先の衆院選で、改めてクローズアップされたのが、「日本では30年間、賃金が上がっていない」という現実だ。政府は2022年度税制改正で賃上げを行った企業を対象に税制優遇などで、控除率の引き上げなどを表明しているが、果たして賃上げに結びつくのだろうか。

帝国データバンクが実施した2020年度の「賃上げに関する企業の意識調査」によると、「税制優遇幅に関わらず賃上げを行う」が48.6%と、半数に近い企業が賃上げに前向きな姿勢を示していることがわかった。

ビジネスパーソンにとっては、賃上げに前向きな姿勢は大歓迎だが、コロナ禍による原材料価格の高騰など、依然して厳しい経営環境が続いているだけに、「賃上げの実現は難しい」という声も聞こえてくる。

しかも、7〜9月期の実質国内総生産(GDP)の速報値が発表されたが、前期(4〜6月)から年率換算で3.0%減の大幅ダウンとなったことも、本当に賃上げが実現できるかどうかの大きな不安材料になっている。

OECD(経済協力開発機構)の調査によると、日本の2000年時点の平均賃金は3万8,364ドル(約422万円)で、加盟35か国中17位、2020年は3万8,514ドル(約423万円)と、金額はほんの少し上昇したものの、上昇率は20年間でわずか0.4%と、ほとんど上がっていない。当然、順位も22位にまで後退している。

なぜ日本では、30年間も賃金が上がっていないのか。さまざま要因が考えられるが、バブル崩壊やリーマンショック後に、雇用維持を優先するため賃金を抑制してきたこと、しかも、労働組合も雇用を守ろうと賃上げ要求をしてこなかったことなどが指摘されている。

賃金が上がらないために個人消費が停滞し、個人消費が拡大しなければ国内市場も拡大しないという悪循環となり、欧米諸国ではプラス成長が続いているのに、日本だけがここまでGDP大幅ダウンという構図となっているようだ。

賃上げに前向きな半数に近い企業が、本当に賃上げに踏み切れば、経済の好循環につながることも期待されるが、果たしてそのようになるかどうかは、まだまだ安心することはできないようだ。