1995年に日本初のETFが誕生。その後、さまざまな法整備などを経て、2001年7月に東京証券取引所がETF市場を創設し、TOPIXや日経225に連動するETFが5銘柄上場された。

そのうちの1つに日興アセットマネジメントの「上場インデックスファンド225(1330)」がある。その開発を行ったのが、ETFビジネス開発部長兼商品開発部長の有賀潤一郎さん。日本のETFの動向を見守ってきた有賀さんに、当時の出来事や現在の状況について聞いた。

ピンチでありチャンスでもあったETFの立ち上げ

――有賀さんは、もともと商品開発を担当されてきたのですか?

「そうですね。1993年に新卒で日興證券投資信託委託(現在の日興アセットマネジメント)に入社して、1995年に商品企画部に異動になってから現在までの約27年間、商品開発の仕事をしています。

入社当初はトレーディングの仕事をしていたのですが、限られた時間で素早く正確に執行するというのは向いてなかったんです(笑)。当時、トレーディングを経験した人は運用系の部署に異動することが多かったのですが、僕は商品開発部でした」

――それからずっと商品開発に携わっているのですね。専門性を極める社風などがあるのでしょうか?

「当社は部門間異動がほとんどない会社で、僕も商品開発部に異動になってからは、どこか別の部署に異動させてもらえそうな気がしたことがないですね。証券会社との資本関係も現在ではなくなっており、定期異動の概念がなく、同じ部署に長く在籍し、豊富な経験と専門性を持った人が多いと思います」

――長い商品開発のなかで、有賀さんはどのような分野を担当されてきたのでしょう?

「大半がリテール向けの公募投資信託(公募投信)でしたが、ETFを扱う時期もありました。2001年4月にETFタスクフォースのようなチームのスタッフに任命されまして、『上場インデックスファンド225(1330)』の制度設計を行いました。上場した7月までの3カ月間は、人生でもっとも忙しかったですね。

その後はETFに関するマーケティングも担当していて、2009年に公募投信の開発に専念するため、一度ETFから離れました。2020年11月にETFビジネス開発部長に任命され、現在はETFの開発と営業にも携わっています」

――2001年の“人生でもっとも忙しかった3カ月”は、どのような思いでETFの設計を行っていましたか?

「公募投信のうち、インデックスファンドのジャンルで先駆者的な立場にいた日興アセットマネジメントとしては、ETFの解禁によってインデックスファンドが脅かされるかもしれないという怖さがあったのは事実です。

ただ、チャンスと捉えられる面もあったので、なるべくほかの運用会社さんとは違う土俵に上がろうと、必死に独自の道を模索していた記憶があります

当時公募のインデックスファンドで日本最大のインデックスファンド『インデックスファンド225』を運用していたことから、それとのシナジーを目指してETFのブランド名を『上場インデックスファンド』としました。」

社員の声から新たな商品が生まれていく会社

――独自の道という話が出ましたが、日興アセットマネジメントの特徴はどのようなところだと考えていますか?

「ほとんどの商品が、トップダウンではなくボトムアップで生まれているところでしょうか。僕が若かった頃から、社内の開発としては『こういう商品を作りなさい』『こういう方向で進めなさい』と言われることはあまりなくて、現場の社員が作ろうと思ったものを商品化できる環境が整っていると思います。これまでのヒット商品も、現場の声からできあがったものばかりですね」

――市場の実態を体感している社員が考えるからこそ、幅広い商品が生まれるといえそうですね。

「そういった部分はあると思います。当社としても、ほかの運用会社さんがやっていないことを商品化しようという思いがありますし、実際に違うことをやり続けられているのではないでしょうか。

下からでも意見を言えて、ヒット商品を作る源になれるというところは、社員のモチベーションにもなっていると思いますね」

――日興アセットマネジメントの独創性は、きっとユーザーにも届いているだろうと感じます。

「投資信託業界を代表する複数の専門誌で、運用会社アンケートが発表されるのですが、ありがたいことに『商品開発力』の部門などでここ数年連続して1位をいただいています。独創性といったところが評価されているとしたらうれしいですね」

可能性を秘めたETFを強化するタイミング


――好調に推移してきたからこそ、自由な商品開発が進められてきたのでしょうか?

「そうだと思います。ただ、ここ数年、運用コストがゼロに近い公募のインデックスファンドが一気に普及してきていて、危機感を覚えています。

当社は、これまで培ってきた独創性のある商品開発力を武器に、ETFビジネスをより強化し、ETF市場に切り込んでいくつもりです」

――今は公募投信よりもETFに開発の重点をシフトしている段階といえそうですか?

「公募投信もETFもどちらも頑張るのですが、必然的にETFの方を強化していく領域があると考えています。ETFはまだまだ商品開発の余地があって、やれることがいっぱいあります。今年は新しいETFを作ることができませんでしたが、来年から新商品を積極的に出していきたいと思っています」

――ETFの市場で勝負に出るのですね。

「そうですね。技術的な部分でも、ETFは可能性が出てきたと思うんです。もともと公募投信は委託者報酬、受託者報酬、代行手数料の3つの報酬があり、ETFは委託者報酬と受託者報酬だけ。これが、販売会社がETFを積極的に売らない動機となることがありました。

しかし、公募のインデックスファンドが無コストに近くなったことで、販売会社からするとETFと同じように感じられるものになったといえます。我々はコストをゼロに近くしたインデックスファンドを展開していない分、もっとコストが低くて効率のいいETFを作っていくことで、同じフィールドで戦える可能性が増していくと思うのです。そういった意味でも、ETFに力を入れる時が来たのだと感じています」

大きな強みといえる商品開発力を生かし、新たなETFの展開を描き始めている日興アセットマネジメント。後編では、同社のETFの特徴と今後のマーケットに期待する変化について、引き続き有賀さんに伺う。

(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)