハードルが高く、法曹を目指すものにとって法科大学院は依然必要不可欠なものです。今回の法曹コース制度導入は、司法試験受験までの経済的、時間的な負担を軽減し、法曹への志願者減少に歯止めをかける狙いがあります。政府は、2015年に司法試験の合格者を毎年1500人程度とする目標を掲げましたが、この目標は2年連続で達成されていません。政府は今後も、法科大学院を経た受験者の合格率向上策を推進していくものと思われます。