ブラシを使わない洗車機

 2019年にGfKジャパン(東京都中野区)が全国のドライバー約1万5000人を対象に行った調査によると、72%のドライバーが洗車機を利用したことがあると回答し、そのうち48%が洗車機のみで洗車を済ませているという。その理由としては、「自分で洗車をするのが手間だから」「時間を節約したいから」などが寄せられた。

 さらに、日本自動車連盟(JAF)が2022年に実施した調査では、約42.1%のドライバーが洗車が好きと回答している。また、同年、オートアフターマーケット活性化連合「洗車の日委員会」が実施したアンケートでは、33.6%のドライバーがコロナ渦における洗車回数が増えたと回答している。この数字は、洗車好きなユーザーが一定数いることを示している。

 そんななか、クルマ業界で注目されているのが

「ノンブラシ洗車機」

だ。ノンブラシ洗車機とは、ブラシを使わず、強力な高圧スプレー水で洗車する非接触型の洗車機だ。クルマの周囲を上・左・右の3方向にスプレーノズルが取り囲み、ノズルが前後に動くことで車体全体を洗う。塗装を傷めることなく効果的に洗車できるため、多くのドライバーから支持を得ている。

 なぜノンブラシ洗車機がクルマ業界で話題を呼んでいるのか。本稿ではその特徴やメリット、課題、今後の展望などを紹介する。

メリットと特徴

 ノンブラシ洗車機が注目される理由のひとつは、その特徴とメリットにある。

 まず大きなメリットは、従来の洗車機が使用するブラシがクルマの塗装を傷つけてしまうのに対し、ノンブラシ洗車機ではその心配がないことだ。高級車や愛車のドライバーは、塗装が長期にわたって保護されることを高く評価している。

 また、ノンブラシ洗車機は洗車と送風の2往復で済むため、短時間で洗車が完了する。忙しい現代人にはとても便利なアイテムだ。そのため、忙しい日常生活でも簡単にクルマを清潔に保つことができ、クルマの美容に気を使うことができる。

 さらに、環境への配慮という観点からもノンブラシ洗車機は注目されている。従来のブラシ式洗車機では、洗車に大量の水を使用するため、水の消費量が問題となっていた。しかし、ノンブラシ洗車機はその性質上、水の使用量を大幅に減らすことができる。

 これは水資源の節約という面でも大きなメリットであり、環境に優しいという点でも環境意識の高いユーザーから支持を得ている。

 このように、ノンブラシ洗車にはさまざまなメリットがあり、

「持続可能な洗車方法」

として位置づけられ、洗車に関する地球環境への配慮が広く知られている。

ノンブラシ洗車機(画像:ジャバ)

弱点や課題点

 一方、ノンブラシ洗車機には導入コストが高いという問題がある。これは、高度な技術を必要とするため、製造や設置にコストがかかることが主な原因だ。

 一般的な価格を比較すると、ブラシ式洗車機の最安値は300円、ノンブラシ洗車機の最安値は600〜800円である。これは設置コストが高いためで、普及の大きなハードルとなっている。

 また、ノンブラシ洗車機の弱点として、頑固な汚れ、水あか、イオンデポジット、ウオータースポットを完全に除去することが難しいことが挙げられる。特にコーティングしていないクルマの場合、ワックスから流れた油脂分が付着することもある。

 このようなデメリットがあるにもかかわらず、ノンブラシ洗車機は高級車のオーナーや、新車など大切なクルマを傷つけたくないドライバー、環境意識の高いユーザーから支持を集めている。

 導入コストの高さが解消されれば、ノンブラシ洗車は今後ますます普及することが予想される。

ノンブラシ洗車機を行っている様子(画像:ニッポー技研)

ノンブラシ洗車機の展望

 今後、ノンブラシ洗車機の需要が高まるかどうかは、多角的に考えることができる。

 まず、ユーザーニーズとしては、ノンブラシ洗車機による塗装の保護や短時間で洗車できる利便性へのニーズは変わらないと考えられる。したがって、その高い性能がユーザーに受け入れられる限り、導入は続くと思われる。

 しかし一方で、ノンブラシ洗車機の普及を阻む課題もある。前述の設置コストの高さや頑固な汚れの洗浄力に加え、競合製品や新技術の登場もノンブラシ洗車機の普及に影響を与えるだろう。

 とはいえ、新技術が登場すれば、ノンブラシ洗車機の性能を上回る製品が登場し、ノンブラシ洗車機の需要が減少する可能性もある。

 このようにノンブラシ洗車機は、クルマの美しさを追求するドライバーや地球環境に配慮するユーザーにとって、なくてはならない存在になっていくだろう。そして、今後も進化を続けるノンブラシ洗車機にも大きな期待が寄せられている。

 この進化が今後のクルマ業界をどう変えていくのか、今後も注目していきたい。