閉店したドコモショップ(東京・八重洲)

ケータイショップの撤退が止まらない。ITコンサルティング会社のエムシーエイ(東京都千代田区)の調査によると、2023年2月の携帯電話4キャリアが展開するキャリアショップ(サブブランドのワイモバイル、UQ mobileの店舗を含む)は、7794店舗で2022年8月の7978店から半年間で184店(2.3%)減少した。店舗の減少で利用者はウェブでの手続きへシフトせざるを得ない状況で、高齢者だけではない「契約弱者」への影響が懸念される。

ついに4キャリア全てが店舗減へ

同調査で最も減少数が多かったのは、2026年3月期までに約700店舗の閉鎖を打ち出しているNTTドコモの81店舗減。同社の店舗数は2208店舗になり、同月に2237店舗だったソフトバンクよりも少なくなった。auは2135店舗で引き続き3位に。これまで店舗を増設していた楽天モバイルも8店減の1173店舗と減少に転じている。まさに「ケータイショップ冬の時代」だ。

キャリア各社はショップの削減と併せて、店頭での新規契約や機種変更の各種手続きにかかる事務手数料を引き上げる。顧客をウェブに誘導して店舗利用客を減らすのが狙いだ。ドコモは7月1日から新規契約や契約変更、機種変更やSIM再発行、電話番号保管の手数料を最大2750円値上げして一律3850円とする。

au(KDDI)は4月から、ソフトバンクは6月から、同じく一律で3850円に値上げしており、3大キャリアの足並みが揃う格好だ。ウェブでの手続きはドコモとソフトバンクは無料で据え置く。auは店頭と同額。一方、楽天モバイルだけは一部サービスを除いて店頭・ウェブともに無料だ。


「ケータイ難民」の増加でスマホ後進国へまっしぐら

これで困るのはウェブでの手続きが苦手な顧客だ。何も高齢者だけではない。例えば「格安ケータイ」として知られる仮想移動体通信事業者(MVNO)のシェアが携帯電話市場の6%程度に伸び悩んでいるのも、広告宣伝による認知の低さもあるが、ネットによる新規契約や変更が大きな「障壁」になっているからだ。ウェブ手続が苦手な消費者は年齢を問わず意外と多い。

「ネットでの手続なんて、パターンは決まっているのだから誰にでもできる」というユーザーも、同様の手続パターンで自動翻訳が利用できるとはいえ、海外の格安e-SIMをネットで契約して回線を開通させ、現地で利用するのは戸惑うだろう。慣れないウェブ手続の心理的な抵抗感は強いものなのだ。

そもそも携帯キャリアの契約・変更ページは建てつけが悪く、手続ページを探すのも一苦労するケースもしばしば。さらに契約や変更で迷った場合に、手続サイト上の情報から的確な回答を引き出すにもリテラシーが必要だ。キャリアが用意したAIボットによるチャットも、多くは該当するウェブページに誘導するだけで「そのものズバリ」の回答が得られるわけではない。

店舗網の縮小と事務手数料の値上げは、大量の「ケータイ難民」を生むことになるだろう。高齢者は子供や孫にウェブ契約を代行してもらうというが、現役世代でも機械やウェブに弱い人も多い。入口の「手続」でつまずけば、機種変更をためらうユーザーも増えるだろう。

その結果、最新端末の普及が遅れて最新の技術やサービスの利用が進まず、日本が「スマホ後進国」になるおそれも出てくる。

文:M&A Online

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