人気ゲーム「グリザイア」シリーズ(フロントウイング)の新作アニメ「グリザイア:ファントムトリガー THE ANIMATION スターゲイザー」が劇場公開されている。「グリザイア」はこれまでもテレビアニメ「グリザイアの果実」などが放送されてきた人気シリーズ。「スターゲイザー」は、2019年公開の「グリザイア:ファントムトリガーTHE ANIMATION」などに参加してきた村山公輔さんが監督を務めた。キャラクターの心の動きを丁寧に描くことで「説明できない感情」が生まれるような作品を目指したという村山監督に、「スターゲイザー」に込めた思いを聞いた。

 ◇設定の全てを語るのは重要ではない

 「グリザイア」シリーズは、2011年にPCゲーム「グリザイアの果実」が発売され、2014年に同作のテレビアニメが放送された。PCゲーム「グリザイア:ファントムトリガー」が2017年に発売。2019年にアニメ「グリザイア:ファントムトリガーTHE ANIMATION」が劇場公開された。

 「グリザイア:ファントムトリガー」は、特殊技能訓練校で、行き場をなくした少女たちが銃と実弾を与えられ、国防の名目で危険な超法規的活動を繰り広げる……というストーリー。新作「スターゲイザー」は、特殊技能訓練校・美浜学園の狙撃手トーカが、民間委託型工作諜報員育成機関SORDのメンバーと共に聖エール外国人学校との海外合同合宿のため、フィリピン離島に向かう。佐倉綾音さんや三森すずこさん、内田真礼さん、南條愛乃さん、名塚佳織さん、種崎敦美さん、井澤美香子さん、代永翼さんといった人気声優が出演した。

 「グリザイア」は約10年も続く人気シリーズで、さまざまな魅力がある。村山監督は「ストーリーがしっかりしていて、設定が力強い」と感じているという。設定が膨大な作品を説明しつつ、説明過多にならないようにアニメ化するのは難しいはず。新作「スターゲイザー」は、そこが悩みどころだった。

 「どの作品もそうだと思うのですが、ゲーム原作の作品は特にボリュームがあるので、限られた尺でどこを映像にして、どこを省略するのかが重要だと考えていました。ただ、省略すると作品は痩せてしまう。なので残された要素の中で何処を膨らませてプラスアルファを加えるか、そのさじ加減が一番悩むところでした。この作品はゲームの設定も特殊で大事な要素ではあるのですが、そういった考えの結果、この作品は設定の全てを語ること自体が重要なのではないと思い、キャラクターに寄り添った仕上がりになりました。大事なのは、見ている人に何を感じていただくか。そのためにキャラクターの関係性や、それぞれの心の動きを見せる方向になりました。今回は特に静かなお話ですが、それ故に、そこをしっかり描かないと成立しないと考えていましたので」

 確かに「スターゲイザー」は、キャラクターの心の動きが丁寧に描かれている。特に、SORDのトーカ、脱走者としてSORDに追われることになるグミの心、感情の動きが丁寧に描かれ、自然に感情移入できるところもある。

 「トーカ、グミの回想シーンは最初、サラッとしていたのですが、トーカとグミの思いを描く中で、彼女たちの過去をきちんと映像化しないと説得力がないですし、伝わらないと思っていました。そこは、尺を使ってでも描こうとしました。トーカがグミに過去の自分を見いだし、シンクロする。誰かに言われたから変わるのではなく、トーカ自身がしっかり自分と向き合い、きちんと他人の存在やその思いに気付いて変わっていくことが最も大切で、それが本当の成長なのだと思います。そこを補足させていただきました」

 ◇キャラクターがちゃんと生きていると感じていただきたい

 「グリザイア」シリーズは女の子が可愛く、ミリタリー要素が格好いい。だが、それだけではない魅力もある。「スターゲイザー」はその魅力が顕著になっているようにも見える。

 「キャラクターをこうしたらウケるよね!とノリではやらずに、キャラクターがブレないように……というのは気を付けています。こうすると可愛いでしょ!という見せ方もあまりこれ見よがしにはしていないと思います。造形や表情だけではキャラクター(人格)は成立しなくて、やはり行動することでこそ、キャラクターは作られていくものだと思います。なので、あくまでもこの作品のリアリティーの中ではありますが、一人一人のキャラクターがちゃんと生きていると感じていただくために、都合よくキャラを扱うというのはなるべく避けています。その中で可愛さや格好よさを見いだしていただければ」

 キャラクターの可愛さを押し出したくなりそうなところではあるが、「バランスを大切」にアニメ化していったという。

 「いろいろなやり方がありますが、僕は本来間引いていくタイプだと思います。情報を盛りすぎると、豪華にはなるけど、そのカットが何を意味するのかが分かりにくくなります。それぞれのカットで、感じていただきたいことをしっかり伝えようとすると、どんどんそぎ落とした方がよいと思うんです。SFやファンタジーなどに多い、世界を見せる、ディティールを見せることに本質がある作品を除いては」

 そぎ落とす中で、キャラクターの感情などがはっきりとしていく。一方で「できたかどうか分からないですが、見終わった後に格好よかった、泣けるというような一言で説明できる感情ではないものが生まれる作品を目指しました」とも話す。

 「説明できないものを表現したいと思っているんですね。押しつけられているような感じは好きではないですし、そういう作りにならないようにしています。自然な流れの中で、どこかに引っかかり、その感情が残ってくれればうれしいです」

 「スターゲイザー」は、決して難解な作品ではない。キャラクター、ストーリーをしっかり、丁寧に描いたからこそ、「説明できない感情」が生まれるのだろう。「生きている」キャラクターを感じてほしい。

 注:種崎さんの「崎」は「たつさき」