コロナ禍による休業支援金、雇用調整助成金の支出が想定以上に膨らんだことで、雇用保険財政を圧迫し、社会的セーフティーネットの課題が持ち上がっています。

目次【本記事の内容】


休業支援金と雇用調整助成金が雇用保険財政を圧迫

病気や事故、失業などの収入減少などに備えるのが雇用保険ですが、原則として受給の条件となるのは保険料を納付している雇用保険加入者です。

しかし、新型コロナウイルス感染症対策として設けられた「休業支援金」と「雇用調整助成金」の財源は雇用保険であり、特例として、労働時間が20時間に満たないパートなどの雇用保険の未加入者も受給の対象に含めました。

この特例が、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置による収入減や、勤務先から休業手当を受け取れない人を支える緊急策として、いわゆるセーフティーネットの役割を果たしたことは言うまでもありません。

ところが、「休業支援金」の支出は、9月中旬までに1,800億円を超え、そのうち、雇用保険加入者への支給決定は約67万件(支出額約587億円)、未加入者は約177万件(1,236億円)で、利用者の7割弱が雇用保険の未加入者となりました。

また、雇用調整助成金についても、加入者が約350万件(4兆1.392億円)、未加入者が約106万件(3,262億円)ですから、雇用保険財政が逼迫することは数字の上からも明らかです。

どうなる社会的セーフティーネット

雇用保険料は、会社と従業員が分担して納めるもので、前年度の財政が厳しければ料率を引き上げ、余裕があれば引き下げます。

来年度の雇用保険料率の議論が厚労省の審議会で始まりましたが、労使は揃って税金の追加投入を要求しています。保険料率を巡る国と労使との綱引きは、ますます激しくなりそうです。

ただ、ここで改めて考えなければならないのが、社会的セーフティーネットをどうするか、という問題です。図らずも、雇用保険料を財源とする休業支援金と雇用調整助成金によって、クローズアップされることになりました。

問われる「安全網」から漏れてしまう非正規雇用者への対応

社会的セーフティーネットとは、病気・事故や失業などで困窮した場合に、憲法第25条の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障する制度のことで、健康保険や年金、失業保険、生活保護などの社会保障制度のことです。

セーフティーネットを直訳すると「安全網」で、もともとは、サーカスでの空中ブランコの落下に備えたネットのことを意味します。そこから転じて、失業や病気などで経済的な困窮などに備える社会保障制度を、セーフティーネットと呼ぶようになりましたが、誰もが安心して働き、生活していくための、なくてはならない仕組みです。

しかし、安全網といっても、主に正規雇用者への制度であり、非正規雇用者などは、こうした社会保障制度という網からは漏れてしまうことになります。

セーフティーネットとベーシックインカム

2021年7月の「労働力調査」によると、雇用者全体に占める非正規者の割合は36.5%で、実に3人に1人が非正規雇用者です。さらにフリーランスや、ネット経由で単発の仕事を請け負う“ギグワーカー”と呼ばれる労働者も増えています。

つまり、現在の社会的セーフティーネットでは、これからますます増えるとされている多様な働き方への対応が不十分ということです。今回は、雇用保険未加入者にも休業支援金が支払われましたが、あくまでも特例です。

しかし、増え続ける非正規雇用者やフリーランスなど、働き方はまさに多様化する一方です。そのため、政府が全国民に対して生活に必要な最低限の金額を定期的に支給するベーシックインカムの議論もされていますが、この先、どうなるのかが注目されています。

まとめ

この問題、ビジネスパーソンにとって、決して他人ごとではありません。いつ、自分の身に降り注いでくるのかもわかりません。そのときに慌てることがないように、社会的セーフティーネットについてもしっかりと把握しておきましょう。