先日、国内有数の広告代理店が、数千億円かけて建設した本社ビルを売却するという報道が話題となりました。
売却の主な理由は、テレワークや働き方改革によって従業員の出社率が2割以下となっていることだといいます。感染症の影響だけでなく、働き方改革やDX化は企業にとって大きな外部環境の変化となっているのです。

総務というと、企業内外で起こるあらゆる事象に対応しなければならないという重要な役割を持っている反面、部署に外から見ると事なかれ主義で新しいことには消極的と思われがちな面もあります。
ですが、上記のような外部環境の変化に対応できるのは、やはり総務。
今回はワークプレイス改革を中心に、今こそ真価を発揮するべき攻めの総務「戦略総務」について考えていきたいと思います。

4つに分類できる総務の仕事

総務の担当業務は他の部署で扱わない業務全般の対応が求められるため企業によってそれぞれ違いがあると思いますが、以下の4つを含むケースが一般的です。

アセットマネジメント/不動産管理
自社保有資産(土地・建物等)の管理、オフィスの賃貸管理、店舗及びテナント管理等ワークプレイス管理/オフィス管理
ワークプレイス計画・管理、オフィスレイアウト、事務所設備(家具・什器)の手配・管理、移転等の手続き全般、事務所工事等ファシリティ管理
オフィスの清掃やメンテナンスなどの管理全般、環境衛生管理業務、セキュリティー管理、防火・防災・BCP、労働環境の整備等オフィスサービス業務
OA機器管理、会議室、受付などの管理、備品購入、自動販売機管理、駐車場管理、福利厚生(保養所、産業医など)の管理全般

このように見ていくと、総務の仕事はオフィスそのものや設備・備品、従業員の働く環境に関係するものが多いことがわかります。近年、これらの仕事に大きな影響を与えているのが働き方改革と新型感染症の感染拡大です。

働き方改革と感染症拡大による勤務形態の変化

働き方改革は政府主導で以前から推進されていましたが、新型感染症の感染拡大と共に一挙に普及したのがテレワークです。テクノロジーの進歩により働く場所は自宅だけでなく、カフェや二拠点居住による地方の移住先など、自分で好きに選べるようになりました。今まではオフィス=働く場所であったのが、働く場所=自分の事情に合わせた場所に変わったのです。

働く場所の選択肢が増えることは、従業員ばかりでなく企業にとってもメリットがあります。オフィスの統廃合や家賃の安いサテライトオフィスの利用、机やOA機器などの効率運用が可能になるからです。

このような働き方の変化は、総務主導でワークプレイス改革(従業員の活性化を目的とした、働く場所の環境改善)を進めなければならない「きっかけ」ともいえるものです。冒頭の広告代理店の本社売却は、まさにワークプレイス改革の代表事例です。ワークプレイス改革を中心とした健康経営への取り組みは、欧米諸国では主流となりつつありますが日本ではまだまだ普及していません。

ワークプレイス変革が重要課題に

従業員の能力を活性化させるワークプレイス改革のもう一つの柱が、ウェルビーイング(Well-being)の実行です。ウェルビーイングについては世界保健機関(WHO)憲章の文章がよく引用されますが「病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的、精神的、社会的すべてにおいて満たされた状態」を指します。

オフィスにおける具体的な取り組みとしては「換気(CO2)コントロール」や「抗菌・除菌施策」、「静音環境の整備」、「オフィス内フレグランス」、「リラクゼーション」などがあり、これらを積極的に計画・実行していくには戦略総務の存在が不可欠です。

このような働く環境の整備や従業員の能力活性化は、従業員の定着率向上に寄与して将来予想される労働力不足を防ぎ、優秀な人材の確保につながります。ワークプレイス改革を受け身ではなく積極的に進めることは、結果として健康経営を実現することになるのです。

環境の変化に攻めの姿勢で対応する

総務を単なる「社内のメンテナンス担当」と考え、守りの総務を当たり前にしてしまうことは将来的な経営の競争力低下につながります。実際に総務部門が使う年間の経費を見てみれば、その効率が経営に与えるインパクトの大きさを実感できるはずです。総務がコントロールする企業経営の範囲は、経営陣や従業員が思っているものよりずっと広いものなのです。

経営における外部環境の変化は、偶発的に思えるものの実際には定期的に起こっています。1990年代のバブル崩壊、2000年初頭のITバブル崩壊、2008年にはリーマンショック、そして今回のコロナショックです。約10年ごとに訪れる外部環境の劇的な変化。安全策ばかりを考える受け身の「管理総務」から脱却し、戦略的に企業経営に関与する攻めの総務、「戦略総務」へと変わっていかねば、この変化に対応することは難しいのではないでしょうか。