バイクの魅力を再発見

 バイクは“自由と冒険の象徴”だ。新しい世界への扉を開き、未知の領域への旅を可能にしてくれる。

 その一方で、都市部では公共交通機関や自動車の利便性に押され、二輪車の需要は減少傾向にある。また、安全性や環境に対する関心の高まりも影響し、

「二輪車は四輪車に劣る」

というイメージが定着している。

 加えて、高齢化社会の進展により、若年層の需要が減少している。こうした要因が重なり、二輪車業界全体が衰退している。しかし、そんななかでもバイクには色褪せない魅力がある。

 まず、バイクに乗るということは、風や自然を感じる

「爽快な体験」

である。これは他の交通手段では味わえない体験だ。バイクに乗れば、

・風を切って走る感覚
・エンジンの振動
・加速感

など、五感を刺激される体験ができる。これらの体験は、バイクに乗る人たちにとって非日常的な体験となり、日常から一時的に逃避することを可能にしてくれる。

 本稿は当媒体の連載「バイクしようぜ!」の記念すべき第1回目である。衰退の一途をたどる二輪車業界を盛り上げるべく、バイクの魅力をたっぷり伝えていくつもりだ。お付き合いいただければうれしい。それでは皆さん、ご唱和願います。

「バイクしようぜ!」

バイクに乗る男性(画像:写真AC)

バイクの安全性と環境への配慮

 前述のとおり、二輪車は風を切って走る開放感がある反面、四輪車に比べて安全性や環境性能が劣るというイメージが強い。しかし、実際はそうではない。最近のバイクメーカーの技術革新により、

・アンチロックブレーキシステム(ブレーキのロックを防止する安全装置)
・トラクションコントロール(発進・加速時の駆動タイヤのホイールスピンを抑制する装置)

などの安全装備が搭載され、その安全性は向上した。

 一方、バイクメーカーは環境性能でも大きな進歩を遂げている。排出ガスの低減と燃費の向上は、環境にやさしいエンジン技術の進化の一部である。例えば、排出ガス規制のユーロ5は、一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物などの汚染物質の排出を大幅に削減している。さらに厳しいユーロ7は2025年に導入される予定だ。

 電動バイクの開発も進んでいる。大手自動車部品メーカーである日立アステモ(東京都千代田区。旧日立オートモティブシステムズ)は、電動バイク用のモータードライブや制御システムなどのユニットを開発している。これらの技術は、二輪車の環境負荷を大幅に低減し、持続可能な社会の実現に貢献する。

 このように、二輪車の安全性や環境性能は、技術革新によって大きく向上しているのだ。

自然の中を走行するバイカー(画像:写真AC)

バイク文化の魅力

 バイク市場は常に最新技術にアップデートされているが、独自の文化やコミュニティは今も存在し続けている。ツーリングやオフロード走行など、バイクを通じて新しい仲間と出会い、新しい体験をするコミュニティが盛んだ。バイク愛好家が集まり、情報交換や親睦を深めるバイククラブやイベントも多い。

 もちろん、バイクに乗ることだけが目的ではなく、

・バイクに関する知識や技術の共有
・バイクを通じた社会的交流

も盛んだ。バイク愛好家にとって、それは一種のライフスタイルである。

 2023年度二輪車市場動向調査(日本自動車工業会)によると、近年のバイク利用状況は2015年度以降30万台レベルで推移していたが、2021年度以降は40万台を超えた。その背景には、2020年度の新型コロナウイルスの感染拡大による「三密(密閉・密集・密接)」を回避しようという意識の高まりによるバイク需要の急増がある。

 コロナ禍が去った後も、バイク文化はその独特のスタイルで世界中のバイク愛好家から高い評価を得ている。バイクは「単なる移動手段」を超え、

・ライフスタイル
・芸術
・情熱

の証として根付いている。バイクは“自由と冒険の象徴”であり、オープンエアでのライディングは他の交通手段では味わえない特別な体験を提供してくれる。

バイクに乗る人(画像:写真AC)

バイクの未来への期待

 バイクの未来には、多くの可能性と将来性が秘められている。一部のメディアではバイク業界の衰退が報じられているが、その魅力は衰えていない。都市部における交通渋滞や駐車場不足の問題を解決する手段として、バイクの需要は再び高まる可能性がある。

 また、若者を中心にバイク文化が再燃し、新たな市場が開拓されることも期待される。矢野経済研究所の調査によると、2030年のバイク市場は2020年比18.3%増の6576万台まで拡大すると予想されている。これは、電動化(EV化)、自動化、コネクティビティ(ネットワークへの接続のしやすさ)の向上といった技術革新がもたらす大きな変化により、バイクの需要が増加し続けていることを示している。

 特に電動化には、環境問題の解決だけでなく、長期使用時のランニングコスト削減というメリットもある。しかし、バッテリーの大きさ、重さ、航続距離など、電動バイクが広く普及するまでに解決すべき課題は多い。

 それでも、新しい技術やアイデアを探求し続けている。例えば、バッテリー技術の進歩は電動バイクの航続距離を伸ばすことができるし、充電ステーションの数も増えているため、充電場所を心配する必要がなくなっている。こうした努力によって、電動バイクは再び人気の乗り物になりつつある。

 バイク文化もまた、大きな転換期を迎えている。具体的には、バイクのデザインや機能性だけでなく、ライダー用アクセサリーやヘルメットなどが大きな影響を及ぼしている。特に、最新のテクノロジーとクラシックなデザインを融合させたネオクラシックヘルメットがトレンドとして台頭している。

 このように、バイク業界は変化を受け入れ、新たな可能性を追求し続けている。その魅力を再発見し、新たな可能性を追求するバイク業界は活況を呈している。未来には多くの可能性と期待があり、私たちはその可能性を追求し続ける。

 それでは最後にもう一度、ご唱和願います。

「バイクしようぜ!」