もはや「郵便」はオワコン? 日本郵便「赤字383億円」の現実――デンマークはもうすぐ事業撤退、今後どうなる?

Merkmal6/20(金)14:50

もはや「郵便」はオワコン? 日本郵便「赤字383億円」の現実――デンマークはもうすぐ事業撤退、今後どうなる?

郵便イメージ(画像:写真AC)

政府撤退と市場開放の岐路

 2025年12月末、デンマークのポストノルドは国内郵便の取り扱いを廃止する。これにより、デンマーク国内の郵便事業は終了する予定だ。ポストノルドはデンマークとスウェーデン両政府が出資する政府系郵便事業体である。今後は小包の配達に注力する方針だ。ただし、デンマークでは手紙や小包の配送は自由市場であり、民間企業も参入している。ポストノルドが郵便事業から撤退しても、手紙が送れなくなるわけではない。

 背景にはデンマーク政府の高度なデジタル化推進がある。手紙の数が大幅に減少したのだ。2000年、ポストノルドは約14億通の手紙を取り扱っていた。しかし2024年には約1.1億通まで減った。取扱数量の減少は手紙1通あたりのコスト増加を招いた。ポストノルドが撤退したのは当然の流れともいえる。

 さらに2024年には郵便分野が民間に市場開放された。競争が激化し、料金も上昇した。最も安い料金で29デンマーククローネ(約630円)に達した。料金の高騰は需要減少の一因にもなっている。手紙の取扱数量が減少するなか、市場開放によってサービスが持続できるのかが注目される。

郵便イメージ(画像:写真AC)

年間10億通減少が示す市場縮小の現実

 郵便事業の経営環境は日本だけでなく、世界各国で厳しい状況にある。ノルドポストによる手紙配達の廃止は決して他人事ではない。

 5月中旬に公表された日本郵政の2025年3月期決算資料によると、郵便・物流事業を担う日本郵便(連結)の営業損益は42億円の赤字となった。一見すると赤字幅は小さいように見える。しかし郵便・物流セグメント単独では

「383億円の赤字」

だ。2024年度の688億円の赤字と比べれば約300億円の改善だが、2期連続の赤字である。日本郵便はこの大きな赤字を郵便局窓口や国際物流事業、不動産事業で補っているにすぎない。

 実際の郵便物数は、2001(平成13)年度の262億通をピークに2024年度には126億通に半減している。デンマークの約10分の1以下の減少幅だ。単純に減少幅を計算すると、2001年度からは年間約6億通の減少だったが、ここ1〜2年では年間約10億通に減少幅が拡大している。

 年始のあいさつで送られる年賀状も、人口減少や年賀状離れの加速により、2003年の約44.6億通から2024年には約10.7億通とピーク時の4分の1まで減った。人口減少やデジタル化の進展が続くため、郵便数が増加に転じる要素はほぼ存在しない。

郵便イメージ(画像:写真AC)

労働集約型の郵便事業の終焉

 総務省の情報通信審議会郵政政策部会(第38回)の資料によると、郵便法では日本郵政公社法施行時(平成15年4月1日)のポスト数約18万本を維持しなければならないと定めている。

 山間部を車で走ると、

「こんな場所にもポストがあるのか」

と驚く人も多いだろう。ポストがある限り、定期的に郵便物を回収しに行かなければならない。ほとんど郵便物が投函されない場所に出向く担当者は、たとえ仕事であっても徒労感を感じることが少なくないだろう。

 現在のルールでは、冬季の山小屋を除き、どんなに山奥でも人が生活している限り配達しなければならない。郵便物の集配も配達も人が行っている。郵便事業の営業費用の66.4%は人件費だ。

 これに集配運送委託費8.3%、窓口の人件費約9%を加えると約83.7%となる。郵便事業は、

「ほぼ人件費の塊」

といっても過言ではない。労働集約型でユニバーサルサービスが必須の郵便事業は、取扱数量の減少がそのまま赤字に直結する構造だ。今後は取扱数量のさらなる減少に加え、賃金上昇も重なる。

 人口減少により、そもそも誰が集配を担うのかという根本的な問題もある。労働集約型郵便事業の破綻や終焉は、すでに見えているといってよい。

郵便イメージ(画像:写真AC)

5%依存層の郵便維持課題

 総務省の資料では、集配や料金に関する議論が目立つ。これは郵便法の枠組み内での議論であるため、仕方がない面がある。

・郵便料金の改定
・配達日の縮小
・送達日数の緩和

など、今できる対策も重要だ。しかし同時に、

「デジタル化社会でそもそも郵便は必要か」

という議論も必要だろう。郵便廃止には弊害もある。BBCの報道によると、デンマークの人口約598万人のうち約27万人、つまり5%がデジタル郵便ではなく物理的な郵便に依存している。特に高齢者にとっては重要なインフラだ。

 郵便を廃止する場合は、海外郵便の取り扱いや地理的・人的なユニバーサルサービスの確保が必要となる。高齢者やデジタル郵便を使えない利用者への対応も不可欠である。

 ただし、「特定利用者向けの個別配送や国際郵便を除き、10年後に郵便を廃止する」と政府が宣言すれば、デジタル化は大きく進展し、生活様式も劇的に変わるだろう。

 将来が明るくない郵便事業を無理に延命させるより、根本的にやめる議論を今すぐ始めてもよいかもしれない。

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