1月23日に経団連会長と連合会長の労使のトップ会談によって、2023年の春闘が事実上スタートした。賃上げの必要性については労使とも一致し、継続した賃上げ実現に協調して取り組むことが確認された。


ところが、大手企業は続々と賃上げを表明しているが、中小企業の7割以上が賃上げを予定していないことが、城南信金が取引先の中小企業に実施した聞き取り調査*で明らかになっている。


賃上げを予定している企業26.8%に対して、予定なし企業は72.8%である。賃上げができない理由は「売り上げ回復が進んでいない」「水道光熱費増額のため」など、エネルギー価格の高騰や円安による物価高の影響で、賃金を上げたくても上げられない、中小企業の厳しい現実が浮き彫りとなっている。


中小企業が賃上げを実現するためには、高騰する原材料費や輸送コストの価格転嫁ができるかどうかにかかっているが、価格転嫁が「まったくできていない」と「ほとんどできていない」を合わせても32.8%(2023年1月調査)である。


また、帝国データバンクが全国の企業およそ1万2,000社に実施した調査**では、原材料費や物流費の高騰などによるコスト上昇分をどのくらい上乗せできたかを示す「転嫁率」は39.9%である。


つまり、コストが100円アップしても、上乗せできたのは39.9円ということだ。しかも、「コスト上昇分をすべて転嫁できている」企業はわずか4%で、「まったく転嫁できていない」企業は15.9%である。


その割に、食品や日用品などの値上げが相次いでいるが、大手企業の下請けの中小企業が、コストアップの部分を担っていることになる。これでは、中小企業の経営は厳しさを増す一方で、とても賃上げに踏み切ることなど無理な状況だ。


価格転嫁ができない理由は「取引先に言い出しづらい」「顧客が同業他社に流れてしまう」などの声があり、賃上げムードが盛り上がっているものの、その恩恵を受けられるのは一部、大手企業ということになりそうだ。


しかも、労働者の7割が中小企業で働いている。賃上げを景気回復の起爆剤とするためには、これから本格化する春闘が、中小企業まで巻き込んだ大きなうねりとなるかどうかにかかっているようだ。


*【調査概要】
 調査期間:2023年1月10日〜13日
 調査対象:中小企業738社
 調査方法:聞き取り調査

**【調査概要】
 調査期間:2022年9月9日〜13日
回答企業数:1,649社
調査方法:インターネット