「CO2運搬船」実用化へ秒読み? 空に返すな、地中に埋めろ! 温暖化対策の切り札となるか? 海運業界、新たな収益源を掴めるか
Merkmal6/16(月)7:20

試験航行中の実証試験船「えくすくぅる」(画像:新エネルギー・産業技術総合開発機構)
液化CO2輸送で新技術革新
地球温暖化対策として、CO2(二酸化炭素)の回収・貯留(CCS)や有効利用(CCUS)が注目されている。
特に、大量のCO2を排出する産業から回収したCO2を、安全に輸送し、貯留または再利用する手段として「CO2運搬船」の開発が進んでいる。
CO2運搬船は、液化CO2を輸送するための専用船で、既存のLPG(液化石油ガス)運搬船やLNG(液化天然ガス)運搬船の技術を応用して開発されている。

CCS、CCUS技術の解説
CCSの活用は、2023年12月に公表されたCOP28合意文書にも脱炭素化の方策として盛り込まれている。
日本では、2021年に閣議決定された「第6次エネルギー基本計画」で、2050年カーボンニュートラル実現のための方策としてCCSが挙げられた。世界では欧米を中心にCCSの事業化が進んでいたが、近年アジアでもその動きが加速している。
CCSは、石炭や石油などの化石燃料を使用して発生するCO2を回収し、大気に放出せずに地中深くへ貯留する技術だ。
一方、CCUSは回収したCO2を有効に利用する技術で、例えば米国ではCO2を古い油田に注入し、原油を圧力で押し出しながらCO2を地中に貯留する方法が採用されている。
CO2排出量削減は、地球温暖化対策の最重要課題のひとつだ。しかし、排出する発電機や工場と貯留施設、利用施設は離れた場所にあることが多い。これらを効率的に結ぶ手段としてCO2運搬船が求められている。
その設計は、LPGやLNG運搬船に似ている。CO2を液化すれば体積は気体の500分の1になるため、液化して運ぶ方が効率的だ。しかし、液化CO2は大気圧では存在しない。最低でも0.518MPa(5.28kg/平方センチメートル)の圧力が必要だ。この圧力以下では、CO2は固体(ドライアイス)と気体に分かれてしまう。
そのため、カーゴタンク内の温度は-55度から-20度、圧力は1.0MPaから2.0MPaに保つ必要がある。この圧力設定は、オペレーション中にドライアイスが生成されるのを防ぐためだ。
2023年、液化CO2の大量輸送に向けた実証試験船「えくすくぅる」が建造された。この船はCO2の液化・貯蔵・荷役、輸送のプロセスを実験しており、基地間の温度や圧力を変えて最適な輸送条件を特定するための実証試験を行っている。現在、京都府舞鶴市と北海道苫小牧市の間で繰り返し輸送を行い、陸上基地の荷役設備や貯蔵用タンクの機能も評価している。
高コストと港湾整備の壁
CO2運搬船では、液化CO2を専用の貨物タンクに貯蔵して運航する。貨物タンクには、LNG運搬船などでも使用されるType-Cタンクが一般的だ。
Type-Cタンクは円筒形で、他のタンクに比べて設定圧力を高くできるのが特徴だ。しかし、液化CO2はLPGなどと比べて比重が大きいため、貨物タンクにかかる力も大きくなる。タンクの強度には十分な注意が必要だ。また、液体貨物のため、航行中の揺れによる液体の揺れ(スロッシング)も考慮しなければならない。
液化CO2はわずかな温度や圧力の変動で気化する(BOG)。そのため、温度や圧力を常に監視し、BOGを再液化したり、漏れを感知するための計器を設置したりする必要がある。CO2を運搬するためには、専用の液化CO2ターミナルと接続する必要があり、液化CO2の積出ポンプや荷揚げポンプなどの機器が必要となる。港湾施設の整備も進んでおり、欧州や日本ではCO2輸送ネットワークの構築が進行中だ。
CO2運搬船を使ったCO2輸送を普及させるためには、いくつかの課題が残っている。
まず、経済性の問題がある。CO2運搬船の運用コストは高く、事業化にはまだ解決すべき課題が多い。この事業が成立するためには、その有用性が広く認識され、社会に受け入れられることが必要だ。
港湾のインフラ整備も重要だ。CO2は排出された場所で回収され、貯留場所の近くで荷揚げされるため、港湾のインフラとオペレーションの整備が不可欠となる。
さらに、大量輸送技術の確立が求められる。現在、小型のCO2運搬船はすでに運航されているが、大型のCO2運搬船はまだ建造実績がない。大量のCO2を一度に輸送するためには、大型タンクの搭載が必要だ。そのためには、貨物タンクの軽量化や、液化CO2をより低温で圧力を抑える技術的な検討が求められる。
2024年8月には、国際間で大規模な液化CO2の海上輸送を実現するため、川崎汽船、商船三井、日本郵船、三菱造船、今治造船、ジャパン マリンユナイテッド、日本シップヤードが、液化CO2輸送船の標準仕様や標準船型の確立に向けた共同検討を開始することが発表された。また、産業の脱炭素化が進むにつれて、CO2の輸送需要は増加すると予想される。今後、各国の貯留施設へのパイプライン設置や、CO2運搬船の区分けなどで、実現に向けて動き出すことが期待される。

炭素市場とCO2輸送の未来
CO2運搬船は、地球温暖化対策の新しい手段として期待されている。技術的には、LPGやLNG輸送のノウハウを活用できる。しかし、経済性やインフラ整備には課題がある。今後、
・炭素市場の成長
・国際的な枠組みの整備
が進めば、CO2運搬船は実用化に向けて大きく前進するだろう。
持続可能な未来のため、CO2運搬船の開発と運用の進展は、海運業界の新たな一歩となることが期待されている。










