全国で書店の閉店が相次ぐ中、「啓文堂書店狛江店」が6月27日、小田急線狛江駅直結の高架下商業施設「小田急マルシェ狛江2」(狛江市元和泉1)に再オープンした。(調布経済新聞)

 選書コーナーで紹介している本は購入できるように仕入れられ店内に並ぶ

 昨年7月、商業施設の改修で同店が閉店し、市内唯一の書店がなくなった狛江市。閉店を惜しんだ地元有志が「タマガワ図書部」を設立し、本との関わりを絶やさないように今年1月、同駅改札横の空きスペースで、市民の選書本イベント「エキナカ本展」を開催した。

 同イベントには、1カ月で延べ7000人が市内外から来場し、来場者ノートには「街に書店が欲しい」と願う市民からの多くのメッセージが残された。イベントを共催した「小田急SCディベロップメント」(新宿区)を通して啓文堂書店に市民の声を届けたことも追い風となり、一度閉店した同店の再出店が決まったという。

 再オープンした店内の一角には、イベントを受け継いだ選書コーナー「BOOK and BENCH(ブック・アンド・ベンチ)」を設置。地元住民などがテーマに沿って選書した本を展示し、背面に選書者からの推薦コメントを記す。展示する本は選書者自身のものだが、紹介している本は新しいものを同店で購入できるという。

 ブック・アンド・ベンチをプロデュースした有志代表の山本雅美さんは「地域の人と一緒になって育てる、今までになかったスタイルの書店で、全国的にも珍しい取り組み」と話す。政府は、全国で街の書店が減少している状況を踏まえ、経済産業省が大臣直属の「書店復興プロジェクト」を立ち上げ、支援を始めている。書店の個性ある取り組みを応援する同プロジェクトの目に留まり、オープン前日に行われたブック・アンド・ベンチの除幕式には経産省の上月良祐副大臣も出席した。

 山本さんは「狛江の街に書店が戻ってきた喜びと、売り場を割いてコーナーを作っていただいた重みも感じている。フラリと立ち寄れる書店のある暮らしには、言葉との出合いがある。選書コーナーで店を盛り上げ、売り上げにも貢献できるようになっていければ」と話す。

 営業時間は10時〜22時(土曜・日曜・祝日は21時まで)。タマガワ図書部では「BOOK and BENCH Vol.2」のブックセレクターを募集している。