株式会社日本能率協会マネジメントセンター(JMAM)が、J.H.倶楽部セミナー「“学ぶ・働く”を高めるエンゲージメント」の参加者を対象に実施したアンケート調査*で、6割の企業が自社のエンゲージメント施策に不安を抱えていることが判明しました。
*回答者数120名、調査費2022年11月29日〜30日
会社に対する“愛着心”や“思い入れ”にも変化
終身雇用という日本ならではの雇用スタイルが変わりつつあります。それに伴い会社に対する“愛着心”や“思い入れ”にも、変化が見られるようになっています。
日本の企業を支えてきた原動力の一つが、会社と従業員の絆の深さです。絆は、終身雇用制度や年功序列型の賃金体系という、長く勤めれば勤めるほど給料も地位も上がっていく雇用慣習によって保たれてきたともいえます。
しかし、現代は働き方の多様化や人材の流動化が求められています。勤務年数に伴って賃金やポストが上がっていくという労働条件を示すだけでは、従業員のエンゲージメントを高めることが難しくなっているのではないでしょうか。
業務効率や生産性の向上につながるエンゲージメント
従業員が会社に愛着を持って働くことで、業務効率や生産性の向上につながるとされています。そのため従業員のエンゲージメントを高めるために、企業はさまざまな工夫を凝らしているはずです。
しかし、残念ながらその工夫も、それほどの効果を上げていないことが、株式会社日本能率協会マネジメントセンター(JMAM)が実施したアンケート調査で明らかになりました。
自社が取り組んでいるエンゲージメント向上施策については「不安」が21.7%でした。「どちらかといえば不安」の43.3%と合わせると、65.0%が自社のエンゲージメント向上施策に、なんらかの不安を抱えていることが明らかになったからです。
従業員の受け止め方を把握することも重要
実に6割以上の企業が、自社が取り組むエンゲージメント向上施策に不安を抱えていることになります。不安を払拭するためには、施策そのものが従業員にどのように受け止められているのかを把握することが大切です。
ところが、従業員に調査を行っている頻度は、1年に1回が最多の35%で、調査そのものを行っていない企業が33.3%となっています。
せっかく取り組んでいるエンゲージメント向上施策ですが、従業員の会社に対する“愛着心”や“思い入れ”を高める結果につながってはいない、といえます。施策も単発だけで終わり継続的に取り組んでいない実態も、この調査から見えてきました。
さまざまな施策を組み合わせる工夫も必要
では、従業員のエンゲージメントを高めていくためには、何をどのように取り組んでいけばいいのでしょうか。
アンケート調査では、研修やスキル、知識を学ぶ機会を提供することで「成長を促す」が68.3%、「仕事へのやりがい」を見出させるは66.7%となっています。
学ぶ機会を与え、その成果を仕事に活かすことで、従業員は自分の成長を実感できるでしょうし、仕事へのやりがいを感じることにもつながります。従業員のエンゲージメントを高めるための企業の取り組みは、理に適った施策といえるでしょう。
その効果が実感できないのであれば、さまざまな施策を組み合わせて複合的に行うなどの工夫や、従業員の受け止め方を把握することが必要なのかもしれません。
まとめ
働き方改革が進むなか、職業観や会社への帰属意識も変化しています。従業員のエンゲージメントを高めることが難しくなっているからこそ、企業と従業員の絆の強さを示す“エンゲージメント”が、あらためて注目を集めているのではないでしょうか。