6月発券分から燃油サーチャージが最高値に

 航空券の運賃には、一般的にさまざまな税金や諸経費が含まれている。そのひとつが、燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)だ。燃油サーチャージはその都度で金額が変わり、高くなると航空券の価格に影響する。

 先日、全日本空輸(ANA)と日本航空(JAL)は2022年6月以降の国際線航空券にかかる燃油サーチャージの大幅な引き上げを発表した。例えば、タイやマレーシアで現行の9800円から1万9600円に、ハワイで現行の1万2700円から2万3600円になるなど、ほぼ倍となる。

 6月1日〜7月31日に発券する航空券に適用されるため、5月31日までに発券すればまだ安い。2022年の夏休みや年末年始に海外旅行を計画している人に対し、早めに発券を促す旅行関連の記事も出ている。

 大半の燃油サーチャージは搭乗クラスや繁忙期・閑散期などと関係なく、路線区間で定額に決められている。そのため、安い航空券ほど割高感が出る。この20年の国際線の航空券で、燃油サーチャージは定着した。

アメリカのサウスウエスト航空(画像:シカマアキ)

過去に航空会社が倒産したことも

 燃油サーチャージが初めて臨時的に導入されたのは、2002(平成14)年だ。湾岸戦争以降の原油価格が高騰したのが理由だった。その後、旅客便では2005年から正式に導入され、2009年と2016年の一時期には廃止になったことも。なお、航空業界だけでなく、海運や陸運といった業界にも燃油サーチャージは存在する。

 航空会社にとって、航空機を運航するために燃油は欠かせない。しかし、原油価格は常に変動する。原油価格が急に上がると、経営をもひっ迫する。

 過去、アメリカのサウスウエスト航空やデルタ航空などが燃料費の高騰で事実上倒産している。

 日本の国際線航空券における燃油サーチャージは、2か月単位で改定される仕組みだ。そのため、発券月の2か月前に航空会社から届け出が行われる。

 航空燃料であるケロシンの1バレル(約160l)あたりのシンガポール市況価格が日本円で6000円を下回れば、燃油サーチャージは徴収されない。6000円を上回った場合、その市況価格に該当する2か月の為替平均額を掛け合わせ、算定された数字が燃油サーチャージとして旅客から徴収される。現段階で原油価格が高騰しても、反映されるのは2か月遅れだ。

JALの日本発国際線航空券における燃油サーチャージ、2022年6月1日〜7月31日発券分(画像:JAL)

ANAやJALは2か月遅れで金額を反映

 JALは2022年6〜7月発券分として、燃油サーチャージを2022年4月19日に国土交通省に申請した。どの方面も軒並み値上がりしているのが、表から分かる。ANAも同様に燃油サーチャージを改定している。

 表の「ゾーン」とは、燃油サーチャージの金額帯のことだ。ケロシン1バレルあたりのシンガポール市況価格によって分けられている。JALの場合、ゾーンA(6000円以上7000円以下)からゾーンI(1万4000円以上1万5000円未満)まである。つまり、6月からのゾーンIは最高額となる。

 燃油サーチャージの仕組みは、国際線の航空券だけに存在するわけではない。日本では、地域航空会社のフジドリームエアラインズ(FDA)が、日本国内線で唯一、燃油サーチャージを徴収している。ANAやJALと異なり、燃油価格と為替レートの直近1か月平均の組み合わせで、1か月ごとに燃油特別付加運賃額を決めている。2022年5月発券分では、路線によって1900円、2000円、2100円となっている。

 新型コロナウイルスの感染拡大によるロックダウンで、世界の経済活動は一時停滞。その反動で現在、景気回復や石油需要の高まりに伴って原油価格は1バレル100ドル近くまで高騰した。

 ロシアとウクライナによる戦争、中東地域における緊張の高まりでの供給不安があおられたことも要因だ。ロックダウンによる景気低迷時期には原油価格は下落し、燃油サーチャージがゼロの時期もあった。

ピーチ・アビエーション(Peach)の機体(画像:シカマアキ)

航空会社にも乗客にも「ありがたくない」

 あえて「燃油サーチャージを徴収しません」とアピールする航空会社もある。特にその傾向がよく見られるのは、格安航空会社(LCC)である。

 LCCは、大手航空会社以上に運賃に対してシビアだ。LCCは従来から「運賃の安さ」を売りにしており、国際線で数千円というのも珍しくない。これに燃油サーチャージとして数千円が加算されると、顧客へ急に高額な印象を与えてしまう。燃油サーチャージを航空会社が負担する、あるいは最初から航空券にある程度加算して販売するほうが、購入側もお得に感じる。

 航空券への割り増し感をなんとか払拭(ふっしょく)しようと、LCC各社が対策を取るほど、購入側の燃油サーチャージへ抱く印象は良くなくなる。

 特に、現在の日本はコロナ禍で景気低迷し、経済活動も停滞気味。加えて、国際線で運航再開が遅れていることで、航空券の運賃は高止まり状態だ。円安における現地滞在費のひっ迫も、マイナス材料のひとつとなっている。

 そんななかで、今回の燃油サーチャージの急騰だ。タイミングが悪いと言えばそれまでだが、海外渡航の本格再開の足かせになりかねないだろう。

 とはいえ、コロナ禍で航空会社の経営は非常に苦しく、原油価格高騰分を自己負担できるほどの余裕はない。原油価格はいずれ下落すると見られているが、それがすぐのことなのか、数年後のことなのかは、それは誰にもわからない。